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第十二章 自身の勘は信じろ(ただし真波 御影は除く)
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しおりを挟む「疲れたァァ!!でも楽しかった!」
「お疲れ様です兎君。ほっぺた真っ赤ですよ」
「?寒かったからな!」
自身が雪焼けしたとは微塵も思っていない兎君にほっこり。ケーキ君とダラダラと話すこと1時間。みんながゾロゾロと休憩所に帰還してきた。
「真波先生ー、泊まるとこって旅館?」
「もちろん」
「ってことは懐石料理出てくる!?」
「出てくるんじゃないか?」
「やったー!清継っ、懐石料理だよ懐石!!僕初めて食べるよ!?」
「そうか、それは良かったな」
目の前で行われる微笑ましいやり取り。おかしいな、瀧ちゃんが宮野君のお父さんに見えるぞ?
でも宮野君の気持ちもわかる。懐石料理だといいね。
「ふwんじゃ旅館に行くか。最後に点呼!!」
真波先生の声でひとり、またひとり返事をする。
「9」
「よし!行くぞ」
「「「いやいやいや、待て待て待て」」」
意気揚々とスキー場を出ていこうとする真波先生に皆で待ったをかける。
どう考えても人数が足りない。具体的に言えばうーちゃんと猫又先輩、そしてMr.ウマシカが足りない。
「あ、ほんとだ。居ねぇな」
真波先生ってもしかして生徒に好かれたいんじゃなくて、ただ教師っぽいことをしたいだけな人では?
────ピロン、ピロン、ピロン.....
密かに慄いていると僕のスマホから凄い勢いでメールの報せが鳴った。
Mr.ウマシカからだ。
『迷ったッス!たすけて』
『元の場所に戻れたッスから、今は写真で送った小屋に居るっす!たすけて』
うーん、文面から悲壮感は感じ取れないが、そこはかとなく焦っているように見える。『たすけて』が2回繰り返されてるし。
「あの~、どうやらMr.ウマシカが遭難したらしいです。僕としてはその手のプロに任せて旅館に向かうのがいいと思うのですが......」
ここは一応大人の意見を聞いてみる。
「助けに行くぞ!!」
「僕はスタッフさんにこの事伝えに行きますので、誰か真波先生を押えといてください」
「まて、一条!!俺のカンが言ってるんだ。俺達で助けに行った方が早い、とな」
「モッチー先生、真波先生のカンってよく当たるのですか?」
「初耳」
当てにならないのでダメです。それに素人の僕達が行ってもミイラ取りがミイラになるだけだよ。
「あっ、俺ここさっき行ったぞ?」
ここで僕のスマホを覗き見してた兎君が声を上げる。真波先生が途端に顔を輝かせたため、僕はもうゲッソリ。これは嫌な予感。
「俺が行ったときは誰もいなかったけどなぁ」
「戻ってこれたってことは道覚えてるよな!?」
「おう!もちろんだぜ!!」
「一条っ!!」
「行くならお2人.....とプラスモッチー先生で行ってくださいね」
俺関係なーい。みたいな顔してコーヒー飲んでたモッチー先生が噎せた。咳き込みながら何か言ってるが僕には全く聞き取れないので知らなーい。
「湊都が行くならもちろん僕も行くよ!」
案の定な宮野君。まぁこの4人なら.....大丈夫でしょ。
「はぁ、芙幸が行くなら俺も行く」
瀧ちゃん!?!?
えっ、瀧ちゃん行くなら僕も行くよ!瀧ちゃんだけは何がなんでも守らなきゃ.....!僕の癒しっ
「面白そうだね。私も行こっかな」
守る人間が増えた。文ちゃんっ!!
結果────
全員でMr.ウマシカを助けに行くことになりました。瀧ちゃんと文ちゃんが行くなら僕もと言ったら、ケーキ君とトサカ君が便乗。全員行くなら俺もとモッチー先生が。
嫌な予感が治まらないんだけどなんで??
「絶対に遭難する。僕らも絶対に遭難する」
「何言ってるんだ?」
「トサカ君....僕は今フラグを立てているのです。絶対遭難すると言っていれば、逆に遭難しないと。あ、なんか今違うフラグが立ったような気がしますヤバい」
「......そんなに心配なら行かなきゃいいだろ」
「誰が瀧ちゃんと文ちゃんを守るのです??」
「いや、アイツら腕が立つから別に燈弥の助けはいらな――」
「真波先生と兎君、Mr.ウマシカの存在のせいで安心が持てない」
「......確かに」
納得したトサカ君をよそに、ピクニックに行くようにはしゃぐ兎君達。スキー板やスノボを装着して、山頂へ登るためにリフトに乗る。
嫌な予感はまだ消えない。逆にどんどん強まっている。
嫌な予感に吐きそうになっていると、ストックをカン....と叩かれた。顔を向けると心配そうにこちらを見つめる瀧ちゃんが横を並走していた。
「心配はわかる。俺も嫌な予感がしたからな。だからリフトに乗る前にここの係員に遭難の旨を伝えておいた。一応保険はかけたが.....大丈夫か?別に無理して付き添わなくてもいいんだぞ?」
瀧ちゃんッッッ!!
