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第22話 休息だってよ
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「うぅ.......んん?」
ふと目が覚めた。
起き上がりキョロキョロと周りを見渡してここがどこか確認する。
ぼーっとしている頭を振り、眠気を覚ました。
すると思い出すのは昨日の出来事。
あぁここは辰巳君の部屋か。
俺、風呂場で寝ちゃったんだっけ.....。
昨日は大変だったなぁ。まさか自分が強姦されるなんて思わなかったから。
俺、以前強姦されてる子見かけたことあるんだけど、それを助けを呼ばず笑って覗いてたんだ。もしかして、その罰が下ったのかな?
助けを呼ばなかった俺が最低だと思う?
けど、見つけた時にはもう既にネコの子は壊れてたし......。誰か助けを呼んでも間に合わなかったよ。
あの時は笑えた。やっぱり助けなんて来ないんだって。
犯される前に助けが来るなんて漫画だけだよね。
はぁ、この学園に通って1年9ヶ月でまさか処女を失うとは。しかも相手は顔もわからん親衛隊。
........強姦された後なのに俺って意外と元気あるじゃん。神経図太いのかな?俺って。
「日常に戻れるなら強姦くらい大したことないよ。」
自然と口から出た言葉にハッとする。
そうだ。日常に戻れるんだ。
朝起きて、嫌々ながらも学校に登校して、済賀君や王道君と話して、三津谷は無視して、授業受けて、授業サボってフラフラ歩いて、購買で昼食買って食って、またフラフラして、学校から帰って、晩御飯作って、眠る。
俺の愛しき日常。
「大丈夫だ......。」
「何が大丈夫なん?」
声が聞こえた方を見ると辰巳君が救急箱を持ってドアの前に佇んでいた。
「あ、おはよう辰巳君。おはようでいいんだよね?」
「おはようであっとるで。.....なんや、元気そうやな。」
「うんまぁ、自分でもびっくりしてる。一晩眠ったら案外平気になるもんなんだね。」
「......それは違うで。多分まだ心が追いついてないだけや。」
「いや、心は追いついてるよ。自覚してるから俺は。それに過ぎたことは気にしない主義だし。」
「.....そうか。未途が平気ならワイはええ。さ、包帯変えるで。」
「包帯?」
「頬は冷やしたから腫れは引いたんやが、手首と首の跡だけは時間がたたんと消えへん。見られたくないやろ?」
あ、そういえば頬叩かれて、首絞められたんだった。頬を触っても少し痛むだけだし、首は見れないから分からないけど、辰巳君が処置してくれたんだろう。包帯が巻かれている。
手首は掴まれた跡がくっきりついてるんだろうなぁ....。
見たくないや。
「ありがと。」
「....未途にワイがつけた傷以外ついとんのが嫌なんや。あぁ忌まわしい。ワイの未途に.....。」
首の包帯をとり、俺の傷跡を指でなぞる辰巳君の瞳はどこか暗い。
「擽ったいよ辰巳君。」
俺は絶対に辰巳君のセリフに反応しないぞ。
なんだよワイの未途って。いつ俺は辰巳君のものになったんだ?
「.....すまん。はよ巻くな。それにしても未途は首細過ぎないか?こんなんすぐ折れてまうで?」
「細くない。標準です。」
「身体も薄っぺらいし....。ちゃんと食っとるんか?」
「食べてます。薄くないです。標準です。」
俺は至って普通で標準だ。
辰巳君がデカいんだよ。分厚いんだよ。
「まぁええ。飯食えるか?用意できとるんやけど。」
「食べる!」
超お腹すいてた。昨日の夜から食ってないし。
俺は辰巳君の後について行きリビングへ。そして目に入ったのは色とりどりの洋風料理だ。パスタ、ピザ、アヒージョ.....多いな。料理の名前は分からないが本で見たことある洋風料理が結構な量並んでいる。
でも美味しそう。
「いっぱい食べぇ。」
「いただきます!!」
うまっ!!
