192 / 382
第八章 体育祭
7
しおりを挟む材料は……
薄力粉、バター、ブラウンシュガー、グラニュー糖、卵、ヨーグルト、ベーキングソーダ、チョコチップ。
まず、薄力粉とベーキングソーダを合わしたものを2回ふるう。ヨーグルトの水気をきる。
「バターを泡立て器で練る。ポマード状になったらブラウンシュガーとグラニュー糖を加えて、白っぽくなるまで混ぜる」
「ポマード状....?」
「あ~.....柔らかいクリームみたいな状態のことだ」
「なるほど」
今僕はケーキ君にクッキーの作り方をレクチャーしてもらっている。本を見ながら作ることは出来るけど、やはり得意な人に直接教えて貰う方が心強い。
「んで?急にどうしたんだクッキー作りなんて」
「あげたい人が居るんだ」
「ふ~ん....俺?」
「コレはケーキ君にあげるよ」
「言い方が残飯処理.....」
「まぁまぁ落ち込まないで。僕の人生初の手作り料理を食べるんだよ?」
「うれしいなぁ(棒)」
「棒読み~」
笑っているとケーキ君が小瓶を手に取るのが横目で見えた。
「何だ?この白っぽい粉は」
「実家から取り寄せた隠し味。ああ、安心して。これには入れてないから」
「本当に何企んでんだよ、怖ぇよ....次はほぐした卵を少しづつ加えて混ぜる」
「卵っと....。大丈夫大丈夫これも体育祭のためだから」
「1年生勝利のため?」
「僕の勝利のため」
「だろうな。......俺はそばに居てもいいか?」
「ご自由に。もう君にはほとんど知られてるし、今更隠しても無意味だからね」
「じゃあ共犯者だな、俺ら」
「あはは、いいねソレ」
「あ、次はヨーグルトな」
「りょーかい」
卵を入れた時のように、ヨーグルトも少しづつ加えて混ぜ合わせる。....クッキーにヨーグルトとか初めて聞いたな僕。普通なのかな?隠し味?
「どう動くんだ?体育祭」
「あんまし考えてない。宝玉探すのは徒労だし....一緒に散歩でもどう?」
「ふはっ、俺でよければ喜んで。俺も何か作ってこうかな?」
「もはやピクニック」
「いいじゃねぇかピクニック」
「じゃあ僕、ビニールシート持ってくよ。あとお茶も」
「混ぜ終わったら、粉類を2回に分けてまた混ぜる」
「ん.....」
たしか丁度いいくらいのビニールシートがあったはず。うーん、ここまでくるとトランプとか遊べるものまで持ってきたくなっちゃうな。でも、2人でトランプはやることなさそうだからオセロとか将棋・チェスかな、持ってくなら。
.....本格的なものは荷物になるから、コンパクトな磁石オセロセットかな?確か持ってたはず。
─────カシャ!
「ん?.......なに撮ってるのケーキ君」
「すまん。なんか指が勝手に写真撮ってた」
「怖すぎでしょそれ」
「その姿のお前がクッキー作ってるとか滅多になさそうだから、つい」
「ふふん。絵になるでしょう?僕って。あ、ナルシじゃないよ?日常的に言われてた言葉だから。絵になるとか、勝手に指がシャッター切ってたとか」
「まぁわからんでもないな。実際に俺も無意識に写真撮ってたし」
「家では僕の写真をめぐって銃撃戦が起きたことあるよ」
「.....お前の家どうなってんの?」
「義理の弟が居るんだけど、出会って数日で当たり前のようにストーカー化したよね」
「!?!?」
「親父さんはどうしても僕に家を継いで欲しいとか言うけど、義理母はそれ聞いて僕を殺そうとしてきたよね」
「ちょ....」
「殺伐具合と溺愛具合が混ざりに混ざって家は混沌としてて、1回ストレスで倒れたんだよね」
「まっ....!」
「親戚には危うく強姦されそうになったよね」
「ちょっと待て!!1回ストップ!」
「ん?」
「ん?じゃねぇよ!!情報量が多すぎるっ、今の話全部本当か?」
「さぁ?どうだろう」
「おっまえ....!そういうところだぞ!!人外じみてるって言われんのは!人を惑わすことばかり言って、相手がどう反応するのか面白がるように見て....たち悪ぃんだよ!」
たち悪いかな?
まぁ、ケーキ君がどういう反応するのか興味あったのは否定しないけど。
「ああクソ.....!どこまで本当だ!?」
「ご想像にお任せします」
「本っ当にお前は.....!!」
「ケーキ君は?」
「っ」
「ケーキ君の家はどういう家なの」
「お、おれの家は.....」
「家は?」
「.....化け物しかいねぇ。化け物は化け物でも燈弥みたいに綺麗な化け物じゃない。おぞましく、汚らしく、穢れてて、卑しい化け物だ。固まったガムみてぇに古びた考えに固執して、口うるせぇ老害みたいに言葉が通じない。クソだ。忌々しい」
「ケーキ君あ~ん」
「むっ....」
生地のままでも美味しいねクッキーって。
話を聞いてると、やっぱりこの学園の生徒って何かしら抱えてるんだなぁと痛感する。僕も含めて。
ケーキ君は家関係
宮野君も多分家関係
文ちゃんは....番関係
あら不思議、僕の周りもまぁまぁ重そうな事情を抱えた人達がいる。
「おいしいねぇ」
「....おいしいな」
1回この世界は滅んだ方がいいと思う。
53
お気に入りに追加
430
あなたにおすすめの小説

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話
みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。
数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

変態高校生♂〜俺、親友やめます!〜
ゆきみまんじゅう
BL
学校中の男子たちから、俺、狙われちゃいます!?
※この小説は『変態村♂〜俺、やられます!〜』の続編です。
いろいろあって、何とか村から脱出できた翔馬。
しかしまだ問題が残っていた。
その問題を解決しようとした結果、学校中の男子たちに身体を狙われてしまう事に。
果たして翔馬は、無事、平穏を取り戻せるのか?
また、恋の行方は如何に。


悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい
椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。
その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。
婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!!
婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。
攻めズ
ノーマルなクール王子
ドMぶりっ子
ドS従者
×
Sムーブに悩むツッコミぼっち受け
作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる