八尋学園平凡(?)奮闘記

キセイ

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第11話 表彰式だってよ

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体育館に着いた俺は凄まじい倦怠感に襲われていた。
今日は大変だったから仕方ないとは思う。
早く結果発表を聞いて帰りたい......。
済賀君未だに手離してくんないし。俺手汗かいてない?大丈夫?


「皆さんお疲れ様です。では優勝チームを発表します。」


壇上に生徒会役員が勢揃いしている。そこに悪鬼の姿があったため、俺は思わず目が据わった。

え?普通なら顔を赤らめるって?
ばっか野郎。顔を赤らめるってことは相手に脈アリってことだろ?
俺は全くそういうの感じてないから。もはや憎しみしかないからね。

クソ野郎のせいで今もノーパンなんだぞ?
もうノーパン状態に慣れてきたんですけど、どうしてくれるんですか(怒)?

あれ?待てよ?
この後の着替えで俺ノーパンのままジャージを着るのか!?
あぅ......まぁチンチラの恐れはなくなるからよしとしよう。


「優勝は2年生チームです!」


わァァァァァァァァァァァ!
yehaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!


おぉ、勝った!!金券はどうだ!?俺結構漁夫の利作戦でポイント集めたんだけど?


「2年生の皆さんおめでとうございます。では、次に金券獲得者を発表します。2-2 済賀 仁哉と、同じく2-2 三津谷 晃輝。ポイント最多者は2-1 八尋 斗牙 115ポイントです。2位とは僅差ですね。」


は(゜ロ゜)?
ちょっと待って、脳内の処理が......。
済賀君はわかる。だってキングの王冠持ってたの見たし。
三津谷.....お前、オマエっ、クイーン狩ったんか!?
嬉しくねぇし、おめでとうとか言いたくねぇ。

そして悪鬼!!!!!!!
テメェ俺から人としての尊厳(パンツ)を奪っておいて、金券までも奪うってのかっ。
俺のポイント114なんですけど!悪鬼がいなけりゃ俺が金券貰えるはずだったのに.....。
生徒会金券要らんやろ?集計とか生徒会抜きでやってくれよぉ。
あとお前俺と同い年かよ!?
年上だと思ってたんだが?


「未途どうしたんだ?そんな怖い顔して。」

「いや、ちょっと疲れてるだけ、疲れてるダケダヨ.....。」


俺の金券が.......ぐすん。泣いてないから....。

その時頭をポンと叩かれた。
顔を上げると済賀君が無表情でこっちを見ていて、目が合うとワシワシと頭を撫でられる。


「俺は壇上行ってくるが大丈夫か?」

「?うん。」


何その子供に聞くような問は。済賀君は俺が子供に見えてるのかな?
掴んでいた手を離し最後に俺の頭をひと撫でした彼は壇上へと向かった。

......済賀君なんかおかしくない?
俺を犬か子供のように扱ってくるし、もしかして手を掴んでたのって迷子防止?


「残念だったな~俺結構ポイント稼げてたと思ったんだけど、残念だ!未途は金券欲しかったのか?」

「いや別にそこまで欲しくないよ(大嘘)。愛斗君は金券欲しかったの?」

「まぁな!金券とれたら友達みんなで遊園地行きたいと思ってた!」

「うんいいね。それなら友達と時間が合った時にでも行ったら?金券とかなくてもできるよ。」

「!?確かにそうだな!ありがとう未途っ!」

「あははは、どういたしまして。その時は楽しんできてね。」

「?何言ってんだよ。未途も一緒に決まってるだろ!」

「え......ア、アリガトウ」


ぶっちゃけ行きたくねぇ。
最初は王道君の傍は面白くなると思って一緒にいたけど、最近面白いことより面倒事に巻き込まれる方が多くて疲れる。


「設楽大丈夫だったか?」

「......うん。」


どうやら済賀君が金券授与から帰ってきたようだ。
済賀君には俺が何に見えているのか1回真剣に話し合ってみたい。王道君より俺を子供扱いするってなんか納得いかないんですけど。


