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第九章 心乱れる10月
《side 巣ごもり部屋》
しおりを挟む「こりゃ颯希が惚れるわけだ.....」
雅臣は味わうように滑らかな肌をなぞる。人の肌なんぞじっくり見たことも、触れたこともないが、どうしてか燈弥にはそうしたいと思った。
するすると手を滑らせていく。
胸、腹、臍、腰、腿、脹脛......触れる度に燈弥の身体が跳ね、耐えるように声を殺している。枯れ果てそうなほど達したというのに、燈弥のそこは既に力を持ち、タラタラと先走りを零していた。
「っ、ぅ.....ふ....!.....っ、ッ」
濡れた瞳に睨まれる。
強い意志を持った瞳。
されど今にも崩れ落ちそうな脆弱さを孕んだ瞳。
雅臣は燈弥に強者でいて欲しいと願っている。
何者にも屈せず、口元に笑みを浮かべながら相手を手の平で転がす。支配されることなく、あらゆる手段を用いて優位に立ち勝利する。
そんな聡明で、強く、悪どい燈弥が大好きだ。
だから弱者なんぞに成り下がるのは許せない。
.....だが、一方で思った。
為す術なく、自身の下で蹂躙される燈弥を視たいと。
考えるだけで背筋がゾクゾクした。
想像するだけで顔が歪んだ。
「っ、まって!!そこまで、そこまでやらなくていいっ!!」
脚を持ち上げれば恐れと期待、羞恥が入り交じる表情で燈弥が叫ぶ。その表情に雅臣は妖艶に笑い、自身の髪をかき上げるとともに獣耳を投げ捨てた。
「いひ.....オレの前でそんなツラすんなよ。─────めちゃくちゃにしたくなるだろ?」
あの日見た赤い眼と同じだった。背筋が凍るような加虐的な眼差し。蛇に睨まれた蛙のように燈弥の身体は動かなくなる。
(ぁ.......っあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ――シュウ、さ......ん)
未だ、燈弥は過去に囚われたまま。
数十分にも及んだ後孔をほぐす行為。
燈弥は耐え難い程の快楽の波に晒され力なくベッドに沈みこんだ。か細い吐息に、指一本も動かせない有様。これ以上は無理だと、嫌だと、心は叫ぶ。
だが、身体は違った。
精液も出さず、蕩けるような泥濘に浸かっても尚、まだ足りないと後孔は疼き、下腹部は''なにか''を待ちわびるように甘く痺れる。これ以上の快楽を拒絶していた心が絶望に染まった。
しかしそれも雅臣によって挿れられた灼熱によって悉く押し流される。
「ッ、ぁ''――っ~~!?」
「はっ、マジかよ.....!」
ゾワゾワとしたものが背を駆け抜け、声なき声を上げ燈弥は法悦に呑まれた。昇ったまま降りてこられないのか、虚空を仰ぎ腰をカクカクと震わす。
そんな燈弥に対し、雅臣は耐えるように歯を噛み締め額から汗を流していた。
「んだこの締めつけ、イきそうになったじゃねぇか。....んぁ?別にイってもいいか。耐えるなんざらしくねぇ」
雅臣のその行動は突っ込んだだけでイくのを恥ずかしく思う''男としてのプライド''が無意識に働いたものだが、本人はさして深く考えず流した。
未だ戻ってこれていない燈弥の腰を掴むと、引き抜くようにゆっくり腰を引き─────勢いよく奥を穿った。
「あ''っ、っ?、ッ??」
「んグっ――ッ」
ビュルビュルと叩きつけられる奔流に目を白黒させながら燈弥は喉を反らす。晒された人間の急所。雅臣は射精後だというのに抜かず、燈弥に体重をかけるよう覆いかぶさり、喉に舌を這わした。
ぐちゅん
「ひっ、~~~~ぁ''っっっ!!」
既に硬さを取り戻したものが奥を叩き、深くなる結合部。燈弥はチカチカと点滅する視界の端で雅臣が鬱陶しそうに燈弥が着けている黒い首輪に触れるのが見えた。
バキンッ.....
音を立て首輪は簡単に壊される。汗ばみ少し赤くなった首。雅臣は邪魔がなくなり満足気に笑うと、首筋に歯を立て、押し潰すようにさらに腰を押し進めた。
「っ、ぅ!!ぁ....!ぁ''っ!!ぃ''~~っ」
燈弥はもう痛いのか気持ちいいのかわからない。抵抗するように上に覆い被さる雅臣を両手で押し返そうとするが、当然力は入らず、傍から見れば縋るように胸に手を添えているだけになっている。
首筋、肩、鎖骨。歯型をつけることに夢中になっているのか、雅臣は動かない。
猫のようにフーッ、フーッ、と息を荒らげ燈弥はもどかしげに腰を揺らした。少しの振動。たったそれだけで背筋に快感が走る。
「ん、動いて欲しいか?」
「ちがっ、ぁ''.....!ふぅっ.....!あ''、ぅうあ''.....やめっ、ぁあ''.....!んぅ''――ッ」
穿たれる度に身体中が快感で打ち震える。腿がお腹にくっつくほど膝裏を押さえつけられ、上から激しく打ちつけられれば、燈弥はもう目を剥いて喘ぐしかなかった。
溶ける
――呑まれるてたまるかという意識が
融ける
――この行為に対する嫌悪が
蕩ける
――燈弥を燈弥たらしめる思考が
光が眼裏で弾け飛ぶ。
ぐぽぐぽと聞くに耐えない下品な音が耳を犯す。
激しい抽挿で掻き出された白濁が臀部を伝う感触に恍惚と息を吐く。
「はっ、とうや....!燈弥.....!っ、ふ」
『くはっ、弥斗...!俺の、弥斗....!』
切羽詰まった声が耳元で熱を吐いた。
耳朶が熱い粘膜に包まれる。ねっとりと食まれ、甘えるように噛まれ、形を確かめるようになぞられ、ぴちゃぴちゃと厭らしく舐められた。
「んぁ、締まった....!いひひ、もうイきそう?」
『イけ、イけ....っ、壊れちまえ』
達しても終わらない。
腸壁をこ削ぎ落とすようにゴリゴリと擦られ、
前立腺を押し潰すようにグリグリと攻められる。
「やっ、め''....!~~~っはぁ''、や''ぁ''あ''っ、ぉ......ッ、イ....っくぅ''あぁァ....!?」
イき狂う。イき狂う。
あの日と同じように。
でも、あの日ではない。
今は今だ。
あの弱い頃の自分ではないのだ。
僅かに残った理性が燈弥を守る。
「ッ、燈弥.....オレの、オレの名前を....んっ」
『呼べっ!俺の名前を....!』
ぐぼぉと引き抜かれ、空気を食う音と共に押し込まれる。
その度に混濁する。今は弥斗なのか、今は燈弥なのか。身体に刻まれた快楽と恐怖が今を蝕む。
「燈弥っ」
『弥斗!』
ゴリッ.....!
責めるように奥を穿たれ、腰が浮く。残っていた僅かな理性は簡単にぐずぐずになり、許容量を超えた快楽にとうとう燈弥は――
「あ''ぁっ、イく、イきます....!ごめん、なさっ、あぅっ、イっ、ひぃ....シュウさぁあ''あ''っ――!」
《side end》
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