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第八章 体育祭
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しおりを挟む今日もいつもと変わらない日常を送れると思っていた。
学校に登校して、Aクラスで兎君に突撃されそれを避ける、昼は教室で弁当を広げて、放課後は生徒会で雑務、帰宅後は変装を解いてまったり過ごす。
これがここ最近の僕の日常だ。
それが今日は────
「こいつって全校集会で舞台に上がってた奴じゃね?」
「魅了の異能でも使ったのか?」
「なんでっ、神崎様はアイツの部屋に!?」
「あの独裁者が笑ってるぞ.....」
「てか二股じゃね?」
「2年生でされてた噂なんだけど――」
「あ、それ僕も聞いたことある」
「俺も」
「ああ......独裁者と一緒に寝たっていう噂ね」
「五大家の2人と関係持つとか頭おかしいだろ」
「会長まで誑かすとか死ねよ」
「ブスのくせして」
「マジ有り得ねぇ。会長を汚すな」
「殺してやる.....」
「風紀に入ったのも緋賀様に取り入るためじゃない?」
取り敢えず2年で変な噂流した黄犀と紫蛇は〆る。
まぁそれだけが理由じゃないのは分かってるけど....登校してこれは結構キツイなぁ。
気配を殺しながら校内掲示板を見つめる。
そこには僕と会長、僕と委員長のペア写真がデカデカと貼り付けられていた。
ただのペアショットなら『学校生活について相談してたんです』『イジメの相談していて....』とか幾らでも言い逃れができるが、このデカデカと張り出された写真は2人が僕の部屋に入ろうとしている写真だ。
2人の性格からして相談ごときで他人の部屋に入るとは思えない。そんなことここの生徒なら誰もが知っているはず。つまり、僕と彼らがそういう関係だと信じてしまう可能性が.....高い。
僕殺されないかな?....殺されるだろうなぁ。
現に殺す発言してる子いるし。
ここはそーっと場を離れて教室、いや寮に――
「あ!!一条さん!!!!」
「!?!?」
誰だ!?この僕の気配を察知した人間は!!
驚き半分、恨めしさ半分で目が合ったのは.....
「財前君.....っ!?」
ツンツン頭にセットされた茶髪に一重のつり目。
昇級試験ぶりかな?会うのは。
懐かしい気持ちが過ぎるが、すぐに顔が引き攣る。なぜなら無数の瞳が僕を見ていたからだ。
疑心、憎悪、殺意、軽蔑、嫉妬、悪意....ぁあ身体に穴があきそう。
「財前君~.....逃げますよ!!」
「はっ、ぇ!?!?ちょ、」
近寄って来ていた彼の手を掴みダッシュ。
向かう先は.....人が居ない空き教室。
教室に入りドアから廊下を覗くが、どうやら追ってくる生徒はいないようだ。あの穴があきそうな視線がなくなり胸を撫で下ろす。
「昇級試験ぶりですね財前君」
「一条さんっ!!なんで風紀副委員長解任されてんだよ!?」
「最初に聞くことがそれですか....?」
こう....もっとさ、あの写真は本当なんですか!?とか、付き合ってるんですか!?とかあるでしょ。なんで風紀――あれ?
「どうして僕が風紀解任されたって知ってるんです?一般生徒は知らないはずですが」
「おれ、俺っ...!!委員長×一条さんを見れると思って風紀入ったのに!!酷いじゃねぇか!!」
「いや、知ったこっちゃないです。ろくでもない理由で風紀入りましたね」
納得した。風紀に入ったら嫌でも僕が解任されたことを知るだろう。というか、こんな不埒な理由でよく風紀入れたな。弾かれそうだけど....もしかして猫かぶった?
「でも、ちゃんと帰ってくるよな?体育祭終わったら帰ってくるよな?」
「はいはい。体育祭終わったら副委員長に復帰しますよ」
「よかった....ところであの写真はなんだ!?」
時間差~!!
