狂った世界に中指を立てて笑う

キセイ

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《片割れの見識》

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オレ達双子が臆病者だというのは理解している。それも重度の臆病者。
それに気づいたのは....中学だったか?


「なぁ、なんで雅臣は殺さないんだ?」

「殺したら二度とそいつと戦えねぇじゃん」

「理解できねー。二度も戦う必要なくね?もうそいつの戦い方知ってるんだし、ワクワク感ないだろ」

「2回目だからこそのワクワク感ってあるだろ。....やめよーぜこの話。どっちにしろお前はオレの生き方を受け入れられねぇし、オレもお前の生き方を受け入れられない。不毛だ」

「確かになぁ。....なーんでおれっち達はこうも違うふうになっちまったのかねぇ?生まれた環境も、育った環境も何一つ変わらないのに」

「性格が違うんだから当たり前だろ。オレはお前と違って臆病じゃねぇし」

「は?おれっちが臆病??.....違うだろ。臆病者はお前だ。お前のその戦う病気は過去の自分を否定するためのもんだろ」


否定の代わりに''はっ''と息を吐き出す音が口から漏れ出た。それは頭で理解したから。

オレ達双子は『怯え』から一生逃げられないのだと。





その一件でオレは自覚している。自分が過去に怯える臆病者だと。だが重臣は違う。
アイツは自身がどうして人を殺しているのか、その本当の意味を理解していない。


「だーれがソレをアイツに教えてくれんのかね」


燈弥か?
いや、燈弥は自分から他人の深層部分を指摘したりしない。それこそ熱に浮かされていなきゃ...な。


『シュウさん』


結局聞きそびれたな。シュウについて。
でも仕方ねぇ。あんなトロトロになった燈弥の前で他人について聞くのは野暮だ。


「今回のイベントは当たりだった。まぁ、じぃさんらしい悪辣なもんだったが....オレらにゃぬるい」


重臣も燈弥に堕ちたことだし....。


「いっひひひww」


あぁ笑いが収まんねぇ。あの馬鹿。本当に自分のことについては疎いんだな。

重臣は燈弥のことを嫌いだと思い込んでいた。殺しを、行動を制限する人間。オレを懐柔した人間。自身を恐れない人間....そりゃアイツなら嫌うさ。

でも、所詮思い込み。

オセロを教えてくれて、菓子をくれて、たわいない話をして、自身を怖がらない。

好きにならない方がおかしいだろ。絆されて当たり前だろ。他と同じように普通に接して、怖がらないというのはオレ達によく効く。

しかもオレ達に殺されない実力持ちときた。


だから好きになって、堕ちて当たり前。
あとは自覚するきっかけを与えりゃいい。

重臣の場合、それがゴムだった。
アイツはオレでも理解できない考えを持っている。

生セックス = 夫婦 = 家族

な?意味わかんねぇ。生で出したからって夫婦になるわけじゃねぇのに.....思い込みが激しい。
人を嬲って腹を裂いて、ちんこ突っ込むのも。
上に乗っかってきた奴を殺すのも。

全部弱みを作らないため。家族という弱みを。


「家族とセックスするつぅことに疑問はないのかねぇ」


オレとしちゃそこが謎だ。番やら恋人やらじゃないのはなんでだ??なんで家族....?
ま、いいか。

だってこれで​────


使完成~ってな」


燈弥の纏う浮世離れした雰囲気はそのままだが、風呂場で見たあの殺気。思い出すだけでちんこが勃つ。逃げることを止めた目。殺意に濡れた突き進むという意思

アイツは自分で自分の羽をもいだ。

燈弥は逃げないだろう。たとえその先が絶望へと続く道だとしても。

天使の檻は燈弥を閉じ込めるものではなく、燈弥の歩みを守る囲いだ。何者にも邪魔はさせない。アイツの強者としての歩みはオレ達が守る。地獄だろうと喜んで着いて行こう。


「あ~.....マジ好き」


天使
天使

目の覚めるような一閃。
優雅に舞うような立ち回り。

既視感はあった。
昇級試験のときから。
どこかで見た背中。
どこかで見た斬撃。


ずーっと、ずーっと、考えていた。アレはどこで見たのかと。なんでこうも頭から離れないのかと。

んで、ビビっときたのが....夏休み終わりの時。
燈弥の素顔を見た数日後。

その日、燈弥の部屋にまた重臣と突撃した。


「くつろいでる時に無粋だね」

「ちゃんと常識時間内に訪ねたぜ」

「おれっちオレンジジュース所望!!」

「はぁ....全く仕方のない人達だ」


素の姿でオレ達を出迎えた燈弥はへにょりと眉を下げて笑った。その美貌に慣れていないオレはあまりの破壊力に消し炭になりかけた。
で、咄嗟に思ったのが.....

『天使じゃん』

​────あぁ、なんで気づかなかったのか。
あの時、重臣が言っていたのは天使のことだったんだと気づいて....納得、嬉しさ、目の前にあの天使が居るということに興奮で異能が暴走しそうになった。



気づけば、思い出せば、なんとも呆気ないことだ。


あの日気づいてよかった。本当に。



「はぁ、燈弥に会いてぇ.....」


緋賀と会っているだろうアイツを思えば、感じたことの無いもどかしさが湧く。
.....チッ、恋にはまだオレの知らない感情があるようだな。

それを知るのが怖いような、楽しみなような.....
ま、振り回されるのも悪くない。燈弥になら尚更な。









《side   end》

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