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過去話 『愛してる』は免罪符たりえるのか

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昔々、あるカタラ狩り名門家に双子が産まれた。



「おめでとうございます!!紅眼....αの双子です!!」


取り上げた赤子達を抱え、ベッドに横たわる男に助産師は目を向ける。


「ああ、かわいい。この子達が僕たちの.....僕と繁秋しげあきの子供.....抱かせて、僕に抱かせて」

「はい、もちろんです」


生命の鳴き声。
母の腕の中で泣く赤子はなんと可愛いものか。心をじんわりと温めてくれるような優しい温もりに涙が溢れた。


「​────高政たかまさ!!」


大きなた音を立てドアが開かれた。周りの制止の声など聞こえぬとでもいうように、慌ただしく入室した男。
ボサボサの黒髪に不健康そうな青白い肌。白衣を纏い目の下に濃いクマをこさえた男は高政に駆け寄った。


「よ、よく頑張った!!大丈夫か!?体は辛くないか!?」

「う、声がでかいよ....」

「うおぉおぉ.....!ちっちゃい!ちっちゃすぎるっ、な、名前はどうする!?なんて呼べばいい!?」

「だからうる、さい、って」

「ど、どうした高政?」

「疲、れた。からだがダル、い」

「奥様!ご子息様達をお預かりします」

「おねがい。繁秋に抱かせないで.....ちょっと怖いから」

「お任せください」

「酷くね!?」



こうして産まれた双子は愛情深い両親の元でスクスクと育つことになる。





「たかまさー!」

「たかまさー」

「こら!母様と呼べ!!」


母の怒りの表情にキャッキャと双子は笑う。
天使の輪を作る黒髪にこぼれ落ちそうなほど大きな赤い瞳。彼らは愛情を過不足なく注がれ4歳になっていた。


「おーぅ、糞ガキ共。幼稚園はどうだった?」

「「くずしげ!!」」

「シゲアキだ!!誰がクズなんて教えた!?というか父様と呼べ!」

「ともだちたくさんだ、しげあきー」

「はしるのおれっちとくい!!いちばんだぜ」

「おうおう。もう友達ができたのか!」

「いっひっひっひ~!さすが僕たちの息子!愛してるっ!!」

「きゃー、かあさまくるち~!」

「いっひっひっひ!くるち~」


息子と妻のじゃれ合いを幸せそうに繁秋は見つめる。

​────Prrrrrrrr.....

羽織っている白衣から振動が伝わり、スマホを手に取る。画面に表示された名前に繁秋は満面の笑みを浮かべると、逸るように電話に出た。


「繁秋です」

『​───』

「ははっ、観式学園幼等部に入学させるのを渋るほど離れ難い愛息子たちです。あいつらの成長をずっと間近で見られないのが寂しい。本当は学園なんかに入学させず、わたくしたちで教えたいくらいです.....」

『​───』

「わかっていますよ。そんなことしません。.....それで、私めに連絡をくださったということは.....」

『​───』

「はいっ!!もちろんです!!喜んで力になりましょう!!今すぐ向かいます!」

『​───?』

「ええ!妻と息子たちを連れて今すぐです!!私達が住む家は既に用意されているんですよね?」

『​────』

「は?息子達だけ?何を言ってるんだ!俺達も一緒に行くに決まってるだろう!!.....はっ、す、すいません!舐めた口を聞いてしまいました」

『​────』

「っはい、はい。ありがとうございます!!では数刻ほど後に伺います」



通話を切ると繁秋は意気揚々と愛する家族に言った。


「お前ら!引っ越すぞ!!」



















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