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第十一章 月の下で貴方とワルツを①
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しおりを挟む(※不適切表現アリ。食事中には読まないでね。一応伏せたけど、言ってる人が言ってる人なため、伏せた意味がなくなってる。サラッと読み流そう!)
そして鮮魚屋に到着!!
双子は消毒液と絆創膏でコーティング済み。あ、もちろん血に濡れた服もお着替え済みである。
そのおかげか、なんの問題もなく個室に案内された。
掘りごたつ式の席。僕とヒナちゃん、鎖真那双子に別れてそれぞれ座る。まぁ、サマ臣君は僕と、弟君はヒナちゃんと座りたかったらしいが、これ以上ヒナちゃんにストレスを与えると何が起きるか分からないのでこの並びにした。
もう既に疲労感にゲッソリ気味。
「.....皆は何食べたい?」
「「「なんでもいい」」」
それが一番困る返しなんだよ。
食べれないものないの??本当に好きに頼んじゃうよ?
どれくらい食べれるの君達。
あ~いちいち聞くのめんどくさ。だから「なんでもいい」は嫌いなんだよ。
とりあえず、ここに来た目的のアワビの刺身、サザエのつぼ焼き
この2つは絶対。
ぶっちゃけこの2つがあるなら他はなんでもいい。
.......あ、僕もなんでもいい言ってるわ。
くっ、目についたものを頼んでいこう。
あらかた何を頼むか決めた僕はボタンで店員さんを呼んだ。それで、注文するのだが.......店員さんがいちいちヒナちゃんや双子の顔に見惚れて注文が途切れる。
僕もその度に店員さんに呼びかけて正気に戻しているが、いい加減キレそうだ。
それでも根気よく注文につき合い、なんとか終える。
「つ、疲れた....」
今度から彼らにも変装させよう。そう心に決めながらヒナちゃんの肩に頭を乗せる。
すると彼は無言で僕の腹に手を回し引き寄せた。一瞬圧迫されたお腹に呻きが漏れる。抗議の声をあげようとして顔をあげれば、思ったより近い距離にヒナちゃんの男前な顔があった。
どうやら僕はヒナちゃんの足の間に収まっているらしい.....。
凭れれば椅子の背の代わりに固い胸板が当たる。
いや、そこまでしなくてもいいのよヒナちゃん。
確かにだらぁ~と凭れたいとは思ったけど....。
「.....そこ、イチャイチャすんなよ」
「うわ~、こうしてみると燈弥ちゃん華奢に見えるw」
「華奢じゃないし。これでも変態から素晴らしい筋肉と太鼓判を押されてるんだけど」
「変態....?」
怪訝そうな声が上から降ってきた。突き刺さる視線に『変態って誰だ』という尋問めいた圧が込められていて思わず口を開きそうになる。
....危ない危ない。
貴方の家に滞在している人ですと言いそうになった。
でもなかなか逸れない視線と圧にジワジワと嫌な汗が湧く。
だけどその時、引き戸が音を立て開いた。
「おまたせしました~」
ナイスタイミング!!
ヒナちゃんに抱きしめられた僕を2度見する店員さんに拍手したい。本当に助かった。
並べられた料理達を見渡し、ヒナちゃんに進言。
「僕、元の位置に戻りたいなぁ....なんて」
「.....」
答えは強くギュッと抱きしめられた事で返ってきた。はいはい、嫌なのね.....。
行儀悪いけど仕方ないか。ヒナちゃんの好きにさせてあげよう。
「いただきま────」
「おいおいおい待て待て待て。その状態で食べるつもりか?燈弥を話せ緋賀。.....血の匂いがついてもいいのかよ」
血の匂い。
その単語にヒナちゃんはピクリと身体を揺らし、元の席に僕を戻した。呆気なく解放され、呆然とヒナちゃんを見つめる。
え、なんで急に??
