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第30話 情緒不安定だってよ
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辰巳君に姫抱っこされながら辿り着いたのは、やはり彼の部屋だった。俺を自室に返してくれる気はサラサラ無いらしい。
そういえば辰巳君は学校行かなくていいんだろうか?もうすぐ体育祭で忙しいって聞いたんだけどなぁ。
姫抱っこしながら辰巳君はソファに座り、俺を脚の間に下ろした。俺はぐてりと辰巳君の胸に凭れるように座り直して、ベストポジに満足する。
「なんや、えらい甘えてくるやん。どうしたん?馬鹿にそう躾られたんか?」
「躾って....違うよ。」
「いつものお前ならなんやかんや言って、離れたがるやろ?」
!!!!!
........確かにそうかも。
俺は今の自分の行動を思い返しピキリと固まった。なんでベスポジ確保してんだよ俺.....。
「その様子やと無意識かいな。未途にくっつかれんのは嬉しいんやけど......そういう風にしたんはあの馬鹿なんやと思うと、」
背後からひんやりとした空気が発せられたように感じ、身体がブルりと震える。俺のその震えが彼にはどうやら逃げる動作に見えた様で、お腹に回った腕の力が強くなった。
「あぁ、はらわた煮えくり返そうやわ。」
「っ」
「こんな跡までようさんつけおって.....」
ツーっと少しカサついた指で首元をなぞられる。
俺はその指がいつキスマークや歯型の跡を抉りとろうとするのかヒヤヒヤした。それ程俺の首元に向けられる視線は強かったのだ。
「....そんな怯えんでええよ。未途を傷つけるようなことはせぇへん。」
「あ、ははは.......」
もう笑うしかないよね。辰巳君怖すぎるよ雰囲気が。よし、話をかえよう。
「あのさ!辰巳君って体育祭の準備とか大丈夫なの?今の時期って忙しいんだよね?」
「未途はワイと一緒に居たくないんか?それは遠回しにワイのこと拒絶してるん?」
どうしてそういう思考になったの!?!?
ただ心配して聞いただけだよ!?
「そっ、そんなわけないよ!えーっと....そうだ!風紀室で鳥飼ってるんですよね?名前はなんて言うんですか?」
俺がそう聞くと、抱き締められる力が更に強くなった。......俺を折る気かな?
「なんで鳥の名前聞くん?浮気か?あのクズと馬鹿だけじゃ飽き足らず鳥も誑かすんか?」
あー.....今日の辰巳君は何を言ってもまともに会話できないなぁ。
それに、俺はいつからヤンデレな彼氏を持ったんでしょうか?浮気って.....。
「1回落ち着きましょう辰巳君。俺がいつクズ?と馬鹿を誑かしたっていうんですか?」
というかクズって誰やねん?馬鹿が誰を指しているかはわかるけど、クズは知らないなぁ。
「....無意識かいな。まぁ無意識でも浮気はアカンで?相手を勘違いさせるような行動はやめるんや。ちゃーんとワイの言うこと.........言うことを.......」
「???」
「せや、....た.....ちゃんと........やのに.......て.......なんでや.......っ......」
「辰巳君?」
思わず遠い目をしてると辰巳君の様子がおかしいことに気づいた。途中で話すのをやめ、うわ言のようにブツブツと何かを呟き始めたのだ。
「ど、どうしたの?」
「ワイは言った。......言うた。なのに....未途はなんでワイの言うこと聞かんのや?」
急に話し出したと思ったら、
辰巳君は畳み掛けるように俺を責めた。
「そうやっあの日、教室で用済ませたら直ぐ風紀室へ行け言うたよなぁ!なんで言うこと聞かんかったん!?直ぐ風紀室行けばあの馬鹿に捕まることなかったやん!」
「うぇ!?」
ドサリ
興奮し息をフゥフゥと荒らげる辰巳君の顔が真正面にある。.....どうやら俺はソファの上に押し倒されたようだ。
「学校に行かしたる条件で、風紀室へ行け言うたぞワイはっ!!それを呑まな腱切ってでも部屋から出さんとっ、閉じ込めるとっ!!!それに対して未途はわかった言うたよなぁ?だから例え教室に用があっても、すぐに風紀室向かうとワイは信じとった!」
「っ」
「なんでワイとの約束破ったん?未途が風紀室とは真逆の方へ行ったと聞いたときっ、未途が馬鹿に連れてかれたいうのを聞いたとき....ワイがどんな気持ちやったか知っとるんか!?」
悲しそうに顔を歪め俺を見る辰巳君にかける言葉が咄嗟に見つからなかった。とにかく何か言おうと口を開こうとした時、辰巳君に遮られる。
「やっぱ部屋から出さんほうがよかったんや。動けんよう腱を切ってでも未途を部屋に閉じ込めとけばよかったんや.....」
「辰巳君「っええよ、何も言わんで。未途がそう動いた理由は進藤から聞いとる。知っとるから。」え?」
「あのクズに言いくるめられたんやろ?お前を責めたけどワケは知っとるから.....今のはワイの一方的な八つ当たりや。かんにんな.....。」
なんでそんな泣きそうな顔をするの?