「えっ、なになになに!?そこでフラグ立っちゃたのっ!?一匹狼×腹黒平凡!?交流会中何があったんだ!くっ、金券獲得のために動くんじゃなくて愛斗か設楽君にくっついてたほうがよかったか?」


済賀君をジト目で見る。何連れてきてんの?
そんな俺の視線に気づいたのか済賀君はバツが悪そうに顔を逸らした。


「なんか着いてきたんだよ。別に連れてきたわけじゃねぇ。」

「俺は何も言ってないけど?」

「目がなんで連れてきたんだ?って語ってんだよ。」

「俺の扱いひどっ!あぁでもその以心伝心感は相当絆が深まってますね!!もしかして、暴力に溺れた一匹狼君を無自覚にも救っちゃったとか!?だけど暴力に興奮した一匹狼君に襲われて美味しく頂かれちゃうんですかね!!そんで一匹狼君はその事で箍が外れて所構わず平凡を襲うようになるとかっ!?うっわー、何それすごい萌えるじゃん。だがしかしっ、俺はそれでも一匹狼×王道を諦めない!」

「仁哉は金券何に使うんだ?」


王道君.....逞しくなったね。済賀君に無視されてるけど。
俺は未だに三津谷への殺意が収まんないよ。
あぁこの学園から出たい。
船で魚釣りとかしたいなぁ。心を無にして黙々と魚を釣って、その魚を料理して食べる....。癒されそう。


「設楽は金券あったら何に使うんだ?」

「ん、俺?俺は船で魚釣りかな。」

「そんなの金券なくても行けんだろ?」

「俺は済賀君と違って庶民だから気軽に行けないんだよ。」

「ふーん.....。」

「俺はみんなで遊びに行きたい!」

「お前には聞いてねぇよ。」


何か参考になったかな?済賀君特に使い道なさそうに金券見てたからね.....。
いらないんなら俺に譲っても....いいんですよ?


「お・れ・はっ、愛斗と生徒会のデート!そこに同行してイチャイチャを見守るんだっ。」


金券をそんなことに使うなよ。王道君が可哀想だろ?まぁ面白そうだけど。


「斗牙は何に使うんだろうな?」

「使い道なさそうだよねぇ....はっ、まさか王道君の部屋の合鍵とか!?」

「おいやめろ。」「そんなわけないだろっ!」

「ひでぶっ!?」


ナイス済賀君と王道君。王道君の部屋の鍵とか相部屋の済賀君にとっては地獄だよね。
三津谷ざまぁwwww

三津谷が痛みで頭を抱え蹲ってる姿は俺の元気の源です(にっこり)。

つうか生徒会役員は各々マスターキー持ってんじゃん。

マスターキー持ってんのにわざわざ王道君の部屋の鍵願う必要ないよなぁ。だから三津谷が言うようなことはないだろう。
......王道君はなんで顔赤らめてんの?
もしかしてあの悪鬼に脈アリですか!?
なーんてね.....................それ怒りだよネ???


「あ、解散だってよ。着替えに行こうぜ!」


いつの間にか交流会は終わり解散の流れとなっていた。
やっべ、話全然聞いてなかった。


......今回は色々あったなぁ。しみじみと思い返そうとして、やめた。
身体が思い出すことを拒絶している。

ま、終わったことだしいいや、今はさっさとこのクソみたいな衣装を脱ぎ去りたい。

そして王道君達と別れ俺は衣装部屋に入る。


「ん?」


ふと違和感がした。俺の服は畳まれて置いてある。
だけどなんか変だ。俺畳んだっけ?


「これ本当に俺のジャージか?」


畳まれていたジャージを広げると、どこかぴっしりとしていて微かに変な匂いがした。

ゾワッ

鳥肌が立つ。
俺のジャージはこんなThe新品という匂いはしない。新品は洗濯して使う派だからだ。何より、朝カラーボールの仕込みによる袖裏の蛍光ピンクの汚れが消えていた。


「え?なんで?」


怖い。もしかして、妖精とか?