カルボナーラとか久しぶりに食べたわ!このコクのあるクリームは美味しっ
「未途、暫く学校休みぃや。」
「?なんで。」
「未途は1回襲われとるんやで?危機感持たなあかんよ。犯人捕まるまではワイの部屋で大人しくしとき。......食事中にこないな話しとうないけど、ワイの時間がないねん。堪忍な?」
「もぐもぐ、謝らなくていいよ。でも暫く休むのはやだ。今日は休むけど明日からはちゃんと登校する。」
日常に戻りたいし、実感したい。今閉じこもると俺の精神衛生上宜しくない気がする。
「ダメや。この部屋からださん。」
「やだ。出てく。」
「ダメや。」
「やだ。」
「......はぁ、わかった。登校してもええけど教室には行くな。ワイと一緒に風紀室におるんやで。これが呑めんなら足の腱切ってでも部屋からださん。」
足の腱って.....物騒だよ辰巳君。
さすがに歩けなくなるのは嫌だな。その条件飲むしかないか...。
「う~、わかった。」
あ、でも昨日済賀君に魚受け取るって言ったのに取りに行けなかった、約束破っちゃったな。
朝チラッと教室見に行って済賀君にだけでも会っていこう。
「あのさ、朝ちょっとだけ教室寄っていい?」
「未途ワイの話聞いとらんかったんか?」
「聞いてたよ。でも一瞬だけ寄るだけだから。お願いします。」
「はぁ~......ワイは明日会議あるから教室までは着いてけれん。気をつけるんやで。せや、誰か付けたろか?」
「いらない。」
「そか。.......と、ワイはもう行くわ。今日はここで安静にしとるんやで。」
「はいはい。」
「じゃ、行ってきますのチュー」
「は?んむっ!?」
「ん、はっ.....っ....」
「んぐっ....ふっぁ、うぅ....まっ、まって、ふみゅっ」
待って待って!
何行ってきますのチューって!?
というか、やっぱ1回キスとか許すとガード緩くなるなぁ俺。
なんかさ.....強姦された後だともうキスくらい良くね?って思っちゃう。
それに辰巳君とは風呂場で散々キスしたし。
「ちょっ、ちょ......んっ、じか、んっ」
「はっ......はっ、未途、未途っ.....んん」
ちょ、長い長いよ辰巳君。
いつまでキスしてんの?
ねぇ、学校行かなくていいの?
......くどい!!
ガスッ!
「っぐぁ!」
座ったままだったからあまり力入らなかったけど、なんとか鳩尾に拳がはいったようだ。
「辰巳君学校!」
「うぅ、離れ難いでぇ......。もっと未途と一緒に居たい。」
「はよ行け!」
「あともう1回だけ......。」
「行け言っとるだろ!!!」
ゲシッ
「......行ってきます」
「いってらー」
蹴り飛ばしてなんとか行かせたが、あの捨てられた子犬のような目はどうなん?
俺にはその攻撃効かんからな。
さて、パスタとピザお腹いっぱいに食ったし、何しよう。
......うーん暇だな。
寝よ。
ーーーーーーーーーーーーーー
ある寮部屋で2人の男子生徒が言い合っている。
「おいっ落ち着け馬鹿野郎!!」
「あ''?俺は落ち着いてるぜ?」
「どこがだ!?お前今自分がなんて言ったのか理解してんのか!?」
「当たり前だろ。」
「嫌われるぞ。いや、憎まれる。ぜってぇに。」
「別にいいだろ。願ってもない事だ。」
「っ、はぁー..........ホント救いようねぇな。頼むから大人しくしててくれよ。」
「.......なぁ、俺が知らねぇとでも思ってんのか?」
「.......」
「俺をキレさせたのはお前らの監督不届きさだ。俺にそうさせたのはお前らだ。」
「今調べてる。もう少し待ってくれ。」
「.....」
「だっておかしいだろ!お前はその怒りを被害者にぶつけようとしてんだぞ!?壊す気かっ!?」
「......」
「なぁ、もう少し時間くれよ。.....アイツが可哀想だ。その苛立ち、怒りは加害者に向けるべきだ。決してアイツに向けていいもんじゃねぇ。」
「俺は我慢が嫌いだ。」
「....?」
「最初から我慢なんてしなきゃよかったんだ。そうしたら今、少なくとも余裕は持ててた。」
「.....我慢だって必要だ。」
「無理だ。無理なんだよ。我慢、我慢、我慢っ、我慢して俺は何を得た?ただ横からかっさわれただけじゃねーか!我慢してた俺がバカみてぇだ。」
「......」
「.....はぁ、今日は待つ。明日はお前がなんと言おうと動くからな。」
「.....わかった。」
「さっさと行け」
行けと言われた男子生徒は部屋から退出し、思案の表情を浮かべる。
「どうするもんかね......手がかりがないしなぁ。」
本人に事情を聞きたいが、あの風紀委員長に守られているため近づくことすらできない。
あの風紀委員長は得体が知れないからあまり関わりたくないんだが.....そうも言ってられねぇか。
「失礼します」
向かったのは風紀室。中に入ると風紀委員達が忙しそうに動いていた。