俺は今にも泣きそうな辰巳君の表情から目が逸らせなかった。
見たことあるなぁ......。
そんな既視感のままに両手を伸ばしカチャリと彼のメガネに指をかけ外す。外したメガネを放り投げ、彼の、辰巳君の頬に手を伸ばした。
俺の手に擦り寄るように頬を寄せた辰巳君と目が合った瞬間彼の表情が歪む。
「未途.....誰を見とるんや?」
「ぁ、そりゃ辰巳君だよ。目の前には君しかいないんだし。」
俺の答えに不満そうな彼の頭をワシャワシャと撫でた。別にこれで乗り切ろうと思ってるわけでは......思ってます。
しかしそんな俺の思惑を見透かしたのか、辰巳君は俺を責めるようにギュッと抱きしめた。
こんな狭いソファの上で向き合うように抱きしめられながら数分過ごす。
俺が辰巳君の体温にウトウトし始めたとき、辰巳君は特大な爆弾を落とした。
「未途好きや。」
微睡む思考にポツリと落とされたその言葉はインクのようにジワジワと広がり、やがて俺の脳は覚醒した。
「好き、好きや。ワイだけを見て欲しい。」
俺は辰巳君の胸に顔を埋めてる状態だから彼が今どんな表情でその言葉を言っているのかわからない。
結婚結婚言ってた辰巳君から『好き』という言葉を聞くとは思わなくて、内心すごい驚いている。
まぁ態度があからさまだったけどね辰巳君は。
俺にそういう気持ちを抱いているのは気づいていた.......けど好きという言葉を伝えてくるとは予想外。
はぁ.......これは告白だよね?告白なら返事を言わなきゃダメだよね?
ぶっちゃけ俺は初めて会った時にされたプロポーズのような結果になるんじゃないかと危惧している。いいえと言っても都合のいい様に言葉を変えられ、OKしたことにされるという......。
でも、よくよく考えればそれはないと思う.....思いたいなぁ.....。
だって絞り出すような声量だし、何より聞いてるこっちが胸を痛めそうなほど悲痛な声音をしていた。
これはマジなやつだと感じ、ちゃんと返事をしようと辰巳君に目を合わせようとしたら....。
「......返事はしなくてええで。」
ピタリと身体が止まる。俺はガラリと変わった声音に恐る恐る顔をあげると、ガラス玉のような瞳を三日月のように歪めた辰巳君と目が合った。
「もし、拒絶されたらワイは.....狂ってしまうかもしれへん。せやから返事はせぇへんといて。」
『君は既に狂ってるよ』という言葉を呑み込む。彼は自分が狂ってないと思っているらしい。
.....プロポーズの時よりタチが悪い。
俺を脅してるようなものじゃないか!
こんなの返事できないよ.....
俺は辰巳君から視線を外し、また彼の胸に顔を埋める。そんな俺を辰巳君はギュッとまた抱きしめた。
「好き、好きや。好きなんや。」
耳元で囁かれるその言葉はなんだか呪いのようで俺は身を震わせた。
「ずーっと一緒に居たいなぁ.....」
彼の気持ちを受け入れることも、拒絶することも出来ない。
じゃあ彼の思いはどうなるのだろう?
ずっと俺に請うように言い続けるのだろうか?好きと。
彼の気持ちをサラサラ受け取る気がない俺と、自身の気持ちを拒絶をさせる気がない辰巳君。
どっちが先に壊れるのかな?
俺が彼の愛に壊されるのか......
彼が俺の拒絶に壊されるのか......
