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第八章 体育祭

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材料は……
薄力粉、バター、ブラウンシュガー、グラニュー糖、卵、ヨーグルト、ベーキングソーダ、チョコチップ。

まず、薄力粉とベーキングソーダを合わしたものを2回ふるう。ヨーグルトの水気をきる。


「バターを泡立て器で練る。ポマード状になったらブラウンシュガーとグラニュー糖を加えて、白っぽくなるまで混ぜる」

「ポマード状....?」

「あ~.....柔らかいクリームみたいな状態のことだ」

「なるほど」


今僕はケーキ君にクッキーの作り方をレクチャーしてもらっている。本を見ながら作ることは出来るけど、やはり得意な人に直接教えて貰う方が心強い。


「んで?急にどうしたんだクッキー作りなんて」

「あげたい人が居るんだ」

「ふ~ん....俺?」

「コレはケーキ君にあげるよ」

「言い方が残飯処理.....」

「まぁまぁ落ち込まないで。僕の人生初の手作り料理を食べるんだよ?」

「うれしいなぁ(棒)」

「棒読み~」


笑っているとケーキ君がを手に取るのが横目で見えた。


「何だ?この白っぽい粉は」

「実家から取り寄せた隠し味。ああ、安心して。これには入れてないから」

「本当に何企んでんだよ、怖ぇよ....次はほぐした卵を少しづつ加えて混ぜる」

「卵っと....。大丈夫大丈夫これも体育祭のためだから」

「1年生勝利のため?」

「僕の勝利のため」

「だろうな。......俺はそばに居てもいいか?」

「ご自由に。もう君にはほとんど知られてるし、今更隠しても無意味だからね」

「じゃあ共犯者だな、俺ら」

「あはは、いいねソレ」

「あ、次はヨーグルトな」

「りょーかい」


卵を入れた時のように、ヨーグルトも少しづつ加えて混ぜ合わせる。....クッキーにヨーグルトとか初めて聞いたな僕。普通なのかな?隠し味?


「どう動くんだ?体育祭」

「あんまし考えてない。宝玉探すのは徒労だし....一緒に散歩でもどう?」

「ふはっ、俺でよければ喜んで。俺も何か作ってこうかな?」

「もはやピクニック」

「いいじゃねぇかピクニック」

「じゃあ僕、ビニールシート持ってくよ。あとお茶も」

「混ぜ終わったら、粉類を2回に分けてまた混ぜる」

「ん.....」


たしか丁度いいくらいのビニールシートがあったはず。うーん、ここまでくるとトランプとか遊べるものまで持ってきたくなっちゃうな。でも、2人でトランプはやることなさそうだからオセロとか将棋・チェスかな、持ってくなら。

.....本格的なものは荷物になるから、コンパクトな磁石オセロセットかな?確か持ってたはず。



​─────カシャ!


「ん?.......なに撮ってるのケーキ君」

「すまん。なんか指が勝手に写真撮ってた」

「怖すぎでしょそれ」

姿のお前がクッキー作ってるとか滅多になさそうだから、つい」

「ふふん。絵になるでしょう?僕って。あ、ナルシじゃないよ?日常的に言われてた言葉だから。絵になるとか、勝手に指がシャッター切ってたとか」

「まぁわからんでもないな。実際に俺も無意識に写真撮ってたし」

「家では僕の写真をめぐって銃撃戦が起きたことあるよ」

「.....お前の家どうなってんの?」

「義理の弟が居るんだけど、出会って数日で当たり前のようにストーカー化したよね」

「!?!?」

「親父さんはどうしても僕に家を継いで欲しいとか言うけど、義理母姐さんはそれ聞いて僕を殺そうとしてきたよね」

「ちょ....」

「殺伐具合と溺愛具合が混ざりに混ざって家は混沌としてて、1回ストレスで倒れたんだよね」

「まっ....!」

「親戚には危うく強姦されそうになったよね」

「ちょっと待て!!1回ストップ!」

「ん?」

「ん?じゃねぇよ!!情報量が多すぎるっ、今の話全部本当か?」

「さぁ?どうだろう」

「おっまえ....!そういうところだぞ!!人外じみてるって言われんのは!人を惑わすことばかり言って、相手がどう反応するのか面白がるように見て....たち悪ぃんだよ!」


たち悪いかな?
まぁ、ケーキ君がどういう反応するのか興味あったのは否定しないけど。


「ああクソ.....!どこまで本当だ!?」

「ご想像にお任せします」

「本っ当にお前は.....!!」

「ケーキ君は?」

「っ」

「ケーキ君の家はどういう家なの」

「お、おれの家は.....」

「家は?」

「.....化け物しかいねぇ。化け物は化け物でも燈弥みたいに綺麗な化け物じゃない。おぞましく、汚らしく、穢れてて、卑しい化け物だ。固まったガムみてぇに古びた考えに固執して、口うるせぇ老害みたいに言葉が通じない。クソだ。忌々しい」

「ケーキ君あ~ん」

「むっ....」


生地のままでも美味しいねクッキーって。
話を聞いてると、やっぱりこの学園の生徒って何かしら抱えてるんだなぁと痛感する。僕も含めて。

ケーキ君は家関係
宮野君も多分家関係
文ちゃんは....番関係

あら不思議、僕の周りもまぁまぁ重そうな事情を抱えた人達がいる。


「おいしいねぇ」

「....おいしいな」



1回この世界は滅んだ方がいいと思う。









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