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第十三章 命尽きるまで貴方を想ふ①
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しおりを挟む昼休み。
兎君達と食堂で昼食タイム。
「やっべ~!もうすぐ学年テストだ!」
ロコモコ丼をつつきながら兎君はそう嘆いた。半熟卵が割れてとろりと黄身が流れ出す。うぅ~ん飯テロ。
「....まだ1ヶ月も先だろう」
激辛プレートのプルコギを嚥下して瀧ちゃんは兎君の嘆きに答えた。.....全てが真っ赤っかのプレートだなぁ。僕なら一口でアウト。
「僕はもう諦めてる~。まぁ壱を下回らなければランクは幾らでも下がっていいし」
フー君が諦観混じりの目でエビフライを齧りながらそう言った。....サクサク音がこっちにまで聞こえる。今度頼んでみようかなぁエビフライ定食。
「つまり赤点とるって?そこまで難しい問題はでないと思うけど.....」
文ちゃんが困惑交じりにサラダに箸を伸ばしながら言う。いつ見ても彼はサラダ。文ちゃんは草食動物かなにかなの??
「頭いいやつはみーんなそう言うよな」
ナポリタンをフォークで巻きながらケーキ君は嫌味を文ちゃんに返す。
そんなケーキ君に僕も突っ込む。
「君も '' 頭いいやつ '' でしょう?」
あぁ僕が今食べているのは担々麺。この食堂はいつ来ても何を食べようか迷う。それくらいメニューが豊富なのだ。
「なんだ、文貴と将翔はそっち側....いや、芙幸と俺以外が出来る側なのか......」
「なんでそんな勉強出来るのぉ?」
「そうだよ!なんでいい点取れるんだよ?部屋に居る時とか将翔と文貴が勉強してる姿見たことないぞ!?」
「清継もね~」
「なんでって....授業聞いてりゃわかるだろ」
「同じく」
兎君とフー君に無慈悲な回答が返ってきた。ケーキ君、瀧ちゃん....それ天才が言うセリフだよ。
「燈弥は....?」
助けを求めるような目で兎君に見つめられる。僕はほら、前世の記憶ってのがあるし?だから数学と国語、古典....とかは大丈夫!まぁ地理とか歴史は前世と違うから覚え直さなきゃいけなかったけど。
「僕はちゃんと部屋で勉強してますよ。ケーキ君達みたいに天才じゃないので」
そう言うと皆からめっちゃ意外そうな顔でマジマジ見られた。なんで?
「燈弥もどうせ清継や将翔と同じだと思ってた」
「兎君.....僕はそこまで優秀じゃないですよ。普通の高校生と一緒で勉強は苦手です」
「.....小テストいつも何点くらいとってるの?」
フー君の恐る恐るの問いにニッコリ答える。
「100点」
「ほらねー!!どの口が苦手って言ってるの!?勉強が苦手って言う高校生はあんなテスト満点取れないから!!」
「そうだそうだ!」
「......フー君に賛同している兎君はいつも数学や国語の小テスト何点とってるんです?」
「は、80とか90.....」
「うっ、裏切り者ーーーーーーー!!!!」
「ちがっ、でも地理とか歴史とか応急とか異能関係の筆記は赤点だぞ!?」
「全教科赤点の僕よりマシじゃんか~!!」
「全教科はヤバいぞ芙幸....」
「うっ、湊都にそう言われると傷つく....。あぁ~湊都はこっち側だと思ったのにぃぃ!」
まぁ大変だよね、観式のテストは。なんせ教科が多い。普通の高校教科にプラスで応急と異能技術学、異能歴史学、選択武器学などがある。
応急とは蘇生術やら、四肢の欠損時の対処方法、止血方法、火傷、凍傷....色々な怪我の対処方法を学ぶ。この教科は真剣に取り組まないといざという時自分が困るので、皆結構いい点をとる。平均点がいつも高い。
異能技術学はザントやサナート、ヴァイスの性質や、異能者と戦う時の対処法を学ぶ。例えば....ばったり異能者に出会った時、相手がどんな異能なのか当然ながら分からない。だが、出会った時に相手が離れるように飛び退き臨戦態勢に移ったのならば、相手は遠距離型の可能性が高い。逆にジリジリとにじり寄って来たのなら近距離型。
....とまぁそういうようなセオリーを学ぶ。実際はこんなセオリーに従っていたら死ぬが、この異能技術学はどんな時も考えることの大切さと、相手との駆け引きがいかに大切か学べる。
それにセオリーから自分なりに生き残る術を見つけれることも出来るしで、僕は授業の中で一番大事な科目だと思っている。
選択武器学は文字通り選択した武器について学ぶ。これはモッチー先生の実技授業でそれぞれ選ぶのだが.....
僕は弓を選んだ。
え?双剣じゃないのかって?
まず選択肢の中に双剣がないし、仮にあったとしても選ばない。だって双剣を選んだら自分の魂写棒が双剣であると言っているようなものじゃん?
戦う前から相手に情報を与えるのは嫌だから死んでも選ばない。
......話を戻して、この選択武器学の授業は実技があっても座学は無い。でもテストでは筆記があるっておかしくない??モッチー先生が欠伸しながらテキトーに話す内容をテストに出すっておかしいよね??しかも聞かされたことのない内容がテストに出るって馬鹿なの??
