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好転
しおりを挟むへぇ、匂い........。
あの馬鹿がワイの未途に執着する理由はそんなものかいな。
それに未途も甘いなぁ。妥協してその内容は未途にデメリットしかないんちゃう?
イヤホンから流れる二人の会話に鼻で笑う。
「やっぱ未途はワイが居らなダメやなぁ」
ワイが服に着けた盗聴器に気づかない未途。
あの馬鹿の話をほぼ受け入れた愚かな未途。
咲洲に嵌められたくせにその咲洲と付き合うなんて、ワイよりとち狂った考えをした未途。
そしてなにより.....ワイが最も望む約束をしてくれた未途。
「.......ほんまに未途はアホで考え無しで可愛ええ、愛おしい理想やな」
隣の部屋で咲洲と通話している未途を思い笑う。
未途は迂闊や。
どうしてあの馬鹿がシャワー浴びに行ったんか少しは警戒せぇよ。直前にあんな約束をしておいてもう無防備に思考外にする。
未途の悪いとこやな。
ほら――
『電話終わったか?』
『ひっ!?うぐっ、んーーー!?!?』
やっぱり襲われとる。
助けに行こうと椅子から立ち上がろうとする、が途中でやめる。
「......未途もあの馬鹿とした約束に穴があるんを気づかなアカン。少し様子見するか」
それにあの馬鹿にも少し夢を見させてやろう。
イヤホンを外しそこら辺に放り投げ、スマホの盗聴アプリを閉じた。
さて、未途はどうするやろか?
※※※※※※※※※※※※※※※※
「はっ、がぁ!?や''っ、んぐ.....!」
「ははっ、悪ぃな何言ってっか分かんねぇわ」
未途の口に指を突っ込みまともに言葉を発せないようにし、あの馬鹿は腰を振っていた。
どうやらワイが入ってきたことに二人とも気づいてへんようやった。
なんか未途が馬鹿しか見てないようでイラつくなぁ......。
「やむっ!んっ、んっ、ん~~っ!ひや、ひゃめ.....!」
「っ~!なぁもっと激しくしていいか!?お前が泣き叫ぶくらい、頭がバカになるくらい気持ちよくすっから」
「ふざけ~っ!んぶぅ、あう、ぅんぐ!あっ、あっ、あっ......!」
「あ''?ちゃんと言えよ」
言えないようにしとるくせによう言うわ。
そう思いながら、手に持つ警棒を伸ばし振りかぶる。
「はっ、もう.....」
「させるかこの馬鹿が」
「テメェ.....!がはっ!?」
こっちを振り向き驚きの顔をした馬鹿の頭めがけ警棒を振り下ろすとバキッといい音が鳴った。
「~♪ええ音やな。未途もそう思わへん?」
「ぁ.....た、たつみくん」
気を失ったであろう馬鹿を未途から引き剥がしそこら辺に転がす。その際、繋がっていたブツも抜けたため未途が咄嗟に口を抑えることになったが........ムカつくわァ。
様子見したんはワイやけど、未途も他の男のもので何気持ちよくなってんねん。
......アカン。
このままやと未途に八つ当たりしてまう。気を紛らわすためにもあの馬鹿を蹴っとくか......。
「辰巳君.....なんでここに?」
蹴ろうとしたが未途の意識がワイに向いてることに気分が上昇する。
「ワイが馬鹿と未途をそのまま二人っきりにさせるわけないやん。さ、隣の部屋に行こか?ここにおったら咲洲が来るかもしれへんし」
「!......お、おれはここにいる」
「なんで?まさか咲洲を待ってるん?ワイより咲洲をとるんか」
「そういうわけじゃ....!」
「それに苦しいやろ?ここ」
そう言って指を指すんは未途の下腹部。
指でつーっとなぞれば未途は大袈裟に肩を跳ねさせた。
.....そんな反応されたら無理やりにでも押し倒したくなるやん。
恥ずかしそうな顔しよって、煽るんが上手いなぁ!
「......行こか」
その衝動を抑えて未途に手をさし伸ばせば、未途はおずおずとワイの手を取った。
........それは肯定でいいねんな?
未途を抱き抱え、ワイがさっきまでいた一室に戻りベッドに未途を寝かす。
アカン、ちょい乱暴やったかな?どうも気がはやってるみたいや。
「ちょ、ちょっとイイデスカ?」
「なんや?」
「シャワー浴びたいデス」
「......確かにあの馬鹿の残り香が未途からするんは嫌やな。わかったシャワー浴びよか」
「ぇっ、ひとりで――」
「なに?」
「いぇ、ナンデモアリマセン」
?