周りから視線を感じながらもさらに奥、風紀委員長室へ行く。
嫌な雰囲気を感じながらもノックをした。
「入ってええでー。」
「失礼します。」
彼を一目見てわかった。怒っている。
「なんの用や?進藤」
「猫に関してなんですけど....情報は得られましたか?」
「あ''?なんでワイに聞くん。そんなん鳥に聞けや。それ以外にあるんやろ?ワイに。」
「.....今日の内に加害者捕まえることはできません。」
「せやなぁ。手がかりなーんもないしな。」
「アイツが明日には動くと。」
「殺すか....」
「っ、待ってください!俺が何とかしますから、貴方は猫、設楽から目を離さないで欲しいんです!」
「お前に止められるんか?あの馬鹿を。それに動くってことは未途に手ぇ出すってことやろ?ワイが今から殺しに行った方が早いやん。明日まで待つ必要ない。」
「......それは俺が許さねぇ。」
「なんや、ワイとやる気か?」
「アイツはやっと一緒に居られるやつを見つけたんだ。アイツの苦労を知らねぇあんたがアイツを止めようなんざ俺がさせねぇ。それに先に見つけたのはアイツだ。」
「馬鹿の苦労なんて知るか。それに先に見つけたやて?それがどうしたんや。あの馬鹿嫌われてるやん。未途が選ぶわけない。.....お前は何がしたいん?未途を守りたいんか?あの馬鹿に壊させたいんか?」
「っ俺は.....」
「はぁ、もうええ。帰りぃ。ただし未途に手ぇ出したら許さへんからな。馬鹿にそう言っときぃ。」
「ぐ、わかりました.....失礼します。」
進藤の頭の中はさっき言われた言葉がグルグルと回っていた。
守りたいのか?壊したいのか?
そんなの.......
俺はただ2人に幸せになって欲しいだけだ。
だけど2人が幸せになるには、アイツは不器用すぎるし、もう1人に至っては興味すらねぇときた。
アイツのやり方じゃ心が離れてくだけ。でもアイツはそんなやり方しか知らない。
「....どうすればいいんだよ」
もし、設楽の犠牲の上にアイツの幸せが成り立つなら、俺はー
ふと目が覚めた。
起き上がりキョロキョロと周りを見渡してここがどこか確認する。
ぼーっとしている頭を振り、眠気を覚ました。
すると思い出すのは昨日の出来事。
あぁここは辰巳君の部屋か。
俺、風呂場で寝ちゃったんだっけ.....。
昨日は大変だったなぁ。まさか自分が強姦されるなんて思わなかったから。
俺、以前強姦されてる子見かけたことあるんだけど、それを助けを呼ばず笑って覗いてたんだ。もしかして、その罰が下ったのかな?
助けを呼ばなかった俺が最低だと思う?
けど、見つけた時にはもう既にネコの子は壊れてたし......。誰か助けを呼んでも間に合わなかったよ。
あの時は笑えた。やっぱり助けなんて来ないんだって。
犯される前に助けが来るなんて漫画だけだよね。
はぁ、この学園に通って1年9ヶ月でまさか処女を失うとは。しかも相手は顔もわからん親衛隊。
........強姦された後なのに俺って意外と元気あるじゃん。神経図太いのかな?俺って。
「日常に戻れるなら強姦くらい大したことないよ。」
自然と口から出た言葉にハッとする。
そうだ。日常に戻れるんだ。
朝起きて、嫌々ながらも学校に登校して、済賀君や王道君と話して、三津谷は無視して、授業受けて、授業サボってフラフラ歩いて、購買で昼食買って食って、またフラフラして、学校から帰って、晩御飯作って、眠る。
俺の愛しき日常。
「大丈夫だ......。」
「何が大丈夫なん?」
声が聞こえた方を見ると辰巳君が救急箱を持ってドアの前に佇んでいた。
「あ、おはよう辰巳君。おはようでいいんだよね?」
「おはようであっとるで。.....なんや、元気そうやな。」
「うんまぁ、自分でもびっくりしてる。一晩眠ったら案外平気になるもんなんだね。」
「......それは違うで。多分まだ心が追いついてないだけや。」
「いや、心は追いついてるよ。自覚してるから俺は。それに過ぎたことは気にしない主義だし。」
「.....そうか。未途が平気ならワイはええ。さ、包帯変えるで。」
「包帯?」
「頬は冷やしたから腫れは引いたんやが、手首と首の跡だけは時間がたたんと消えへん。見られたくないやろ?」
あ、そういえば頬叩かれて、首絞められたんだった。頬を触っても少し痛むだけだし、首は見れないから分からないけど、辰巳君が処置してくれたんだろう。包帯が巻かれている。
手首は掴まれた跡がくっきりついてるんだろうなぁ....。
見たくないや。
「ありがと。」
「....未途にワイがつけた傷以外ついとんのが嫌なんや。あぁ忌まわしい。ワイの未途に.....。」
首の包帯をとり、俺の傷跡を指でなぞる辰巳君の瞳はどこか暗い。
「擽ったいよ辰巳君。」
俺は絶対に辰巳君のセリフに反応しないぞ。
なんだよワイの未途って。いつ俺は辰巳君のものになったんだ?