......俺は考えることをやめた。
うん、ジャージが新しくなったということにして喜ぼう。やったネ!
俺としてはこの神官服を脱げればなんでもいいから!!

チンチラの恐れが無くなったジャージをまとい心の余裕をいくらか取り戻す。パンツがなくて下半身が心許なく感じるが、まぁ瑣末事だ。


.....神官服どうしよう。もう二度と着ねぇのに持って帰るのもな。処分すんのめんどくせぇ。


「衣装なら回収するぜ?いらないだろ?」

「!?」


衣装部屋から出た俺に声を掛けてきたのは、顔の綺麗な美人さんだった。いつから居たの?
いきなり声をかけられてぶっちゃけ心臓取れるかと思った。叫ばなかった俺を誰か褒めて欲しい。

サラサラとした黒髪を背中に垂らし、碧眼を持つその人はとても綺麗だった。
しかし口から出る言葉は見た目と合わない男らしい口調だ。まぁ男なんだけどね。
なんだよ男に男らしい口調って.....。


「衣装回収してるんですか?」

「うん、まぁな。ぶっちゃけ着ないだろ?」

「着ませんね。」

「ははっ、だよな!」

「そっちで処分してくれるなんて助かります。」


俺は畳んだ神官服を彼に渡す。すると彼は手袋をはめ、受け取った。
手袋?
まぁ変じゃないか.......。

そして神官服を真空パックらしき袋にしまった。
.......処分する予定の服をそんな袋に入れるっておかしくね?
なんか汚物処理されてる気分になってる俺は被害妄想が過ぎるんですかね......。


「あの....なんでそんな袋に入れるんですか?」

「うん?あぁ気にしないでくれ。こういう指示だから。」

「そうなんですか。」


俺の気にしすぎかな。
....そうだよな。たかが真空パックごときに勘繰りしすぎだよ俺。

早く寝たい。


「じゃあ俺はこれで。」

「あぁお疲れ。」


あーやっと帰れる。この後ってもう各自解散でいいよね?王道君とか待たなくていいよね?待っててって言われてないし。


「ーーーーーー」

「え?」


パタン......


あの人何か言ってなかった?
扉の向こう側にいるであろう黒髪碧眼の美人さんを思う。
気のせいかな......?


俺は首を傾げながらも寮へと足を向けた。



ーーーーーーーーーーーーーー


「頑張れ設楽。」


俺は扉の向こうにいるであろう平凡な姿をした非凡者を心から応援する。

厄介な奴に目をつけられて本当に可哀想だ。
見た感じ今はまだコントロールできてるっぽいが、いつか必ず爆発するだろう。

その時、設楽はどうなるのだろうか?
どう選択するのだろうか?

今まで見ていたが、彼の性格からして交わらない気がする。
ずっと平行。

あぁなんて可哀想なんだ。
設楽に執着するアイツも、執着される設楽も。

どっちも幸せになる方法はない。少なくとも俺はそんな方法見つけれなかった。


「ああいけねぇ。あまり首を突っ込むのもダメだな。はぁ.......。」


俺は手に持つ袋を見ながら心の底からため息を吐いた。


「あのっ、」

「ん?」


衣装部屋から出るとそこには綺麗な顔をした男子生徒が立っていた。
顔を赤らめソワソワしている様子に察する。


「悪いな。俺、外に彼女いんだわ。だから他を当たってくれ。」

「っ、そうでしたか.....。すいません失礼します!」


去っていく後ろ姿を一瞥し歩き出す。

あーこの後がめんどくさい。なんで俺はアイツと友達になっちまったんだろう?
別に後悔している訳では無いが、人使いが荒いのがなぁ。


不満を胸に俺は友人の元へ向かった。



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