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第十章 汝、近づき過ぎることなかれ
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しおりを挟む1-Eのクラスは小籠包を売り出しているせいか、内装は中華風だった。給仕も中華風の服装をしており世界観はバッチリ。
マイナス点をあげるとしたら、その給仕達が壁際に1列に並び、顔を真っ青に震えているところだろうか?
彼らが視線を向けるのは教室中央にあるひとつの丸テーブル席。
足を投げ出し、だらしなく座る者2名と、傍で侍るように直立する風紀の腕章をつけた者1人。
予想外の人物外が1人居たが、2人は......嗚呼、やっぱり予想通りの人物。
「い、一条さん!!」
「燈弥じゃん。どした?あ、オレに会いにきたとかか?お前なら大歓迎だ。どうする、鬼ごっこでもするか?」
「エっ、鬼ごっこ?おれっちも参加する~」
待って待って。ツッコミが追いつかないから。
1つづつ片付けさせて。まずは.....
「なぜゼニ君がここに?見回りはどうしたのです?」
「俺はちゃんと見回りしてましたよ。でもEクラスの生徒が助けてくださいとか言って、俺をこの危険地帯に引きずり込んだんすよ」
「はぁ.....?」
「部屋中央で狂人共が我が物顔で寛いでるから店開いても客来ねぇし、給仕も給仕でこいつらが怖くて給仕どころじゃねぇしで俺を呼んだらしいけど......俺じゃどうすることもできねぇし!!できるのは精々こいつらが問題を起こさないよう見張ることしか.....」
「委員長を呼べばいいでしょう?なんのためのスマホですか」
「だって、委員長と一条さんのデートを邪魔するのはぜってぇに嫌─────なんで一条さんは委員長と一緒じゃないんすか!?!?」
「私情を挟むバカには後でペナルティです。貴方の私情のせいで犠牲になったEクラスの皆さんにお詫びの....そうですねたこ焼きでも奢ってあげなさい」
「俺金がないんすけど」
「まったく....財の名が泣きますよ?」
「そんなこと言われても.....」
「冗談です。風紀の方からお金は出しますので買ってきなさい。ああ、たこ焼きは1-Aのものがオススメですよ」
「サラッと自クラスに誘導した......」
「なにか?」
「いえっ、買ってきます!!」
風紀から金を出す代わりにゼニ君の労働を倍にするけど....伝えなくていいか。
よし、ゼニ君の問題は片付いた。お次は本命。
「営業妨害ですよ、お2人とも」
「オレはただ自クラスに居るだけだぜ?なにも妨害しちゃいねぇが」
「自分が存在するだけで妨害になると自覚してるでしょう?」
「と、燈弥ちゃんwひでぇ~wおれっち泣いちゃう」
サマ臣君と弟君という予想通りの人物に溜息をつく。ゼニ君はよくこの2人の傍に居られたね。普通はEクラスの皆のように青ざめ震えるか、客のように逃げ出すかの2択なのに。
サマ臣君達もよくゼニ君に襲いかからなかったなぁ。特に弟君。サマ臣君はゼニ君と昇級試験で面識があるからまだしも、弟君は.....ね。
今思うとよく生きてたなゼニ君
「なんで自クラスに居座っているのですか?暇なの?」
「「クソ暇」」
「君達なら学園祭でも暴れ回ると思ってたんですけど。あ~.....誰に釘刺されてます?」
「理事長。学園祭で問題起こすなら2日目に来る緋賀現当主に身柄を引き渡すって脅された」
「おれっち緋賀ちゃんは大好きだけど緋賀の当主は大っ嫌い」
「君らの抑止力になる緋賀現当主が気になりますね。どういう方なんです?」
「人をゴミ屑扱いするクソ野郎」
「鬱陶しいほど構ってくるおっさん」
「「あ''?」」
おや?サマ臣君は心底嫌いそうに、弟君は居心地が悪そうにそれぞれ言う。
どうやらサマ臣君と弟君で認識が違うようだ。
「あいつオレのことをゴミ屑呼びした挙句、廃棄だとか言いながら銃弾ぶち込んでくる野郎だぜ?半殺しが信条の身としては手を出したくない相手だ。手を出したが最後、どちらかが死ぬまで終わらねぇからな」
「君ならそれでも嬉々としてやりそうですけど」
「.....政治が絡んでくるからめんどいんだよ」
なるほど。まぁ五大家の現当主だもんね。簡単に手は出せないか。
「うっそ、あのおっさん雅臣にそんな物騒なの?おれっちには親戚のおじさんよろしくもの貢いでくんのに」
「はぁ!?なんでだよ」
「知らね。会う度に最近どうだ?とか、腕は上げたか?とか、めっちゃくちゃ鬱陶しい。銃弾とか受けたことねぇわ」
「サマ臣君嫌われるようなことしたんじゃないですか?」
「心当たりない」
やった方は自覚がないっていうのは虐めじゃよくある話だ。ということは緋賀現当主はサマ臣君に虐められた可能性があるってこと....??
「とりあえず、話はここを出ててからしましょう。Eクラスの皆さん、ご迷惑おかけしました。学園祭楽しんでください」
面倒くさそうながらも、大人しく教室を出ていく双子を見送り、Eクラスの皆さんに謝罪を。別に僕が悪いわけじゃないけど、ゼニ君に不手際があったのは事実だし一応ね。
「副委員長ありがとうございます!!マジでありがとう!!!やった....これで客が来るっ」
「俺の学祭終わったと思ったけど....っよかった!」
「うぅ~こわがった''ぁ~っ」
「あ、これお礼の揚げ小籠包。4人前です。お代は結構なのでどうぞ....」
え、あ、はい。ありがとうございます。
テイクアウト容器を持ち、教室から出ると
ドアの傍にサマ臣君達が待っていたので2人前分の揚げ小籠包を渡し、別れを告げる。
「え~!燈弥ちゃん一緒に居てくれねぇの?」
「嫌ですよ。まともに学祭まわれないじゃないですか。日頃の行いを悔いてください」
「ちぇ.....」
「まじこの2日間暇だ.....暇すぎて死にそう」
「これを機会にクラスメイトと交流しては?それが嫌ならクラスに貢献できるようなことでもすればいい」
「貢献か....」
おっと、サマ臣君が悪どい笑みを浮かべたぞ。
それに突っ込むとまた時間が拘束されそうなので、自クラスに迷惑かけないよう釘をさし、素早く彼らと別れた。
.....僕のとこに委員からの連絡が来ないことを祈るしかない。
そして瀧ちゃんと合流。彼は緊張気味に顔を強ばらせながら僕の周りを確認するように一回りすると、安心したように小さく笑みをうかべた。
「よし怪我はないな。....ありがとう燈弥」
「いえいえ、礼には及びませんよ。揚げ小籠包もゲットしたことですし、どこかで食べましょうか」
「ん。りょーかい。外とかどうだ?」
いいね。行こうか。
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