「.....すまん。はよ巻くな。それにしても未途は首細過ぎないか?こんなんすぐ折れてまうで?」
「細くない。標準です。」
「身体も薄っぺらいし....。ちゃんと食っとるんか?」
「食べてます。薄くないです。標準です。」
俺は至って普通で標準だ。
辰巳君がデカいんだよ。分厚いんだよ。
「まぁええ。飯食えるか?用意できとるんやけど。」
「食べる!」
超お腹すいてた。昨日の夜から食ってないし。
俺は辰巳君の後について行きリビングへ。そして目に入ったのは色とりどりの洋風料理だ。パスタ、ピザ、アヒージョ.....多いな。料理の名前は分からないが本で見たことある洋風料理が結構な量並んでいる。
でも美味しそう。
「いっぱい食べぇ。」
「いただきます!!」
うまっ!!
カルボナーラとか久しぶりに食べたわ!このコクのあるクリームは美味しっ
「未途、暫く学校休みぃや。」
「?なんで。」
「未途は1回襲われとるんやで?危機感持たなあかんよ。犯人捕まるまではワイの部屋で大人しくしとき。......食事中にこないな話しとうないけど、ワイの時間がないねん。堪忍な?」
「もぐもぐ、謝らなくていいよ。でも暫く休むのはやだ。今日は休むけど明日からはちゃんと登校する。」
日常に戻りたいし、実感したい。今閉じこもると俺の精神衛生上宜しくない気がする。
「ダメや。この部屋からださん。」
「やだ。出てく。」
「ダメや。」
「やだ。」
「......はぁ、わかった。登校してもええけど教室には行くな。ワイと一緒に風紀室におるんやで。これが呑めんなら足の腱切ってでも部屋からださん。」
足の腱って.....物騒だよ辰巳君。
さすがに歩けなくなるのは嫌だな。その条件飲むしかないか...。
「う~、わかった。」
あ、でも昨日済賀君に魚受け取るって言ったのに取りに行けなかった、約束破っちゃったな。
朝チラッと教室見に行って済賀君にだけでも会っていこう。
「あのさ、朝ちょっとだけ教室寄っていい?」
「未途ワイの話聞いとらんかったんか?」
「聞いてたよ。でも一瞬だけ寄るだけだから。お願いします。」
「はぁ~......ワイは明日会議あるから教室までは着いてけれん。気をつけるんやで。せや、誰か付けたろか?」
「いらない。」
「そか。.......と、ワイはもう行くわ。今日はここで安静にしとるんやで。」
「はいはい。」
「じゃ、行ってきますのチュー」
「は?んむっ!?」
「ん、はっ.....っ....」
「んぐっ....ふっぁ、うぅ....まっ、まって、ふみゅっ」
待って待って!
何行ってきますのチューって!?
というか、やっぱ1回キスとか許すとガード緩くなるなぁ俺。
なんかさ.....強姦された後だともうキスくらい良くね?って思っちゃう。
それに辰巳君とは風呂場で散々キスしたし。
「ちょっ、ちょ......んっ、じか、んっ」
「はっ......はっ、未途、未途っ.....んん」
ちょ、長い長いよ辰巳君。
いつまでキスしてんの?
ねぇ、学校行かなくていいの?
......くどい!!
ガスッ!
「っぐぁ!」
座ったままだったからあまり力入らなかったけど、なんとか鳩尾に拳がはいったようだ。
「辰巳君学校!」
「うぅ、離れ難いでぇ......。もっと未途と一緒に居たい。」
「はよ行け!」
「あともう1回だけ......。」
「行け言っとるだろ!!!」
ゲシッ
「......行ってきます」
「いってらー」
蹴り飛ばしてなんとか行かせたが、あの捨てられた子犬のような目はどうなん?