今それ聞く???財前君の優先順位謎だね。
あ、風紀の仲間になったんだから財前君じゃなくてゼニ君の方がいいか。
「財前君....もといゼニ君はどう思います?あの写真について」
「またゼニ君呼びかよちくしょう!!んで、あの写真について!?そりゃ怒り心頭だ!」
ほほぅ??怒りとな
「俺は委員長×一条さんなんだよ!!会長×一条さんは求めてねぇんだ!!」
「クソみたいな理由.....はぁ、ゼニ君はあの写真が本物だと思うのですか?」
「?」
「今のご時世''合成写真''というものがあるじゃないですか」
「はっ.....確かに!!つまりアレは合成写真!?くっそ~!新聞部の奴らめ!取り締まってくる!!よくも会長×一条さんの写真作りやがったな!?許すまじ!」
「はいどうどう.....」
「ぶへっ!?!?」
「落ち着いてください」
教室から飛び出そうとしたゼニ君の足をひっかけ転ばす。そんなことされたら困るんだよねぇゼニ君。あの写真は合成なんかじゃなく本物だから。
君の思い込みを新聞部の人間に解かれちゃ困る。
「もうじき体育祭があるのは知ってますよね?そのために根回しと説得を僕以外の生徒会が行ってるのも知ってますよね?」
地べたに倒れ込むゼニ君を見下ろしながら言えば、彼は首が取れるんじゃかいと思うくらい首を縦に振った。
「その説得された中には会長に思いを寄せている人もいるんですよ。だから困るんです。君に騒ぎ立てられたら。.....騒げば真実味が増すでしょう?説得が無に帰すなんて会長が可哀想です」
「だ、だけど言わなきゃ一条さんヤバくなる....」
「もし陰口を叩く人間が居たら軽蔑の視線を送ってやればいいんです。噂に、真実ともわからぬ情報に踊らされる人間なんて....たかが知れています。無視してください。反応すればゼニ君の格が落ちてしまいます」
「ぅ....」
なおも心配そうな視線を向けてくるゼニ君に胸がほっこりする。いい子だなぁ。
「言いますが、僕はやられっぱなしは好きじゃないんですよ」
「!」
「安心出来ました?」
「~~さすが一条さん!!だてに委員長を手のひらで転がしてないぜ!!」
「殴りますよ??」
「す、すんません....!」
よろしい。
....さて、ゼニ君を言いくるめることができたが問題は解決していない。あの写真がどうやって撮られたのか不明なため、犯人を吊し上げようにもできないときた。まぁ十中八九、放送委員(新聞部及び情報部含む)が犯人だと思っているけど。
でも誰がやったかという''個人''を見つけられない限り報復は難しいだろう。あそこは規模が大きいせいか、下手に手を出すと何が出てくるか分からない不気味さがある。
慎重に行動しなければ……。当分は僕の部屋に会長及び他の人(サマ臣君とか)は出禁だなぁ。やったね.....おっと、本音が。
「あ、あのさ!あの写真って会長と委員長を仲違いさせる狙いじゃないよな」
「ん?」
「仲違いもなにも、最初から仲悪ぃし。どう考えても一条さんを陥れようとしてる写真だと思ったんだけど、そこんとこ一条さんはどう思ってんの?」
どう思ってんの?って言われても....。僕自身なんで僕が狙い撃ちされたのか分からないんだけどなぁ。それだけ脅威と思われてるってこと?
「さっぱりわかりません。どうして僕が狙われたのか....」
「やっぱり一条さんが優秀だからじゃね?」
「......」
そうだとすると、2年生を纏めているという爆弾魔に2年風紀委員が言ったことになる。『風紀副委員長の一条 燈弥は危ない』って。
僕を優秀と言う人間は直接接したことのある風紀委員くらいだからね。
「なぜ僕なのか考えても仕方ないです。今は今後のことを考えなければ。あの写真のせいで僕は多くの生徒から敵認定されていると言っても過言ではないですし.....ぁ、これ僕詰みましたね」
「な、なんで?」
「ゼニ君は味方か分からない人に背中を預けられますか?僕は無理です」
「あー......あの写真のせいで誰が敵になっててもおかしくないからか」
「僕の体育祭は終わりました。きっと背中刺されて死ぬんですね僕」
「単独行動すりゃいいんじゃね?」
それでも死にそうなんだよなぁ。サマ臣君達を煽っちゃったから。まさかここであの行動が裏目に出るとは....ままならないねぇ。
僕は体育祭じゃなくて、鎖真那兄弟の対策を考えた方が良さそうだ。
「そうですね。僕は単独行動しましょうか。ナイス案ですゼニ君」
「そ、そうか。役に立てたなら良かった」
今日の放課後開かれる1年生を引っ張ってく立場にある生徒会と風紀が集まる会議で、体育祭の方針を決めるだろうから、そこで相談しようか。
そう会議に思いを馳せていると、ゼニ君から視線を感じた。
「他にも聞きたいことがあるんですか?」
「じゃあ最後に。一条さん体調悪いのか?」
「え?なんでそう思ったんです?僕は至って健康ですが」
「だって、ほら....マスクしてんし。マスクのせいで不審者度増し増しだし」
ああ、マスクね。
逆に僕はなんでゼニ君がマスクをしないのか理解できない。
「この学園には神出鬼没のキス魔がいますから。自衛するのは当たり前でしょう?」
「き、キス魔....」
既に被害に遭っている僕が言うのだから、間違いない情報だよ??
うん....そんな可哀想な子を見る目で見られるとかちょっと納得いかないから殴るね。
「ギャン!?」
こんな見た目の僕がキス魔の餌食になる心配とか憐れみを抱くのはわかるけど、そういうのは内に隠そうかゼニ君。
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