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第十二章 自身の勘は信じろ(ただし真波 御影は除く)

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思う存分恋バナをして休憩した後は、本命であるスキーを再開。文ちゃん達と一緒にリフトに乗り何回か山を下る。

その間に考えるのはやはりさっきの恋バナ。
あれはとても有意義な時間だったなぁ。理解は出来なかったけど、そういう人も居るんだと認識できたのは大きい。


ああ....それにしても顔が冷たい。特に頬が。
いくらレンタルできるといっても、それはスキーウェアと靴がせいぜい。頬まで守ってくれる帽子とネッグウォーマー一体型の防寒具とかは貸し出しされていない。
だからむき出しの頬に冷たい冷気が刺さる。

.....帰ったら笹ちゃん及びキャベツ君に怒られそう。
雪焼けって普通の日焼け止めで防げるのかな?いや、でも今更塗ってもなぁ.....


諦めるか。


「燈弥、お前顔真っ赤だぞ」


おりたとこで立ち止まっていればケーキ君が声をかけてきた。からかう様な声音に苦笑いを返すと、彼は器用に隣へ滑り寄ってくる。


「わかってます。雪焼けです。ケーキ君は....全然普通ですね」

「焼けにくい体質なのかもな、俺」

「やっぱ雪焼けってお風呂入る時ヒリヒリするんでしょうか?」

「知らね」


うぅ~ん.....。もう僕やめよっかな。結構滑ったし元は取れたでしょ。


「ケーキ君、僕はもう兎君達が満足するまで休憩所でまったりしてます。上に行ったらみんなにそう伝えてください」

「いや、俺ももう終いだ」

「なら2人で時間潰しましょうか」


どうせ満足したらみんなも休憩所に来るだろうし、わざわざ伝えに行かなくてもいいよね。

そして再びスキー場内レストランへ。


あったかいお茶が身に染みる。


「そういや.....お前、年末のパーティ行ったんだろ?」


ホッと和んでいると、思い出したくない話題をぶち込んできたケーキ君。
そんな情報どこで得たの?
あのパーティは一条 燈弥として出てないのに。


「.....その反応でわかった。お前、日に日に警戒心が薄くなっていってるの自覚してるか?緋賀が従兄弟以外でパートナーを頼むなんてお前しか居ないだろ」

「いやいや....それだけで僕って分からなくない?」

「今までの緋賀を見た事ないからそう言えるんだよ。以前のお前なら後々のリスクを考えてパートナーなんて受けなかったはずだ」

「はぁ~.....しょうがないでしょ。旧友を見捨てれなかったんだから」

「..............旧友!?!?えっ、緋賀と燈弥が!?」

「あ~言ってなかったね。僕とヒナちゃん、ついでにチビちゃん.....は昔からの顔見知りさ」

「ヒナちゃん....??緋賀のことかっ!?ちょい待て、チビちゃんってのは誰だ」

「あぁ、会長」

「神崎!?」

「ちなみに血の繋がった弟」

「?、は?........~ッ!?!?!?」


あっははははは。ケーキ君ってばなに金魚みたいに口パクパクさせてるのw


「どうしたお前!?なんだっ、俺は今から殺されるのか!?」

「なんでそんな考えになるのw大丈夫殺さないよ」

「だって燈弥がそんな自分のことを話すなんて信じられねぇから消されるのかと.....!う、うう嘘じゃないよな?お前がこんな嘘つく理由ないから嘘じゃないよな!?」

「ホントホント」

「だからアイツらお前への接し方がおかしいのか....!合点がいった」

「え、やっぱりはたから見てもおかしいんだ?彼らの僕に対する態度」

「そりゃもう」

「ふーん.....それで?僕があのパーティに行ったことに何か問題あるの」


話を戻した。ケーキ君はまだ何か言いたそうだったが、僕はこれ以上話すつもりは無い。
彼もその事に気づいたのか、諦めたように一息つくと真剣な顔でパーティについて聞いてきた。


「在鷹に会ったか?」


在鷹。
五大家のあの在鷹だよね、たぶん。
思い出すのは悪役令嬢と見紛みまがうばかりの美男。真っ赤なドレスを纏い、男を侍らせ、まるで自身が至上であると信じて疑わない侮蔑の眼差し。

しかも精神干渉系の異能持ちときた。
うーん、性格と異能が厄介。


「......うん、会ったよ。個性的な人だった」

「ウザイやつだったろ」

「.....お知り合いで?」

「あっちは覚えてないだろうがな」


在鷹の子息と知り合いねぇ。
確かケーキ君って家関係で何か抱えていたはず。在鷹が関係してそうだな。こんなこと聞いてくるってことは。


「それで、僕に在鷹のことを聞いた真意は?」

「在鷹を潰すために手を貸して欲しい」

「潰っ......ふぅ.......一旦落ち着こうか」

「俺は至って冷静だぜ?」

「五大家の一角を潰すと言ってるんだよ君は」

「ああ」


平然と肯定を返してくるケーキ君に頭が痛くなった。なにが「ああ」だ。異能者の世界は五大家を中心に回っている。その一角を潰すとなると混乱は大きい。
.....いや、潰すなんてまず無理だ。
だって緋賀がいる。秩序を守る番人がいる限り在鷹は潰せない。時ケ谷に付け入られる隙を見せないためにも緋賀は全力で在鷹を守るだろう。

