狂った世界に中指を立てて笑う

キセイ

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第十章 汝、近づき過ぎることなかれ

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ということで風紀室。


「あっ、燈弥君!!」

「お疲れ様でした」

「あ''ーーー!!帰らないでくださいっす!!タスケテ.....」


なぜ居るMr.ウマシカ。
僕は許してないからね?君があの日、僕の足に縋り付いたり、キショいことを言い出したり、あと....まぁ言葉にはしないでおこう。君の沽券に関わるだろうから。

​─────え?

アレはMr.ウマシカではない?
そんなもの知ってます。しかし、Mr.ウマシカの姿、声で行われた凶行だ。中身が誰であろうとMr.ウマシカの姿に苦い顔してしまうのは仕方のないこととも言える。もはや反射で顔や身体が拒絶を示してしまう。


「うぇん、なんでそんな嫌そうな顔で見るんすかぁ.....」

「なぜMr.ウマシカがここに?ゼニ君、説明を」

「.....俺!?」

「君しか部屋に居ないでしょう?」


ボケーッとアホ面で虚空を見ていた財前 仁美君。
君は何を見ていたのかなぁ??もしかして、いかがかわしい妄想なんてものは見てないよね??


「....僕に妄想の内容を話して殴られるか、Mr.ウマシカがここにいる理由を話して見回り行くか選んでください」

「後者でお願いします!!」

「ではどうぞ」

「うっす。あー、田噛は器物破損現行犯で登坂が連れてきたんす。だけど連れてきた張本人である登坂は田噛と相性が悪いから....仕方なく俺が任されたっていうか....」

「うーん、それは仕方ないですね。ありがとうございますゼニ君。後は変わりますよ」

「マジっすか!助かります!コイツと話してると頭馬鹿になりそうで....!!ってことで、あとはお願いしやす!!」


逃げ足早いなぁ。
まぁいいや。これでこの風紀室は僕とMr.ウマシカの二人きり。


「さて、Mr.ウマシカ。あの日の夜のことを教えてくれませんか?」

「あの日の夜?......あぁ!意地悪な副委員長さんが玉砕したあの日っすか!!」

「玉砕......うんそうそう。詳しく教えて」


結果として、哀嶋君はあの日からちゃんと業務に取り組んでいる。報告書もきちんと書いてるし、見回り組への指揮も冴えているしで、問題になっていた部分は無くなったと思う。
それどころか、サマ臣君もとい戦闘狂から担当を外れてもいいと自ら言い出してきた。

ぶっちゃけ委員長と揃って哀嶋君の正気を疑った。無意識に「頭大丈夫ですか?」なんて失礼なことを言うほどに。

一体あの日、彼に何が起きたのだろうか?


「えーっと、オイラと重ちゃんが現場の着いた時、ちょうど副委員長さんの告白が始まったっす」



『雅臣!!今日こそ....今日こそ!貴方に私のことを認めさせます!!』

『お前がオレのストーカーか。オレに認めさせる??かっかっか!無理だろ。だってお前――』


​─────オレに憧れてんじゃん




「雅臣はそう言ったっす。そっからっすかね?副委員長さんの様子がおかしくなったのは」

「.....なるほど。サマ臣君は強者が大好物。自身に憧れを持つ人間は眼中にないってことですか」


サマ臣君に憧れるということは、自身はサマ臣君より下であると認めているようなもの。憧れを抱いたらその対象を超えることは決してできない....とも言うしね。


「それもあるっすけど、1番は副委員長さんの戦い方っすね。1度彼が雅臣にちょっかいかけてるの見たことあるんすけど、なんか....自分の力を誇示するような戦い方してたっす。何がしたいんだ?ってオイラは思ったっすね、その時」

「うわ~.....認めさせるって言いながら相手に勝つ気なしとか、訳わかんないですね。力を見せびらかすとか、戦いで最も無駄な行為じゃないですか。戦ってるサマ臣君からしたらストレス溜まりそう」


そりゃいつまで経っても彼を捕縛できないわけだ。告白も上手くいくはずがない。....まぁ告白ははたから見ても無理だと、僕でもわかってたけど。


「それだけじゃないっすよ。雅臣が副委員長さんに言った言葉は。最後のトドメにこう言ったんす」



​─────失せろ。興味のない人間にまとわりつかれること程、苦痛なことは無い....って、お前はそれをよく知ってるはずだ。なぁ、姫さんよぉ


嘲るように、侮蔑するように、彼はそう言ったそうだ。
恋した相手にそんな表情で、そんな言葉を言われたら僕は泣き崩れる自信がある。なんてこと言うんだサマ臣君。


「普通なら塞ぎ込んでもおかしくないですね」

「そっすか?バッサリ振られたほうが前向きやすいと思うんすけどね」

「振られ方が最悪すぎて、前向けないですよ......バッサリどころか死体蹴りもしてるじゃないですかサマ臣君」

「でも副委員長さん、ちゃんと仕事してるんすよね?なら前を向けたってことじゃないすか」


そうなんだけどさぁ。落ち着いてるのが逆に不気味っていうか、なんか怖いんだよね哀嶋君。


「燈弥君は心配性っすねぇ~。大丈夫っすよ」

「はぁ.....とりあえず様子見といきましょうか。何かあったら手伝ってもらいますよ」

「喜んで!!......ところで器物破損の――」

「僕がテキトーに処理しとくので何も書かなくていいです。哀嶋君のことを教えてくれた礼とでも思ってください」

「燈弥君大好きっ!!」

「あーはいはい。それで?何を壊したんですか」

「黒鶏のボールペン」


トサカくぅん、私情で連れてくるなよ......












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