その優しさと気遣いが胃に染みる。感じていた気持ち悪さがスーっと抜けていくようだ。
「大丈夫です。瀧ちゃんのおかげで持ち直しました」
「俺は何もしてないが.....あ、係員に伝えたことか?」
「ぐぅ、そのままでいてください」
「よくわからんが、まぁ大丈夫だ。なんせ俺達は異能者。そうそうのことは対処出来る....と、俺は自分を納得させた」
あー、そっか。僕達は別に無力なわけじゃ無いんだ。瀧ちゃんの考え方いいね、僕も見習おう。
そして兎君を先頭に滑っていく。山の3分の1を過ぎたら辺だろうか?急に兎君がコースを外れて木々の中に突っ込んで行った。
なぜ迷いもなくここで?と疑問に思い、見上げてみる。すると、なるほど.....一際目立つ大木がそびえ立っていた。
Mr.ウマシカがメールで送ってきた通りの大木。つまりここから右下方向にあのボロい小屋があるのだろう。
「っ」
というか、木々の間を滑るのムチャクチャ怖いんですけど!?地面が凸凹してすっごい跳ねるし、方向転換を間違えたら一瞬で木のシミとなりそうだし、兎君を時たま見失うしで....ヤバすぎる。
スキー板が通れる場所を瞬時に見つけ、そこに滑り込まなきゃいけないから忙しい。
でも、そんな生きた心地のしない時間は直ぐに終了を告げる。
「あそこだーーー!!」
ボロ小屋を目視できた。目的地が見えたのなら、もう兎君を追う必要は無い。
スルッと抜けやすい木々の間を縫って到着。
「来てくれたんすねぇーーー!!!燈弥君大好き」
スキー板を外して小屋に入れば、古めかしいストーブの前でMr.ウマシカが暖をとっていた。入ってきた僕達に気づくと弾丸のように飛んできたが....余裕そうだね君。
「俺達に礼はないのかこの馬鹿」
「なーんで鶏が居るんすかァ?コケコケうるさいッスから外に出しといた方がいいっすよ燈弥君」
「.......」
「トサカ君、落ち着きましょう。今ここでそれを使ったらMr.ウマシカはこの山を降りれなくなる。それじゃあ僕達が来た意味がなくなってしまう。落ち着きましょう」
異能を始動し、鉤爪のような(正式名称を知らない)武器をカチャカチャと鳴らす彼を宥める。
そしてそんな彼の溜飲を下げるべくMr.ウマシカの頬にビンタをかます。
「い''だいぃ''っす~(泣)」
「流石に今のは君が悪いです。さ、帰りますよ」
みんなに帰るよう促したけど、トサカ君と僕以外は何故かストーブの前に集まっていた。不思議に思い近づくと何やらワイワイと興奮気味の声が聞こえた。
「すげ~、すげー!俺初めて見た!」
「まぁ普通は電気ストーブだからな」
「私の家は灯油ストーブだよ」
「文貴の家は灯油か。今どき珍しいな」
「そう?」
「灯油ストーブってあれだろ!?でっかいスポイトみたいなやつで灯油を補充するんだろ?」
「湊都ー、それ灯油ポンプって言うんだよ」
「灯油ポンプって言うのか!そのままだな!.......それでこのストーブは灯油ストーブよりも珍しいんだよな?」
「そうだなぁ薪ストーブはメリットよりデメリットの方がデカいからなぁ。あんまし持ってる奴はいない」
「見るからに維持が大変そうだもんな」
「維持だけじゃなくて普通に使うのも大変だよ。薪とか乾燥させないと使えないらしいし」
「なんで?」
「なんか水気があると煙がモクモク発生して壁とか汚しちゃうんだって」
「鳥羽よく知ってるな」
「だってロマンがいっぱいじゃないですか。薪ストーブって」
遭難したMr.ウマシカそっちのけで薪ストーブの話で盛り上がっていた。まぁ確かに珍しいもんね。
でも、あんまし長くここにいるのはヤバい様な気がするんで.....さっさと行きませんか?
「皆さん、薪ストーブのことは旅館で話しましょう。今はMr.ウマシカを連れて山をおり───」
─────!!!
その時、大きな音が轟いた。爆発音のような、衝突音のような、観式学園で聞き慣れた音。
直ぐに臨戦態勢に移る。
「何が起きた?」
モッチー先生が面倒くさそうに口を開いた。だけどその問いに答えれる人間はここに居ない。だって外を見ようにも木々に囲まれ、あの轟音の発生源を誰も確認出来ないからだ。
「どっかのプライベートヘリが山頂に落ちたんだにゃ~」
.......誰も答えれないはずだった。
驚きの情報を口にしたのは、本来この場にいるはずのない人物。
「うーちゃん、どうしてここに?それに猫又先輩も」
猫耳カチューシャの代わりに暖かそうな猫耳帽子を被ったうーちゃんと、モコモコ装備の猫又先輩。あれおかしいな?貴方達が着てるのどう見てもレンタルじゃないね??
僕の疑心を感じ取ったのか、うーちゃんがニンマリと、それこそチェシャ猫のような笑みを浮かべ僕の疑心に答えた。
「情報は大切にゃのだ燈弥ちゃん。安心は自分で得るものだにゃー」
つまり事前に真波先生にどこへ行くのか詳しく聞いていたと。
さすが放送委員、抜かりないね。
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