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第七章 夏休み☆
《side 兎道 湊都》
しおりを挟むあの面白い妖精を助けるために、何度も計画を練った。だけど何度考えても懲罰棟に入る方法と妖精を助ける方法が思い浮かばず机につっぷす羽目に.....
最初から行き詰まるとかもう、どーすりゃいいんだ!?
そう頭を抱えていると、燈弥からパーティの誘いがきた。湯だった頭を冷やすためにも息抜きで参加しようと思い、了承を伝える。
パーティに参加すると、メンツが俺と燈弥、望月先生、真波先生という異質な顔ぶれだったが、楽しかったからなんとも思わなかったし、なんならそこで思わぬ収穫を得ることが出来てホクホクで帰ることが出来た。
真波先生は言った。
仲間を作れと。
目からウロコだ。
俺は1人で考えていたから壁にぶち当たり続けていたんだ。仲間がいればぶつかっていた壁もぶち抜ける(はず)!
それで俺は考えた。
懲罰棟と言えば風紀の管轄。俺は懲罰棟関係の仕事はさせてもらえないが、俺以外は違うだろう。
そして妖精は凶悪な違反者と一緒の牢にぶち込まれていると言っていたから、仲間にするなら強い奴じゃないとダメ。つまりとにかく強い委員を仲間にすればいい。
えーっと、確かたこ焼きパーティーで燈弥は....
『風紀の中で荒事に強い奴いるか?』
『それは見回り組である兎君の方が詳しいじゃないですか』
『燈弥の意見聞きたいんだよ。あ、永利は除外な』
俺がそう言うと燈弥は暫く考えて、その名前を口にした。
『黄犀と紫蛇ですかね。以前哀嶋君から聞いたのですが、僕たちが入る前の風紀ではあの二人の違反者の捕縛率が飛び抜けて高かったそうです』
『黄犀と紫蛇か.....わかった!ありがとうな!』
『どういたしまして.....?』
荒事に強くて、懲罰棟のことを知っている人物。
燈弥のおかげでいい仲間が見つかりそうだ。
そしてパーティの数日後。つまり俺の風紀の仕事がない今日!
俺は黄犀先輩と紫蛇先輩に突撃相談をした。
「ふっ、後輩に助けを乞われたなら助けない訳にはいかないですね。先輩に任せなさい」
鼻息荒く、ニンマリ笑顔を見せたと思ったら紫蛇先輩はスマホ片手にどこかに電話し始めた。
「湊都っち、よくぞおれを頼ってくれた!」
黄犀先輩はというと、やっぱり紫蛇先輩と同じように鼻息荒くニンマリ笑顔を浮かべている。
なんて心強いんだ!!戦闘狂捕縛のために組むことが多いけど、本当に先輩達は頼りになるぜ!頼ってよかった!
「紫蛇ー、シフト変わってもらった?」
「バッチリです」
だけど、耳を疑うような言葉を聞いて身体が固まる。
「紫蛇先輩今日見回りあったんすか!?」
「変わって貰ったから大丈夫です」
「いやっ、別にそこまでしてもらわなくても!仕事終わった夜に集まるとかで全然いいのに!」
「ぁ....」
え?なんで''やっちまた''って感じの顔をするんだ!?もしかして何も考えずに行動したのか?
そんなっ、紫蛇先輩に限ってそんなことねぇと思うけど....まさか?本当に?
「ちっちっち....わかってないなぁ湊都っち。紫蛇はこの事件の緊急性を感じてそうしたんだよ。仕事と妖精の命、どっちが優先されるべきか明白じゃん。紫蛇もそう考えたんだよな?」
「も、もちろんです」
「!!」
確かに!優先されるべきは命だ。
でも.....
