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第八章 体育祭
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しおりを挟む「いい加減どいて欲しいのですけど....」
「そうだ。早くそこから退け。そんで誰かと戦ってこいよ。俺たちのピクニックを邪魔すんじゃねぇ」
「くわぁ.....ねむ」
欠伸をしながら僕の腿から頭を起こしたサマ臣君は呑気に伸びをする。
あいたた....足が痺れてる。
長い時間体勢を変えず腿を貸していたせいか、足を動かそうとすると痺れのせいで下半身が使い物にならない。
今触られたら絶叫する自信がある.....。
「んぁ?もう体育祭終わりそうじゃねぇか。ずっとここに居たのかお前ら」
「なに当たり前のこと言ってるんです?君が僕の腿を枕にしていたんですから移動もクソもありませんよ」
「お前こそいいのか?戦いに行かなくて」
ケーキ君の言葉にサマ臣君は僕を見る。
「今回は戦うより燈弥優先だからな。こいつがこの体育祭の勝敗をひっくり返さねぇよう見張っとかねぇと。このまま2年の優勝で終わってくれなきゃ困る」
「2年が勝つような口ぶりだな。お前は特に何もしてねぇのに....快楽殺人鬼を信じてんのか?」
「オレと重臣が行動しようがしまいがこの体育祭のルールを本当の意味で理解してなきゃ佐竹には勝てねぇよ。なぁ燈弥?」
笑顔を向けられたため、僕も笑顔で返す。
はて....ルールを本当の意味で理解していなきゃ勝てないとはどういうことか?
「おっと、すいません。会長からメールが来たようです」
サマ臣君から視線を逸らし、いいタイミングできた会長からの連絡を見てみる。
「.....へぇ。宝玉が今現在で''9つ''ケースにあるらしいです。その内の4つが裏で見つけたもの。ん?溶ける宝玉ってなんですかね....?まぁいいか」
「9つって....もう勝ち確じゃん。え?勝ちだよな?俺たちの。もう体育祭終わるし....」
「なぁ燈弥。絶対的な安心感ってどう思う?」
サマ臣君の急な話題転換にケーキ君と揃って訝しむ。
「神崎がいれば負けない。緋賀がいれば負けない。2人がいれば尚更、負けるはずがない。そういう安心感。どう思う?」
「どうも感じねぇだろ。まず五大家に安心感を覚えるなんてありえねぇ」
「浪木はそうだろうな。燈弥は?」
「危険ですね。安心に身を委ねるには相応の準備が必要です。何もせず他人に委ねる安心など害でしかない。そんなものに身を任せれば思考は止まり、判断力が鈍り、あっという間に食われる。危険すぎます」
「で?お前は感じてんの?あいつらに安心感」
ピロリンという着信音にまたスマホに目を向ける。送られてきたメールに目を通し返信した後、連絡先からある人物の名前を宛先に設定し、文字を打ち込む。
.....これでよし。送信!!
「はぁ....えっと、安心感でしたっけ?えぇもちろん。感じてますよ」
そう返すと、探るような視線を向けられた。
またなにか聞かれるのも面倒くさいため、サマ臣君が口を開く前に僕が先手を打つ。
「ところでサマ臣君。実は僕が一生懸命作ったマドレーヌがあるのですが.....一緒に食べませんか?ああ、安心してください。今度はなにも入れてません」
「.....食う」
君が安心して僕が作ったマドレーヌを口にできるのは、それ相応の根拠があるからだろう。たとえ毒が入っていようが効かないという根拠が。
安心....安心感.....
なんて薄っぺらい言葉なんだろうか。
口で言われる''安心''ほど安心できないものはないなぁ。
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