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第十二章 自身の勘は信じろ(ただし真波 御影は除く)

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「海音!今は無駄話をしている時間はないぞ!早く情報共有するべきだ!」

「そうだったにゃ。みんなぁ、あと数分後に雪崩が起きるにゃ☆原因は言わなくてもわかるにゃ?」

「我輩達は死にたくないからここでドロンさせてもらう!健闘を祈るぞ!!」


ドアから出ていく彼らに待ったをかけようとしたその時、兎君が側にいるにも関わらず真波先生の背後でポルターガイスト現象が起きていた。喜ぶように跳ね回る手袋などの防寒具。
それを見て確信した。うーちゃんの言ったことは本当だと。
そして雪崩は真波先生のせいで――

モッチー先生と目が合う。


「っ、登坂・宮野・鳥羽は俺と来い!!真波は兎道と田噛だ!!」

「了解!兎道と田噛こっち来い」


叫ぶようにモッチー先生が名前を呼び、名前を呼ばれたみんなは素早く先生の後を着いてく。普通ならパニックになるのだが、そこはやはり観式の生徒と言うべきか。無駄口を一切叩かず従っている。

そこではたと気づく。

あれ?
僕名前呼ばれてなくない?と。
あと瀧ちゃんとケーキ君も呼ばれてない。


「モッチー先生!!僕達は!?」

「自力で何とかしろ」

「......?」


はぁ!?!?


「お前に関しては心配してない。何とかできるだろ。瀧宮は異能使えば1人で生き残れる。浪木は....まぁ自身の血を恨めとしか言えねぇな」

「その口ぶりからして俺の事情知ってんな?なら尚更血なんて関係ねぇの分かるだろ!?」

「うるせー。ごちゃごちゃ言わず対策立てろ。俺と真波だってあの人数を守るのギリギリなんだよ。逆に合理的判断と褒め称えて欲しいわ。――いいか?雪崩つぅのは下に流れていく。逃げるなら横だ。じゃ、頑張れ」


みんなを引き連れ、木々の間を滑っていくモッチー先生を呆然と見つめる。
嘘でしょ?本当に置いてかれた。


「行くぞ2人とも!!!」


背中を叩かれハッとする。
すぐそばで瀧ちゃんがスキー板を装着し、顔を険しいものにしていた。


「望月先生は着いてくるなと言っていない!早くしろ!!」


瀧ちゃんを追うように僕達2人は慌ててスキー板を装着し足を動かした。

もうとっくにモッチー先生の姿は見えない。それでもアテもなく滑っていく。

形容し難い音を聞いた。トンネルで聞くような風の音、戦争ドラマで聞いた軍隊の大地を踏み鳴らすような音、滝のような奔流の音。

咄嗟に振り向く。
そこには白煙を巻き上げ、押し寄せてくる白い大波があった。




そこからは一瞬の出来事。




何故かスキー板が外れ、雪面を転がるように下っていく。叫び声のような、怒鳴り声のようなものが聞こえたが、すぐそこまで迫り来る質量によって思考は他者を切り捨てた。

リッパーで斜面を削り何とか転がる体を止め、雪に反射し煌めく刃を視界に収めながら思考を回す。


僕の斬撃の異能で何が出来る?


雪崩込むそれらを剣技で凌ぐ?
​──馬鹿な。途切れが見えない雪崩にそれをやって先に力尽きるのは僕だ。


全力で駆け降りて逃げる?
​──論外。雪崩の表層速度は新幹線並みだ。呑まれて死ぬ。


高いところに登る?
​──あの質量を受け止め切れる木を探す時間が無い。


ならモーセの海割りのごとき一撃を振るう?
​──限界を超えた先にあるのは雪による窒息死か凍死だ。雪崩を割ったとして、その後を考えると現実的ではない。


.....でも一番マシな考えだ。



「ははぁ~、全く.....モッチー先生のTEM(ザ・イート・メトロポリス)のデータを消去しないと割に合わないなぁこの労働!!!」



双剣は普通の剣に比べて刃が短い。それは手数勝負ならほかの追随を許さないが、こと一撃勝負となると分が悪くなることを示す。つまり今この場においては不適切というわけだ。

ならどうする?
答えは簡単。


ひとつにすればいい。


ということで、はい。今手に持つながーい剣が僕のリッパーです。
無理やりの融合で身体中からプチプチと鳴ってはいけない音が聞こえてマス。あ、鼻血出てきた。


「あッははははははははははははは!!!」


なんかテンションもおかしくなってきた。なんにも笑える状況じゃないのに笑ってしまう。

それでも雪崩は待ってくれない。落ち着く暇もくれないとは、雪崩君ちょっとせっかちなのかな?


さてと。
振りかぶるようにリッパーを構える。
1本になってもリッパーの重さは変わらない。昇級試験で使った双剣に比べれば軽い軽い。


まだ振り下ろさない
(視界が真っ白に埋め尽くされる)

まだ振り下ろさない
(顔に冷気がかかる。ピリピリと痛い)

まだ
(いつ自分が雪に攫われるか恐怖で逃げ出したくなる)

まだ
(眼前に迫っている)

まだ
(怖い)







​─────今、ここだ



「裂けろ」



振り下ろす。
剣圧により風が巻き上がる。自分をも吹き飛ばす勢いのそれは雪崩を見事に真っ二つに割った。

僕を避けるように横を流れていく雪崩。まさか今世でリアルモーセの海割りをするはめになるとは思わなかった。僕ってば聖書に載るんじゃない?

くだらないことを考えながらもフラつく身体を保たせる。
.....なぜって?それはまだ気を抜くには早いからさ。

ここで倒れれば、雪に攫われ凍死待ったナシ。この真っ二つに裂けた状態を保てればいいんだけど.....今の僕にはなーんにも出来ないのが現状。


どうしよう.....
あっ、クラっときた。


ヤバ​───────











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