俺にはその攻撃効かんからな。
さて、パスタとピザお腹いっぱいに食ったし、何しよう。
......うーん暇だな。
寝よ。
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ある寮部屋で2人の男子生徒が言い合っている。
「おいっ落ち着け馬鹿野郎!!」
「あ''?俺は落ち着いてるぜ?」
「どこがだ!?お前今自分がなんて言ったのか理解してんのか!?」
「当たり前だろ。」
「嫌われるぞ。いや、憎まれる。ぜってぇに。」
「別にいいだろ。願ってもない事だ。」
「っ、はぁー..........ホント救いようねぇな。頼むから大人しくしててくれよ。」
「.......なぁ、俺が知らねぇとでも思ってんのか?」
「.......」
「俺をキレさせたのはお前らの監督不届きさだ。俺にそうさせたのはお前らだ。」
「今調べてる。もう少し待ってくれ。」
「.....」
「だっておかしいだろ!お前はその怒りを被害者にぶつけようとしてんだぞ!?壊す気かっ!?」
「......」
「なぁ、もう少し時間くれよ。.....アイツが可哀想だ。その苛立ち、怒りは加害者に向けるべきだ。決してアイツに向けていいもんじゃねぇ。」
「俺は我慢が嫌いだ。」
「....?」
「最初から我慢なんてしなきゃよかったんだ。そうしたら今、少なくとも余裕は持ててた。」
「.....我慢だって必要だ。」
「無理だ。無理なんだよ。我慢、我慢、我慢っ、我慢して俺は何を得た?ただ横からかっさわれただけじゃねーか!我慢してた俺がバカみてぇだ。」
「......」
「.....はぁ、今日は待つ。明日はお前がなんと言おうと動くからな。」
「.....わかった。」
「さっさと行け」
行けと言われた男子生徒は部屋から退出し、思案の表情を浮かべる。
「どうするもんかね......手がかりがないしなぁ。」
本人に事情を聞きたいが、あの風紀委員長に守られているため近づくことすらできない。
あの風紀委員長は得体が知れないからあまり関わりたくないんだが.....そうも言ってられねぇか。
「失礼します」
向かったのは風紀室。中に入ると風紀委員達が忙しそうに動いていた。
周りから視線を感じながらもさらに奥、風紀委員長室へ行く。
嫌な雰囲気を感じながらもノックをした。
「入ってええでー。」
「失礼します。」
彼を一目見てわかった。怒っている。
「なんの用や?進藤」
「猫に関してなんですけど....情報は得られましたか?」
「あ''?なんでワイに聞くん。そんなん鳥に聞けや。それ以外にあるんやろ?ワイに。」
「.....今日の内に加害者捕まえることはできません。」
「せやなぁ。手がかりなーんもないしな。」
「アイツが明日には動くと。」
「殺すか....」
「っ、待ってください!俺が何とかしますから、貴方は猫、設楽から目を離さないで欲しいんです!」
「お前に止められるんか?あの馬鹿を。それに動くってことは未途に手ぇ出すってことやろ?ワイが今から殺しに行った方が早いやん。明日まで待つ必要ない。」
「......それは俺が許さねぇ。」
「なんや、ワイとやる気か?」
「アイツはやっと一緒に居られるやつを見つけたんだ。アイツの苦労を知らねぇあんたがアイツを止めようなんざ俺がさせねぇ。それに先に見つけたのはアイツだ。」
「馬鹿の苦労なんて知るか。それに先に見つけたやて?それがどうしたんや。あの馬鹿嫌われてるやん。未途が選ぶわけない。.....お前は何がしたいん?未途を守りたいんか?あの馬鹿に壊させたいんか?」
「っ俺は.....」
「はぁ、もうええ。帰りぃ。ただし未途に手ぇ出したら許さへんからな。馬鹿にそう言っときぃ。」
「ぐ、わかりました.....失礼します。」
進藤の頭の中はさっき言われた言葉がグルグルと回っていた。
守りたいのか?壊したいのか?
そんなの.......
俺はただ2人に幸せになって欲しいだけだ。
だけど2人が幸せになるには、アイツは不器用すぎるし、もう1人に至っては興味すらねぇときた。
アイツのやり方じゃ心が離れてくだけ。でもアイツはそんなやり方しか知らない。
「....どうすればいいんだよ」
もし、設楽の犠牲の上にアイツの幸せが成り立つなら、俺はー
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