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第九章 心乱れる10月

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ピンポーン
ピンポーン
ピンポーン


「はいはい」


怒涛の3連続チャイムに重い腰をあげて玄関へ向かう金曜日の夜20:00。
チャイムを鳴らすとなると....会長かな?


ピンポーン


「今行きますよ~.....ん?」


しかし扉を開けた先には誰も居らず、代わりに大きさ20cm程のダンボールが置いてあった。

とりあえず魂写棒でつつく。つつけばダンボールは摩擦音を立て通路を移動した。
ということはそんなに重くない....。


「ふむ」


​────ピロン


その時、ちょうどスマホに通知の音が鳴る。ダンボールを警戒しながらスマホを開くと、登録した覚えのない差出人からメールが届いていた。


『ダンボールに入っている物を身につけ1階娯楽室までお越しください。from理事長』


from理事長!?!?
ここの理事長かぁ.....絶対に頭おかしい人じゃん。絶対にろくでもないものが入ってるじゃん。


「中見るかぁ....」


仕方なくダンボールを手に持ち部屋に引っ込む。
ハサミを取りに行くのがめんどくさかったため、切り裂く刃リッパーでガムテープを裂いた(ごめんリッパー)。
興味3割、嫌な予感7割で中をのぞき込むと.....


「耳と首輪?」


狼?らしきピンと立ったもふもふの黒い耳のカチューシャと、チョーカーにしてはゴツイ黒い首輪が入っていた。

これをつけろって?嘘でしょ??


「........体調不良ってことに――」


​────ピロン


『来なかったら退学。ダンボールの中にあったものを着けずに来ても退学』


まるで僕の行動を見透かしたようなメールが届く。あまりにタイミングが良すぎて、この部屋に監視カメラがあるんじゃないかと一瞬疑った。


「耳はまぁいいけど....首輪がなぁ」


ゴツすぎる。絶対何か仕掛けがしてある見た目と重さ。これ爆発しない?大丈夫?


「渋ってても仕方ないか」


開き直ってカチューシャと首輪をつける。しかし、肌に触れるひんやりとした金属の冷たさと、測ったかのようにピッタリな首輪のサイズにつけたことを直ぐに後悔した。

指が入らないくらい首輪がフィットしている。なんなら少し息苦しさを感じるくらいだ。しかも....取れない。


「.......娯楽室で何が始まるのかな?」


『絶対にデスゲームだコレ』という確信と共に部屋を出た。




そしてエレベーターに乗り、1階へ降りたのだが....おかしい。
まだ消灯時間でも無いのに出歩いている生徒が全く居ないのだ。食堂を覗いてみたが誰もいない。おかしい、不気味だ。

やはりデスゲームがこの先待っているに違いない。もう今の寮の雰囲気がソレだ。

暗鬱な気持ちになりながら娯楽室のドアを開けると​───




そこには色んな動物の耳をつけた生徒達がいた。



うわぁ....帰りたい



内心そうボヤいていると、前方に見覚えのある2人が居た。1人は灰色の猫耳をつけた生徒で、もう1人は....おっと――


「燈弥~!!」

「ぐふっ!?」


後退りしていると、逃げる間もなく突進される。


「兎君!突進はやめ.....猪君に改名しますか??」

「やだ!って、燈弥は狼かぁ。いいなぁ~かっこいいじゃん」

「兎君は名前に兎が入っているのに猪の耳なんですね」

「俺は自分が今着けているコレが猪の耳って今知ったぞ。すげぇな燈弥!!」


そりゃまぁ、突進してきたその姿がまさに野生の猪そのものだったからね。


「似合ってんじゃん」


走ってきた兎君と違い、彼はからかうようにニヤニヤと歩いてきた。


「ケーキ君も似合ってますよ。ネコちゃん」

「....ネコちゃん言うな。さっきから周りの目が痛いんだよ。可愛いものを見るような目で居心地悪い」

「うん、まぁ可愛いですからね。仕方ない」

「可愛いとか初めて言われたわ。恐ろしいな猫耳の威力」

「コホン....それで?これはなんの集まりですか?僕はてっきりデスゲームが始まるんだと思ってたんですが」

「知らね。でもなんか文貴は本校舎に呼ばれたらしいぞ」

「芙幸と清継もだ!」

「へぇ、本校舎に.....ん?」


2人と話していると壁際に見覚えのある人を発見。どうやらあちらも気づいたらしい。
しかし彼がこちらに来ようとすると周りの生徒達が強ばった顔をしたため、僕がそちらに行くとハンドサインを送る。


「僕は向こうに行きますが....」

「あっ、永利だ!!」


返事を聞く間もなく、兎君は委員長目掛けて突進して行った。しょうがない子だなぁと暖かい目で見ながらケーキ君の返事を待つ。どうやらケーキ君は五大家が嫌いらしいので。


「俺は別行動するわ。また会おうぜ」

「わかりました」


ケーキ君とはここで別行動。僕は委員長の元へ向かう。


「なんで一条がいるんだ?」

「委員長こそどうしてここに?」


委員長は虎耳をつけていて、いつもより迫力増し増しの可愛さ倍増だった。....いや、何言ってるんだ僕。


「俺はαだからな。ここにいるのは1年のαとΩだけだ。どうして一条が.....」

「あー!!だから芙幸達は呼ばれてないのか!.....ん?でも文貴はΩだぞ」

「どうやら番持ちとβは本校舎。αとΩは娯楽室だそうだ。まったく....αとΩをこんなに集めて何するんだか。危機感ねぇのか?あのくそ理事長は。Ωが発情期ヒート起こしたらどうすんだ。これじゃあ乱交になってもおかしくねぇぞ」

「ら、ららら乱交!?!?なっ、永利は大丈夫なのかよ!?」

「俺様がそう簡単に理性飛ばすわけねぇだろ。不要な心配だ」


ちょっと待って。今委員長おかしなこと言ったよ??
ここに集まっているのはαとΩだけ?
....なら僕は?僕はβだ。委員長の話の通りなら僕がここに居るのはおかしいでしょ。


「委員長、さっきの話本当ですか?」

「あぁ。聞き回ったからな。.....なんで一条がここに居るのか知らねぇが​───俺様から離れんなよ」


やめて委員長っ。そんな少女漫画みたいなこと言わないでぇ....反応に困るからぁぁぁ。


「....いいなぁ」


ほらーーっ、兎君が羨ましそうに僕見てるじゃん!反応に困るって....。










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