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ちょい話

夏休み終了

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「おはーーー!そしてただいまぁ~!」

「ただいま」

「芙幸!!清継!!おかえりっ」


湊都は若干の涙目で2人を迎えた。
芙幸達が訪れたのは湊都の寮部屋、そこには湊都以外にも浪木 将翔と鳥羽 文貴という部屋主達も揃っていた。


「文貴お土産」

「わぁ、ありがとう。私からもこれどうぞ」

「ありがとう....その、大丈夫か?」

「なにが?」

「いや、なんでもない」

「......変な清継」


お土産交換が終わり、5人はそれぞれ近況報告をしあいだした。

トップバッターは清継。


「俺は特に面白い話はないな。夏休み中は芙幸とブラブラしてただけだ」

「あのさ、もしかして清継と芙幸はご近所さんなのか?幼馴染っぽいし」

「幼馴染だぞ。は近くに住んでいたんだ。それでよく遊んだ」

「昔??」

「はーい!清継の話はここまでっ。湊都の話聞かせてよ」


次は湊都。



「う、俺....実は風紀でやらかしてさ」

「「あ~.....」」

「なにさ将翔君と文貴君2人して」

「俺は!!シリアルキラーを懲罰棟から出しました!!そんで、今日まで風紀で寝泊まりするほど働きました!!以上っ」

「「マジか.....」」


清継と芙幸は呆然と言葉を呟いた。想像以上のやらかしに言葉が消失。


「風紀委員長によく殺されなかったな....」

「湊都が無事で何よりだよ~!!」

「永利が....」

「「.....?」」

「永利がさ、優しい顔して『間違いは誰にでもある。気にするな』って....」


どこか陶酔した様子で湊都は語る。
つらつらと永利について話す湊都を一旦放置し、2人は詳細を聞くべく将翔と文貴に目をやった。

将翔は2人の視線を受け、ため息を吐き出すように真実を伝える。


「燈弥が取り成してくれたんだよ。本当はシリアルキラー逃がしの罰で片腕切り落とすって緋賀がキレてたらしいが.....」

「燈弥君がまるめこんだらしいよ」

「まるめこんだと言うより、燈弥がそう頼むと緋賀があっさり了承したらしいぜ」


将翔は思い返す。この話を燈弥から聞いたとき、彼はその美貌を困ったように歪めていた。


『僕が委員長に3人にそこまでするのは酷だと言ったんだ。でも、だからといって罰を受けないのはおかしいから兎君は不得意なデスクワーク、紫蛇と黄犀の処罰は.....僕に任せて欲しいとお願いした。すると彼は僕に目も合わせず''わかった''とだけ言ったんだ。随分すんなり了承してくれたから驚いたよ』


本来の緋賀 永利なら「テメェは''今''生徒会でその権限は無いはずだ」とくらい言いそうだと将翔は思った。それがまさか了承するとは.....。


「何かあったのかな?燈弥君と委員長」

「何かあったんだろうねぇ~」

「燈弥は顔に出さないから分かりずらい....困ってなければいいんだが」


文貴、芙幸、清継は口々に言う。


「はいはい!ここでこの話は終わり~。湊都も戻って戻って!」

「っは!?俺は今何をしてた.....?」

「ずっと委員長について語ってたよ.....さ、次は文貴君の番!と思ったけど体育祭について話そっか!」


芙幸の言葉に嫌そうな顔をする者2名清継と将翔、苦笑う者1名、首を傾げる者1名。


「体育祭っていっても話すことないだろ?あ、二人三脚一緒に組もう!って話か?」

「ノンノン。体育祭は表と裏の競技があるでしょ」

「表と裏??」


湊都は訳が分からないというような顔をする。


「まず体育祭というのが1年vs2年というのは知ってるよね?」

「.....知らねぇよ!?えっ、そうなのか!?普通紅組vs白組じゃないのか!?」

「逆に何それ....知ってる3人とも?」

「「「知らない」」」


将翔達は首を振った。


「ま、まぁここの体育祭は1年vs2年なのさ!勝った方が来年2、3階に住む権利を得る!!」

「嘘だろ....というか学年変わると寮移動しなきゃいかないのか。ん?3年は出ないのか!?それと燈弥みたいに寮移動に関係ない生徒はどうすんだ?」

「どーどー、落ち着いて湊都。ちゃんと説明するから。かくかくしかじか....」

「.....なるほど!」

「それでわかるものなのか???」

「はい清継だまってー」


そこへ将翔が口を挟む。


「んで?もちろん裏だよな」

「「「当たり前」」」

「???」


自分を置いて進む話に湊都はグイッと芙幸の服を引っ張る。身長的に上目遣いになり、その破壊力は芙幸を唸らせた。


(ぐぅかわ....!!心臓がギュンとなったよ!?ギュンと!!)


「あ、わわ.....お、表と裏っていうのは体育祭の参加ルートのことだよ!表が徒競走や騎馬戦などのスポーツ勝負。裏が自身の異能を使って相手から宝を奪う、宝探しみたいな略奪戦。体育祭はこの表と裏の勝負で得た宝玉の数で勝敗を決めるんだ」

「表と裏両方出ることは出来ないのか?」

「できない、っていうか難しい。表と裏は同時進行だから」

「へぇ~.....なら俺も芙幸達と一緒の裏に出ようかな!!」

「う....ぉあ」

「どうした芙幸?」


鈍い返事に湊都は不思議がる。


「や、やっぱり僕は表の競技にでるよ!!湊都も表に出よ!?一緒に二人三脚に出たいなぁ~!」

「え、でも....」

「お願いぃぃぃぃ」

「わ、わかった。わかったよ。表に出る」

「湊都~!!」

「うぉ!?急に抱きついたら危ないだろ!?」


芙幸と湊都の2人をよそに他3人は集まる。そして眉を寄せ将翔は清継に聞いた。


「変わったな。前までは面白そうなことがあると一直線に向かってたが、今は見向きもしねぇ。湊都に会ってから変だぞアイツ。帰省後の情緒不安定さもねぇし.....」

「.....それはいいことだろう。精神が安定していることを''変''という方が変だ。きっとアイツも湊都という友人ができて落ち着きを知ったんだ。良かったじゃないか」

「私は.....将翔君の言う通り心配だよ」

「俺は一言も心配してるって言ってないけどな?勝手に記憶つくってないか文貴」

「アレは友人と言うより違う情を感じる。肉欲はなさそうだし....庇護欲?」

「それのどこに心配事があるんだ。友情の形は人それぞれ。庇護欲を伴う友情があっても不思議じゃないだろう」

「....そう?なんか危うく思えるのは私の考えすぎってこと?」

「.....考え過ぎだ」


清継はそう言いながらも苦い顔をしていた。なにか思うとこがあるのかもしれない。
しかし、その心情に踏み入る覚悟を持った者はここには居ない。



文貴と将翔は無言のまま、芙幸と湊都を見つめた。













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