ケーキ君が時ケ谷の存在を知っているかは知らない。でもどれだけ在鷹を潰すのが困難か理解してない男ではないはずだ。


「.....腹を割って話そう。さすがの僕もこの件の事情も聞かず命をかけることは出来ない」

「おっと、言い方悪かったな。在鷹を潰すっつっても現当主とバチバチにやり合うわけじゃない。俺はただ、次期当主の在鷹 巡を潰したいんだ」

「在鷹 巡?.......ふむ、なら別に事情を聞かなくてもいいかな」



現当主が関わらないなら何も聞かされず使われてもいい。だって、当主という人間がどれほど面倒臭くて邪悪か知ってるからね。神崎しかり緋賀しかり。

と、僕は思ったんだけど
何故かケーキ君は納得いかないような顔をした。


「俺は命をかけなくていいという事を言いたかったんだけどな。事情は聞けよ。普通、在鷹を潰すことに加担しろって言われたらどういう背景があるか気になるだろ」

「まぁ気になるけどロクな内容じゃ無さそうだしいいや。で、僕に何をさせたいの?」

「なんか釈然としねぇ」

「.....じゃあ事情教えてよ」

「そういう聞かれ方するとちょっとなぁ」

「面倒臭い男だね君......もういいから、早く本題を話して。いつ皆がここに来るかも分からないんだから」

「はいはい」



えーと、
今年新1年生として在鷹 巡が学園に入学してくると。大人しくできる性格じゃないからやらかすまで待つ、以上。

ケーキ君の話したことをまとめるとこういう感じ。空いた口が塞がらないとはまさにこの事だね。まさかの無策!!


「それって行き当たりばったりで在鷹君を潰そうって言ってるよね。腐っても五大家の子息だよ?行き当たりばったりで潰せるような性格じゃないと思うんだけど」

「なら罠を仕掛けるか?....アイツと話したことあるなら分かると思うが、行動を予測して罠を張るなんてできねぇよ。だって在鷹 巡の異能は人の心を読めるからな。企みごとは全てバレる」

「あー心読めるのかぁ.....」


パーティの時、僕がチビちゃんのこと考えてたの当てたのはソレかぁ。

........いや、ヤバくない?


「在鷹君の異能ってどこまで読めるの?」

「さぁ?それは本人しか分からねぇな」


ヤバいヤバいヤバい。
あの時心の中でガッツリとバレてはいけないこと考えてたよ!?
血の繋がりとか血の繋がりとか血の繋がりとか!!おおやけにされたら困るっ。神崎の邪悪な当主に囲われるっ!!

でも数日経った今、騒がれてないってことはバレてないと考えてもいいんだよね?
嗚呼....不安すぎる。


「一刻も早く殺そう。決行日は?」

「どうした急に??....さっきも言ったがなんにも決まってない。だがそうだな.....7月あたりだろうな、動くとしたら」

「おっそ」

「それは巡に言えよ。アイツの出方次第なんだから仕方ねーだろ」


7月となると昇級試験の時期じゃないかな?あー懐かし。とんでもないモノと戦わされ、手をボロボロにした記憶と、その後の大浴場で変態に襲われた悪い思い出しかない。
.....ダメだ、思い返すとフツフツ怒りが湧いてきた。これはもうモッチー先生のTEM(ザ・イート・メトロポリス)を壊さないと治まらないな。


「......顰めっ面のとこ悪いが、お前の役割は緋賀の抑えだからな?巡と直接対峙してボコボコにするとかじゃないからな?」

「えっ」


顰めっ面だったのは昇級試験を思い出していたからで、決行日に文句がある訳では無い.....って、そんなことはどうでもいい。
えっ、僕はただの抑えなの?しかもヒナちゃんの?


「自分で言うのもアレだけど勿体なくない?君の頼みであれば喜んでサマ臣君達をけしかけるのに」

「....ありがたいが、あんまり騒がれたくないんだよ。アイツは、巡は、誰にも知られずボロ雑巾のように打ち捨てられ、尊厳も未来も希望も全て奪われ朽ち果てるのがお似合いだ。アイツが好むド派手な結末には絶対にさせねぇ」



尊厳・未来・希望ときたか。それはかつて君が奪われたものかな?随分強い思い入れがあるようだね。

ならここで僕が出しゃばるのは野暮というもの。ケーキ君の言う通りヒナちゃんを抑えておくだけに留まろう。


「わかった。僕はヒナちゃんが緋賀の力で在鷹を助けないよう見張っているね」

「話が早くて助かるぜ」

「抑えるのはヒナちゃんだけでいいの?」

「数ヶ月前なら神崎もと言っていただろうけど、今の神崎なら手を出してこないだろうからいい。星菜と美城もワザワザ部屋から出張って来るほど仲間思いじゃねぇから心配はしてない」

「あはははwその言い方だとヒナちゃんが仲間思いみたいに聞こえるんだけど」

「馬鹿言うな。緋賀は秩序を守るために手を出してくる可能性があるから頼んでんだよ」

「ふーん.....それさ、ヒナちゃんじゃなくて現当主の方を抑えとかなきゃいけないんじゃないの?」

「そっちは手を打ってある」

「悪魔に魂を売ったのか君は」

「やむを得ず」


僕達の共通認識で永将さんが悪魔なの笑うんだけど。











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