おっと、以前の小テストのことを思い出してしまった。落ち着くためにも担々麺を食べよう。
ズルズルズル.....
「はぁ....そんな騒ぐなら今のうちに対策すればいいだろ。清継が居るんだし赤点は回避出来るはずだ」
「おい将翔、俺を巻き込むな」
「「助けて清継~~~っ!!」」
「.......助けるんだろ?」
「ぐ、まぁ...な。だが武器学の対策が.....」
「あぁ~それは俺もだ」
「俺武器学の小テスト5点だった....」
「僕は0点~~」
「アレ無理だろ!?模擬戦してる時に思い出したように『剣の刃には種類があってなぁ、確か両刃と片刃....』って語り出すのなんなんだよ!?耳に入ってくるかぁ!」
「だよねぇ!!テキ先話すタイミングおかしいよね!?」
「うーん、気持ちはわからなくは無いけど....望月先生も大変なんだよ、多分」
文句を言う兎君とフー君に対して文ちゃんがモッチー先生を庇う発言をした。僕としては多分が付いてる時点で説得力ゼロなのでは?と思うのだけど....。
「選択武器って結構種類あるじゃん?剣とか槍とか盾とか弓、銃、鞭.....他にもいろいろ。それで先生は授業時間内に武器の扱い方を教えて、なおかつ知識までも教えなきゃいけない。一種類の武器だけならじっくり教えれるけど、僕達生徒は好きな武器を選択してるわけだから....教えるのに当然時間足りないよね。だから模擬戦と同時に説明したりするのも仕方ないことなんじゃないかなぁって」
うわぁ、ちゃんとした擁護だった。モッチー先生なんか庇わなくていいのに....優しいなぁ文ちゃん。モッチー先生のアレは絶対嫌がらせだと僕は思うけど。
「ふぅ、とにかく武器学はテキ先が端折った説明しかしてないから図書館での勉強必須だ。テスト前は本の争奪戦が起こるだろうから早めに勉強するのをオススメする」
「「清継~~!!俺(僕)の武器も一緒に教えて!」」
「全くお前達は......湊都は剣で芙幸は盾だったな、確か。....それぞれとなると時間が足りない。なんせ芙幸に関しては全教科だ。さてどうしたものか」
瀧ちゃんが珍しくチラチラとケーキ君を見た。ケーキ君は最初こそ無視していたが「困った、困った」とあまりにも酷い棒読みのセリフとチラ見に耐えきれず、諦めたようにため息をつく。
「はぁぁぁぁぁぁ.....仕方ねぇなぁ。手伝ってやるよ。文貴も追加でな」
「えっ、私も?.....まぁいいけど。じゃあ燈弥君も追加で」
綺麗に巻き込まれた。でも文ちゃんからの頼みなら喜んで!
「じゃあ皆で勉強会ですね。.....ひとつ聞きたいんですが、学年テストで赤点とるとランク下がるんです?フー君がそういうようなこと言ってたので気になって....」
「下がるよ~。それも3ランクダウン」
「「3つも!?」」
兎君と揃って声を上げる。なにそれめっちゃ下がるじゃん。
えーっと、確か僕のランクは.....新入生歓迎会で1つ昇級、昇級試験で2つ昇級の肆、学祭で1つ昇級して――
今は『伍』か。
それで皆は.....
・燈弥ーー伍
・湊都ーー肆
・芙幸ーー漆
・清継ーー伍
・将翔ーー伍
・文貴ーー陸
こんな感じかぁ。
「僕としては3つくらい下がってもいいんだけどねぇ」
「.....3つどころじゃないだろ。赤点4つで6つ降級だ」
「「6つ!?」」
「6つだとしてもランク壱だからセーフ」
「待ってください!ちょっと僕達に詳しく昇級のこと教えてくれませんか!?壱だからセーフとかよく分からないのですが」
そしてみんなの話をまとめると.....
・観式学園はランク壱を下回ると退学(こんな大事なことをなぜ教えないモッチー先生!!)
・新入生歓迎会では勝者は1つ昇級(ただしランク陸以上の人は上がらない)
・昇級試験では成果によって幾つか昇級または降級(ただしランク玖以上の人は上がらない)
・学祭で全員1つ昇級(ただし伍以上の人は上がらない)
・学年テストで上位10名が昇級(ただし漆以上の人は上がらない)。また、赤点を1つでもとったら3つ降級。赤点4つで6つ降級。
・理事長イベントでたまに昇級or降級
・教師による気まぐれ昇級(降級はない)
ふむふむ、なるほど。
結構厳しくない?高等部入学の生徒は絶対に拾(じゅう)までいけないじゃん。.....どこかで一気に2つ昇級でもしないと。
「テキ先に媚び売ったら上げてくれねーかな?」
「希望は持たない方がいいぞ湊都。教師による昇級は滅多にない。俺が聞いたのはお情けでランク壱に戻してもらって退学を免れたっていう生徒の話だけだな」
「本当にお情けですかそれ」
「それは知らん」
「真面目に勉強するしかなさそうだよ~湊都ぉ。あ~ぁ~勉強嫌だなぁ」
「今日から勉強だな....一緒に頑張ろうぜ芙幸!」
ということで午後の授業までの時間、学年テストの作戦会議をしま~す。
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