どうしたんやろな急に.......。
まぁええか。
また未途を抱えて風呂場に行く。
ワイも服を脱いで......
「なんでそんな震えとるん?」
「うぇっ!?いや、全然震えてないよ!」
未途がそう言うんなら気にせんけど。
「あっ、あの......ちょっとくすぐったい」
「ん~?」
噛み跡は.....ない。キスマークもない。
「んあ!?ちょっ.......!?」
後孔に指を突っ込み、ぐにぐに動かす。
中出しもされてないようやな.....。
「っ、っ......!ふぐ......」
「おっと」
崩れ落ちるように倒れそうだった未途を咄嗟に支える。
「なんや?もういったんか」
「い、ってな.....!んっぁ!?」
「ほぉ~......ならワイに少し付き合ってな」
「やっ、はぁあ!ん~!......っま、まって!!」
待ってという言葉に指を止める。
なのになんでそんな驚いた顔しよんの?ワイはちゃんと未途の言うこと聞くで。
「不思議そうな顔やな?別にワイは未途に無理矢理したいわけじゃないねん」
「??」
「やるならラブラブがええ。ワイが未途を求めて、未途もワイを求める......そんなセックスがいい」
「こ、ここで俺がセックスしたくないって言ったら.....?」
「言ったやろ?無理矢理したいわけやないって。未途が嫌言うならワイは従うで。やけど――」
言葉を切り、未途を後ろから強く抱きしめる。
「ワイだって好きな子としたいんやで?聖人君子ちゃうんやから。未途がクズに強姦された時も、馬鹿にめちゃくちゃにされた時も.....我慢したんや。未途を怖がらせんように、未途に嫌われんように」
めっちゃ我慢したわ。
歯を突き立て噛み跡を残したなったし
上塗りするように優しく抱きたかったし
.....繋がりたかった
どうやらワイは未途に怖がられとるようやから、刺激せぇへんように接しとったのに。
なのに、いっつも横からかっさわられる。
この薄い腹をワイのでいっぱいにしたい
この小さな口から甘い声を聞きたい
その黒い瞳にワイだけを映して欲しい
「.....アカン。想像してもうた」
「っ、あた、あた、あたってる.....!」
「それはしゃーない。ん~......なぁダメか?今は妥協でもええねん。嘘でもええねん。ワイは未途とラブラブしたい~」
甘えるようにそう言えば未途は顔を真っ青....真っ青??
え.....なんで??
「ぐっ、わか、わかった!」
だけど未途のその返事で全てがどうでも良くなる。
「ほんまに!?~~っならさっさと上がろか」
驚く未途をよそに急いで諸々を済ませ、シャワーを終える。さっきから無言の未途に首を傾げるが、そのままベッドに上がれば柄にもなく緊張している自分を自覚した。
.....心臓バックバクやわ。
未途もワイと同じ気持ちやろうか?
そう疑問に思い未途の胸に手を置けば、ワイのとは桁違いの鼓動を感じた。
「.....」
未途も緊張してるらしい。そう気づけば、胸がポカポカしてなんか暖かい気持ちになった。
あぁ、嬉しい。
未途も緊張してくれてるんや。
未途の生白い足を持ち上げ、頬を寄せながらそう思えば愛おしさが更に増す。
この気持ちを伝えたくて、なんとなしに足に唇を落としたら未途は「ん」と声を漏らした。
脚、足、あし.......。
約束を思い出す。
未途はワイに約束を破ったら足をくれる言うた。
この足を。
未途の自由の象徴
これさえなければ結婚する必要ない。
だって、何処にも行けへんようになるんやから。
未途があの約束を持ち出してきた時、思わず神というもんの存在を信じた。いつものワイなら唾を吐き足蹴にするほどの行為やのに.....感謝してもうたんや。
それぐらいワイにとって未途の約束は有利な話しやった。
「未途......愛しとるで」
この先、未途は必ずワイに背を向ける。
約束を破られんのは嫌やけど、その一回で未途の全てが手に入るんなら我慢できる。
それがいつになるんかは知らん。
だが、そう遠くない未来なのは.....ワイの第六感が囁いとる。
また未途の脚に唇を落とす。
あぁ、楽しみや
《もう逃げられない》
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