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過去話 『愛してる』は免罪符たりえるのか
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しおりを挟む双子は椅子のような寝台に縛られていた。
脱がされた上半身にはいつも通り管が繋がれ、頭には機械の帽子を被らされている。
だが、いつもと違うところもある。それはいつも別々の部屋なのに、何故か一緒の部屋に寝台を並べられていることだ。
「一緒にやんの初めてじゃね?」
「おれっち少し安心した~」
明るい表情の双子に繁秋と高政は微笑む。
「最後のフェーズだ。.....頑張れ」
「僕の愛しい天使達....今からやるのは今までで1番辛い実験かもしれない。だけど、耐えて。これで最後だから」
「「....頑張る!!」」
「よし。....高政!数値は安定してるか!?」
「オールオッケー!UM値も問題なし」
「よし....。じゃあ雅臣、重臣。目を閉じろ」
「「.......」」
「今から微量の影子を送り込む。身体に流れるソレを感じ取って、頭に思い浮かんだ言葉を教えてくれ」
目を閉じた双子は深呼吸するように息を吸い、ゆっくり吐き出す。
そして────
「ぞ、るぐ?.......ゾルグ」
「ざ、ざ......ザリファス」
「ゾルグとザリファスか。......なら最初に始動をつけて続けて言ってくれ」
「あー.....始動『ゾルグ』」
「えーっと、始動『ザリファス』」
瞬間、高政によって影子送流装置の出力を最大に上げられた。
「っ!?!?げふっ、がぁっ、あっ、あっ、あっ....!あ''あ''あ''あ''あ''あ''ぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
「い''っ、がふっ、お''えっ、ひっ、ひっ、い''だ、い''だぁぁっ!!っ、~~~~ーーーー!?!?」
雅臣はあまりの痛みに絶叫し、重臣はあまりの痛みに声なく悶絶する。
血が吹きでる。水風船に穴を空けたようにドクドクと流れる。
目から、鼻から、口から、耳から、皮膚を破り血管から。
致死量だ。
明らかに死んでもおかしくないほど出血している。
─────ピーーーーーー......
─────ピーーーーーー......
「っ、2人とも心肺停止!!AED準備っ.....僕は重臣を、繁秋は雅臣お願い!!」
「頑張れ頑張れ頑張れ頑張れ頑張れ頑張れ頑張れ頑張れ頑張れ!!頼むっ!!生きてくれぇぇぇ!!!!!」
(いだい寒い痛い寒い寒い痛い........ぁえ?オレいま何してんだ?真っ暗....何も見えない....寒い....)
【強者になりたい】
(オレは強者になりたいんだっけか....?)
【強者にならなきゃ笑えないだろ?】
(.....そんなわけない)
【そんなわけある。だって、オレずっと笑ってねぇじゃん?】
(......あ、そ....うだ。オレ笑ってねぇ)
【弱いから。弱いから!弱ぇから!!】
(笑いたい。声を上げて笑いたい。あの人のように)
【なら潰せ。過去を消せ。今を殺せ。弱いオレを否定しろ】
(どうやって)
【それは''オレ''が考えろ。だが、そうだな....】
【少し手伝ってやる。1歩踏み出せるよう背中を押してやる】
【さぁ、目を開けろ】
【強い''オレ''の誕生だ】
(痛い痛い痛い痛い痛いっ....ん、ん?真っ暗....寒い....怖い)
【おれっちは痛いのが嫌い。怖いのも嫌い】
(痛いのは嫌だ。怖いのも嫌だ)
【ならどうしよう?】
(わかんない。わかんねぇよ!)
【簡単だ。嫌なことされる前にこっちからやっちまえばいい】
(やる....?)
【おれっちを傷つける奴は殺せ】
【そうすればおれっちは傷つけられずに済む。怯えなくて済む】
(そ、そんなの....)
【できないって?いっひひひ!できるさ!おれっちなら!!】
【でもそうだな.....少し手伝ってやる。1歩踏み出せるように背中を押してやる】
【さぁ、目を開けろ】
【新しい''おれっち''の誕生だ!】
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