目を他に向ければ、サマ臣君と弟君も同様に驚いた顔をしている。
このなんとも言えぬ空気感を作り出した当の本人はというと.....バツが悪そうに舌打ちすると箸を持ち、何事も無かったかのように刺身を口に運んで「美味い」と言葉を零していた。
「.......マジかよ。お前、緋賀に生まれておいて本質が美狂いの変態と一緒とか嘘だろ??しかもそいつよりタチが悪い。.....笑えねぇぞ、おい」
最初に復活したのはサマ臣君だった。彼は心底呆れたように訳の分からないことを言うと、ヒナちゃんに続いて料理に箸を伸ばした。
次いで弟君。彼は特に何も言うことなく鰹のたたきを口に運び、舌鼓を打った。
「ん、アワビうめぇな」
「....はっ!え、あぁ、それは良かった。頼んだ甲斐があるよ」
ヒナちゃんのアワビ美味い発言に停止していた脳が覚醒。
もうわからんことは捨て置こう。今は目の前の料理を楽しむべきだ。
「鮮魚屋でも必ずアワビがあるという訳では無いから、食べたい時はちゃんと調べてね」
「....あー、もうアワビ無くなった」
「いや、残ってるよ???」
何言ってるのヒナちゃん。お皿の端っこに残ってるじゃないか。
「は?これは違うだろ。漬物か?色が黒い....」
「えぇ、知らないの!?サマ臣君と弟君は?」
「泥か?」
「ばっかだな雅臣w 料理の皿に泥乗せる店がどこにあんだよw ......思ったより柔けぇし、すっげぇヌルヌルしてやがる。.....なーんか見たことあるんだよなァ、こういうの」
え、マジ?知らないんだ肝のこと。
見たことないだけかな?
「とりあえず食べてみてよ。きっと忘れられない味になる」
僕の言葉にサマ臣君と弟君は片眉を上げて怪訝そうに、ヒナちゃんは顰めっ面で箸を取った。
あははw
図体のデカい男3人が大人しく肝を醤油につけて口に運ぶ様はどこか笑える。
そして肝を食べた彼らの反応はそれぞれ....というか、鎖真那双子とヒナちゃんで大きく分かれた。
「おえ''っ、にっが!!っう.....!」
「まずぃぃ...っ!燈弥ちゃん騙したーー!!美味しくねぇじゃん!!にっが!うえぇぇ、口ん中まだ苦い....!泥食ってるみたいだっ」
双子はお気に召さなかったらしい。吐き出しはしなかったが、お茶で流し込んでいた。
「不味くはねぇな。だが美味いとも言えねぇ。独特な味だ。あーでも、たまに食いたくなる苦味だな...これ」
一方、ヒナちゃんは眉間のシワを消して残った肝を全て平らげた。
やった!分かってくれる人がいて嬉しい。
「今度また食べに来ようね」
「.....おう、そうだな」
あまりの嬉しさに笑いかければ、ヒナちゃんにそっぽを向かれた。まぁいつものことですよね。なんだか微笑ましいよ。
「――なぁ重臣、オレらは何を見せられてんだろうな?にっげぇもんを食わされ、んで目の前ではゲロ吐くほど甘々なやり取りしてやがる。なんだか胸がムカムカしてきたぜ」
「わかるぅ。いくら緋賀ちゃんでも燈弥ちゃんとイチャイチャしすぎだ。燈弥ちゃーん、おれっちも相手してくれよぉ」
外野がなにか言ってらぁ。でもこれ以上拗ねられてもめんどいので、双子にはサザエのつぼ焼きを勧めた。
「あ、うまい。おれっちこれ好きかも」
「いや、待て。底の方に明らかに色の違う....また肝かよ」
「アワビの肝とはまた違った味だよ。今度は美味しいかもね」
まぁアワビの肝がダメならつぼ焼きの肝も無理だろうけど。
「んあー、やっとわかった。なんか見た事あると思ったら××の××だぁ。×を裂いた××の××が×××って×××××やつ」
「「げふっ.....!!!」」
おい!食事中!!!!
しかもこの人実際に見ているだろうから表現が妙に生々しいっ。
「テメェ撃ち殺すぞ!!!言っちゃいけねぇ言葉くらいわかんだろ!?TPO弁えろ!!」
「えぇ?でも緋賀ちゃんもそう思っただろ?おれっちと同じくらい見慣れてるだろうし」
「知らねぇよ!!俺様はテメェと違って溶かす──はっ!!何言わせてんだテメェ!!」
「ちょw理不尽すぎだろw勝手に口滑らせたの緋賀ちゃんじゃーん」
え、なに??
ヒナちゃんってシリアルキラーと同じくらいアレを見慣れてるの?言い方からして、アレどころか.....やめよう。ご飯中に話していい内容じゃない。
とりあえず、それ以上この場にそぐわない内容を話したらゲンコツね。
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