狂った世界に中指を立てて笑う

キセイ

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第十章 汝、近づき過ぎることなかれ

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「っと、時間だ。俺は午後からシフト入っているからもう行くな」

「はい、わかりました。頑張ってくださいね瀧ちゃん」

「ああ。燈弥も面倒事に巻き込まれないよう頑張れよ」


ははー、思わず顔が引き攣ってしまう言葉だ。もう既に巻き込まれているんですよねぇ。瀧ちゃんの手で。

まぁそんなこと言えないので、ニコりと笑みを返して見送る。






今現在13:55。もうすぐ約束の時間である。
瀧ちゃんとの楽しいデートを過ごした後にこの変なお茶会に参加しなければいけないとか....僕はいじめにあっているのかな??

旧美術室に向かう前に一応モッチー先生のとこによって、この不審なお茶会について相談したんだけど......


『お前なら大丈夫だろ』


この一言で済まされた。なんなら僕の相談を聞いていた詰まらなさそうな顔から一変、『この後ゲームしよーぜ』って嬉々として誘ってきた。

生徒の真剣な相談をそんなどうでも良さそうに流す教師が居ていいのか?と思う一方で、テキ先の名に恥じないテキトウさだと思わず称賛してしまった。


つまり複雑な気持ちを今抱えてます。


それでも時間は止まってくれないから渋々旧美術室に来たわけだけど........解決策なしのままかぁ。僕をないがしろにしたモッチー先生に嫌がらせをするべきか、放置すべきか悩みながらソレを見上げる。
美術室というプレート。本校舎のものと違って、東校舎の美術室は随分と古めかしい。プレートに描かれた文字は所々消えかかっている。


あぁ、嫌だ。ドアを前にすると一層帰りたい気持ちが強くなる。

でもノックした。瀧ちゃんのためを思えば帰るなんて選択選べるはずがないのだ。



​──────ガラッ


「......こんにちは。そしてようこそ狂ったお茶会へ。歓迎するよ燈弥君」

「お招きありがとうございます笹ちゃん」


勢いよく開いたドアから現れたのは美術室で仲良くしてくれた同級生....比良山 美笹君。
彼はけったいな格好をしていた。緑と黒のチェック柄のウェストコートに、深い蒼のジャケット、紫のスラックス、赤の水玉模様の大きな大きな蝶ネクタイ。そして頭にバケツのようなこれまた大きな帽子。

......狂ったお茶会、けったいな格好、帽子

マッドハッターか。
じゃあなんだ?僕はアリスになるのかな?

プラチナブロンドの髪をオールバックにし、帽子をかぶっている笹ちゃん。笑い顔の仮面をつけた彼は、僕をエスコートするように手を取り部屋にへといざなった。


「......うわ......」


美術室内に踏み入り、まず目に付いたのは長テーブルに座らされている
席は全部で12席。並びは長辺に5席ずつ。上座と下座に1席ずつ。
そのうち9席は既に埋まっていた。

空いているのは入口から1番遠い上座と、その左右の1番近い席2つ。


「燈弥君はもちろん....この席だ」


案内されたのは上座。執事のように椅子を引いて僕を待つ笹ちゃん。
少し躊躇ったが、結局座る。彼が何を狙っているのか分かるまで大人しくしとくのがいいと判断した。


席に座り、改めて見渡す。
美術室内は不思議の国のアリスをコンセプトにした飾り付けが所々施されていたが、それだけではないようだった。あちこちに飾られた絵画、席に座る彼ら、そしてギロチン.....なるほど。

狂ったお茶会とはよく言ったものだ。
飾られた絵画や彼ら達.....それらはおぞましく、直視するのもはばかれるものばかり。


「笹ちゃん、君は​─────」

「しーー......お話は最後の一人が揃ってからだよ」


彼はそう言いながらカップに紅茶を注ぐ。目の前に置かれた湯気ただようカップ。そのカップからいつも美術室で出されたものと同じ香りがした。


​─────ガラッ

「ちょっと誰!?このボクを呼び出すイケメンは!?」

「ん――どうやら最後の一人が来たみたいだ」


入ってきた生徒に驚く。たしか彼は、何故か釈放されたことになっている眞中 薫先輩じゃないか。
金髪セミロングに綺麗な蜂蜜色の瞳。
人間離れした美貌を持つ人。
学園一綺麗と言われている人。

そんな人がどうしてここに?


「芋野郎と仮面野郎??イケメンは?封筒と一緒に入ってた写真に写るおっそろしい程の美形はどこ!?」


そういえば彼、僕がドン引くほどのセックス狂だったね。資料で見た時は誇張して書いてあるのかな?って思ったけど、この様子だと誇張でもなんでもないようだ。得体の知れない封筒に同封されていた美形の写真に釣られるって....どんだけ飢えてるの??


「薫先輩、こちらへお座り下さい」

「はぁ?なんでボクが変な格好した不審者の言いなりに.....もしかして仮面の下っ、まさか、いや、でも有り得る。ボクの面食いセンサーが反応している....ッ」

「どうぞお座りを」

「はい♡」


ちょろすぎやしないか?本当にこの人、懲罰棟に入れられるほどの大罪犯したの?バカっぽいよ?

内心そう呆れていると僕の右に眞中先輩、左に笹ちゃんが座った。


「じゃあ楽しいお茶会を始めよう。まずは、好きな食べ物は?」

「セックス」

「1つに絞れないですね」

「なんのために生きてる?」

「セックス」

「なんのためとか考えたことないですね」

「貴方達の善悪の基準は?」

「セックス出来るか出来ないか」

「状況によって変わります」



「.....真面目に答えてくれない?」



え?だって真面目なお茶会じゃないでしょ?















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