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第十一章 月の下で貴方とワルツを①

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「変態キショい黙れ死ね」


​─────ドガッ!!



向き的にこちらに突っ込んできた星菜君をヒナちゃんと揃って避ける。すると彼は見事に顔面から転がっていった。おお....あれは痛い。ちょっと顔面削れたんじゃない?


「~っ痛いのだよ!?!?」

「大好きな傷ができて良かったじゃん」


生徒会書記である咲谷みちる君とは違う、深海を思わせる髪。星菜君を蹴り飛ばしたとおぼしき青年は吐き捨てるように皮肉を言うと、僕達のもとへやってきた。


「珍しく早いじゃん緋賀。あ、見慣れないパートナー....初めまして、僕は美城鏡磨きょうま。お前があの傷フェチのような変態でないなら仲良く出来ると思う。よろしく」


ヒナちゃんが僕が話せないことを説明してる間に、笹ちゃんに教わった情報を思い返す。

美城 鏡磨。

大のカタラと変態嫌い。五大家のマトモ枠(自称)。父親変態の姿を見て育ったため、変態嫌いになったそうだ。
僕としてはマトモを自称する時点で、ちょっともう危ないんじゃないかな....と思うんだけど。

そんな彼は上記の通り、カタラに対してすっごい嫌悪感を持っているそうで、そのせいかカタラを殺す兵器に傾倒しているとかなんとか。


「それにしても、緋賀がこんな過保護な対応するなんて本当にこの子はお前ん家の従兄弟なの?いつもの君なら例え従兄弟でもこの席にまでは連れてこないじゃん」


おっと、僕疑われてる?
美城君は色濃いクマ付きの赤い瞳を歪め、からかうように笑った。悪い顔色と、着ているピエロの仮装も相まってどことなく殺人鬼っぽく見える。

大きなパッチりおめめの愛嬌さある顔付きが、クマと顔色で台無しだ。
.....もったいない。


ボケーっと美城君とヒナちゃんのやり取りを眺める。


っ、背後からおどろおどろしい気配....!!


直感のままにヒナちゃんの背後から脱出し、美城君の後ろへ逃げる。


「.....どうして逃げるのかね」


僕が立っていた付近にの星菜君が手を伸ばしたまま固まっていた。
お前か!!!
どうしてこんな偽物の傷に執着するのかなぁ!?笹ちゃんが精巧に作りすぎたせい!?だとしたら笹ちゃんは後でビンタだ。


「状況を把握。緋賀、僕も協力しよう。あの変態からこの子を守ればいいんだね」

「.....まぁ、テメェなら大丈夫か。俺様になんかあった時は頼むぞ」

「君、本当にあの緋賀なの??僕に頼むだなんて、珍しいじゃん」


友情が生まれそうな場面にほっこり。仲間意識っていうのは共通の敵が居てこそ生み出されるものだよね。そう考えると、星菜君変態も役に立ったというわけだ。



さて、この場にいる五大家のメンバーは3人。あとの2人は.....あぁ1人来たね。



大きなざわめきがこちらまで伝わってきた。

入口からこちらに向かってくる団体さん。
その先頭、一際目立つド派手な赤のドレスを着た美女。


「.....あれ?少し遅かったですかね」


ウェーブがかった長い黒髪を耳にかけ、切れ長の金の瞳を困ったように下げる美女....じゃなくて美男。


在鷹 巡ありたか めぐる、遅ばせながら参上致しました。先輩方いかがお過ごしですか?」


ニコリと、花が開くような笑み。
うわぁ、眞中 薫先輩とはまた違った美人さんだ。眞中先輩は純情系の美人さん顔(中身は別)だったけど、在鷹君は悪役令嬢系の顔だね。


「在鷹ぁ、君だけなのだよ。俺を先輩呼びしてくれるのは。緋賀はあんな態度だし、神崎はもう....俺の知ってる神崎ではないだろうからな。可愛い後輩がいて俺は嬉しい」

「うふふ。嬉しい言葉ありがとうございます」


ヒナちゃんと美城君の口撃から逃げるように星菜君は在鷹君の側へ寄った。そんな彼に対し、在鷹君は口元を手で隠して優雅に首をかしげ笑う。

耳元で大きな月のイヤリングが ''チャリ'' と揺れた。
すっごい大きなイヤリングだ。よく耳がちぎれないな....。


「おい在鷹、侍らしてるそいつら向こうにやれ。以前、佐竹家の人間爆弾で痛い目見ただろ」

「まぁ、あれはあれで楽しかったじゃないですか。またあんなことが起こるのは大歓迎です。――もしかして美城先輩は楽しくなかったのですか?先輩が人間爆弾に負けじと劣らずの爆弾をばら撒いていたので、てっきり私と同様に楽しんでいるのだとばかり....ふふふ」

「あれはっ....!!」


コソッとヒナちゃんが耳打ちしてくれた。なんでも佐竹家の異能で爆弾を纏った人間によるテロをカタラの襲撃と勘違いした美城君が、過剰に爆弾をばら撒いたらしい。

なんてことしてるんだ美城君。
あと、やっぱり佐竹家の異能って人を殺すには便利だよね。触れたものを爆弾にできるとかチートすぎる。あらゆるものを警戒しなきゃいけないから、狙われたら命はないものと考えた方がいいだろうね。



「​───私の連れてきた者達がダメと言うなら、緋賀先輩の連れてる方はいいのですか?」

「彼は....大丈夫だろ。なんせ緋賀が連れてきたんだから。ここにいる緋賀以外は前科があるからダメだっつってんの。僕のパートナーもここには連れてきてないんだし、お前も同じようにしろ」

「たったそれだけで緋賀先輩を信じるんですか?今回は違うかもしれないじゃないですか。前科がある・なしで頭ごなしに決めつけるのは愚かですよ。それに見てください。私が連れているのは顔も名前、産まれさえも全てこの場で確たる証拠として提示できる者達ばかりです。隅々まで洗いましたから、自信を持って言えます。彼らは安全だと」


金の瞳がこちらに向く。見下すように、軽蔑するように僕を見つめてくる。


「というか、顔を見せない者の方がよっぽど危険だと思いません?」



ははぁ、すんごい敵意。え、なんで??
永将さんのように僕知らずに何かした?










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