「未途」
あぁ、でも彼は既に無自覚に壊れている。
「他の奴に目移りしたらそいつ殺す」
俺に勝ち目ないよなぁ.......。
そういえば辰巳君は学校行かなくていいんだろうか?もうすぐ体育祭で忙しいって聞いたんだけどなぁ。
姫抱っこしながら辰巳君はソファに座り、俺を脚の間に下ろした。俺はぐてりと辰巳君の胸に凭れるように座り直して、ベストポジに満足する。
「なんや、えらい甘えてくるやん。どうしたん?馬鹿にそう躾られたんか?」
「躾って....違うよ。」
「いつものお前ならなんやかんや言って、離れたがるやろ?」
!!!!!
........確かにそうかも。
俺は今の自分の行動を思い返しピキリと固まった。なんでベスポジ確保してんだよ俺.....。
「その様子やと無意識かいな。未途にくっつかれんのは嬉しいんやけど......そういう風にしたんはあの馬鹿なんやと思うと、」
背後からひんやりとした空気が発せられたように感じ、身体がブルりと震える。俺のその震えが彼にはどうやら逃げる動作に見えた様で、お腹に回った腕の力が強くなった。
「あぁ、はらわた煮えくり返そうやわ。」
「っ」
「こんな跡までようさんつけおって.....」
ツーっと少しカサついた指で首元をなぞられる。
俺はその指がいつキスマークや歯型の跡を抉りとろうとするのかヒヤヒヤした。それ程俺の首元に向けられる視線は強かったのだ。
「....そんな怯えんでええよ。未途を傷つけるようなことはせぇへん。」
「あ、ははは.......」
もう笑うしかないよね。辰巳君怖すぎるよ雰囲気が。よし、話をかえよう。
「あのさ!辰巳君って体育祭の準備とか大丈夫なの?今の時期って忙しいんだよね?」
「未途はワイと一緒に居たくないんか?それは遠回しにワイのこと拒絶してるん?」
どうしてそういう思考になったの!?!?
ただ心配して聞いただけだよ!?
「そっ、そんなわけないよ!えーっと....そうだ!風紀室で鳥飼ってるんですよね?名前はなんて言うんですか?」
俺がそう聞くと、抱き締められる力が更に強くなった。......俺を折る気かな?
「なんで鳥の名前聞くん?浮気か?あのクズと馬鹿だけじゃ飽き足らず鳥も誑かすんか?」
あー.....今日の辰巳君は何を言ってもまともに会話できないなぁ。
それに、俺はいつからヤンデレな彼氏を持ったんでしょうか?浮気って.....。
「1回落ち着きましょう辰巳君。俺がいつクズ?と馬鹿を誑かしたっていうんですか?」
というかクズって誰やねん?馬鹿が誰を指しているかはわかるけど、クズは知らないなぁ。
「....無意識かいな。まぁ無意識でも浮気はアカンで?相手を勘違いさせるような行動はやめるんや。ちゃーんとワイの言うこと.........言うことを.......」
「???」
「せや、....た.....ちゃんと........やのに.......て.......なんでや.......っ......」
「辰巳君?」
思わず遠い目をしてると辰巳君の様子がおかしいことに気づいた。途中で話すのをやめ、うわ言のようにブツブツと何かを呟き始めたのだ。
「ど、どうしたの?」
「ワイは言った。......言うた。なのに....未途はなんでワイの言うこと聞かんのや?」
急に話し出したと思ったら、
辰巳君は畳み掛けるように俺を責めた。
「そうやっあの日、教室で用済ませたら直ぐ風紀室へ行け言うたよなぁ!なんで言うこと聞かんかったん!?直ぐ風紀室行けばあの馬鹿に捕まることなかったやん!」
「うぇ!?」
ドサリ
興奮し息をフゥフゥと荒らげる辰巳君の顔が真正面にある。.....どうやら俺はソファの上に押し倒されたようだ。
「学校に行かしたる条件で、風紀室へ行け言うたぞワイはっ!!それを呑まな腱切ってでも部屋から出さんとっ、閉じ込めるとっ!!!それに対して未途はわかった言うたよなぁ?だから例え教室に用があっても、すぐに風紀室向かうとワイは信じとった!」
「っ」
「なんでワイとの約束破ったん?未途が風紀室とは真逆の方へ行ったと聞いたときっ、未途が馬鹿に連れてかれたいうのを聞いたとき....ワイがどんな気持ちやったか知っとるんか!?」
悲しそうに顔を歪め俺を見る辰巳君にかける言葉が咄嗟に見つからなかった。とにかく何か言おうと口を開こうとした時、辰巳君に遮られる。
「やっぱ部屋から出さんほうがよかったんや。動けんよう腱を切ってでも未途を部屋に閉じ込めとけばよかったんや.....」
「辰巳君「っええよ、何も言わんで。未途がそう動いた理由は進藤から聞いとる。知っとるから。」え?」
「あのクズに言いくるめられたんやろ?お前を責めたけどワケは知っとるから.....今のはワイの一方的な八つ当たりや。かんにんな.....。」
なんでそんな泣きそうな顔をするの?
俺は今にも泣きそうな辰巳君の表情から目が逸らせなかった。
見たことあるなぁ......。
そんな既視感のままに両手を伸ばしカチャリと彼のメガネに指をかけ外す。外したメガネを放り投げ、彼の、辰巳君の頬に手を伸ばした。
俺の手に擦り寄るように頬を寄せた辰巳君と目が合った瞬間彼の表情が歪む。
「未途.....誰を見とるんや?」
「ぁ、そりゃ辰巳君だよ。目の前には君しかいないんだし。」
俺の答えに不満そうな彼の頭をワシャワシャと撫でた。別にこれで乗り切ろうと思ってるわけでは......思ってます。
しかしそんな俺の思惑を見透かしたのか、辰巳君は俺を責めるようにギュッと抱きしめた。
こんな狭いソファの上で向き合うように抱きしめられながら数分過ごす。
俺が辰巳君の体温にウトウトし始めたとき、辰巳君は特大な爆弾を落とした。
「未途好きや。」
微睡む思考にポツリと落とされたその言葉はインクのようにジワジワと広がり、やがて俺の脳は覚醒した。
「好き、好きや。ワイだけを見て欲しい。」
俺は辰巳君の胸に顔を埋めてる状態だから彼が今どんな表情でその言葉を言っているのかわからない。
結婚結婚言ってた辰巳君から『好き』という言葉を聞くとは思わなくて、内心すごい驚いている。
まぁ態度があからさまだったけどね辰巳君は。
俺にそういう気持ちを抱いているのは気づいていた.......けど好きという言葉を伝えてくるとは予想外。
はぁ.......これは告白だよね?告白なら返事を言わなきゃダメだよね?
ぶっちゃけ俺は初めて会った時にされたプロポーズのような結果になるんじゃないかと危惧している。いいえと言っても都合のいい様に言葉を変えられ、OKしたことにされるという......。
でも、よくよく考えればそれはないと思う.....思いたいなぁ.....。
だって絞り出すような声量だし、何より聞いてるこっちが胸を痛めそうなほど悲痛な声音をしていた。
これはマジなやつだと感じ、ちゃんと返事をしようと辰巳君に目を合わせようとしたら....。
「......返事はしなくてええで。」
ピタリと身体が止まる。俺はガラリと変わった声音に恐る恐る顔をあげると、ガラス玉のような瞳を三日月のように歪めた辰巳君と目が合った。
「もし、拒絶されたらワイは.....狂ってしまうかもしれへん。せやから返事はせぇへんといて。」
『君は既に狂ってるよ』という言葉を呑み込む。彼は自分が狂ってないと思っているらしい。
.....プロポーズの時よりタチが悪い。
俺を脅してるようなものじゃないか!
こんなの返事できないよ.....
俺は辰巳君から視線を外し、また彼の胸に顔を埋める。そんな俺を辰巳君はギュッとまた抱きしめた。
「好き、好きや。好きなんや。」
耳元で囁かれるその言葉はなんだか呪いのようで俺は身を震わせた。
「ずーっと一緒に居たいなぁ.....」
彼の気持ちを受け入れることも、拒絶することも出来ない。
じゃあ彼の思いはどうなるのだろう?
ずっと俺に請うように言い続けるのだろうか?好きと。
彼の気持ちをサラサラ受け取る気がない俺と、自身の気持ちを拒絶をさせる気がない辰巳君。
どっちが先に壊れるのかな?
俺が彼の愛に壊されるのか......
彼が俺の拒絶に壊されるのか......
「未途」
あぁ、でも彼は既に無自覚に壊れている。
「他の奴に目移りしたらそいつ殺す」
俺に勝ち目ないよなぁ.......。
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