「俺は今日、先輩方と作戦を立てようと思ってきただけなのに....」
「何言ってるんですか、かかってるのは命ですよ?即行動あるのみです」
「....大丈夫かなぁ」
「ふっふっふ、おれ達先輩がいるじゃん!懲罰棟の見回りとかやったことあるし、大丈夫だって」
行き当たりばったりな感じで妖精を救出できるのか不安だけど、紫蛇先輩の即行動っていうのも正しい。黄犀先輩も大丈夫って言ってるし....うーん、なんか自信満々な先輩達を見てると本当に大丈夫な気がしてきた。
「よし!何としても妖精を助けよう!」
「「えいえいおー!!」」
「で、これからどうするんすか?」
「懲罰棟に行くに決まってるじゃないですか。実は今日当番なので、懲罰棟入口の鍵とか持ってるんです」
「さっすが紫蛇~!ツキを持ってる!」
「ふ、これはもう天が僕に妖精を助けろと言っているようなもの!!....それで兎道、妖精とはどんな見た目なんですか?」
やっぱり先輩達を仲間にしてよかったとしみじみしていると、急な話題転換に驚く。
妖精の見た目?
「いや、だからその妖精は遊んでいる時に凶悪犯に鷲掴まれてそのまま一緒の牢に連れてかれたって....俺も姿はまだ見てないっす。さっきも説明したじゃないすか」
「す、すみません、言葉が足りなかったですね。妖精がどういう見た目をしているのか予想し合いましょうと言いたかったのです」
全然意味違うじゃねぇか。
でも黄犀先輩がうんうんと頷いていたから俺の理解力がないだけなのかもしれない.....。
「おれの予想では....ズバリ!火の玉!!」
「ふむ、いい線いってますね。ですが甘い。僕はズバリ!羽の生えた小人!!」
「うわー、それもありだなぁ。おれもそっちにしよ!」
「ふ、勝った」
「負けたー」
????
えーっと、なにかの勝負なのか?
時々この先輩達は俺とは違う世界の人間なんじゃねぇのかって思う時がある。まぁ、今がまさにその時なんだけどよ……。
ん?いやいやっ、俺の方が違う世界の住人だよな!?だって前世の記憶があるし.....。
もしかして先輩らが普通で俺が変なのか!?
話が理解できないのは前世の記憶のせいか?
いかん、頭が混乱してきた。話を変えよう
「あーっ!もう妖精の予想は羽の生えた小人でいいっすから、どうやってその妖精を助けるか話し合いましょう!牢の鍵とかあるんすか?」
「牢の鍵は委員長が管理してるから誰も持ってないぞ。紫蛇も持ってないよな?」
「持ってないです」
「委員長が持ってるって言っても、その本人は学園に居ないっすよ?管理は誰が引き継いてるんだ...っすか?」
「そりゃ哀嶋だろー」
「ということは、紗里斗に頼みに行くしかねぇか.....」
「「NOーーー!!」」
「うぉっ」
急に大きな声を上げた先輩らに驚く。すげぇシンクロ率だな。
「哀嶋はダメだ。絶対に鍵を開けてくれない」
「まず、僕達が頼みに行ったところで鼻で笑われるだけですよ。『はっ、黄犀と紫蛇が揃ってる時点で、何を頼まれても絶対に首を縦に振ることは無いです』って、言います。というか既に言われたことがあります」
「おれ達先輩なのに!!あいつには先輩を敬う気持ちがないんだ!」
「じゃ、じゃあ俺が1人で頼みに行く!」
「それもやめといた方がいい!あの哀嶋が妖精を助けるために牢の鍵を開けてくれるわけないじゃん?絶対に妖精とか信じてない!!」
「嗚呼、一条さんが副委員長ならどれだけ良かったか。あの人なら仕方なさそうに笑いながらも、鍵を開けるために一緒に着いてきてくれたでしょうに」
「うぅ~!恋しぃぃぃぃぃぃ!!副委員長に困った子を見るような目で見られたいよォ!おれ副委員長不足ーー!!哀嶋のゴミを見るような目は嫌だァァ!!」
「黄犀....その気持ちよく分かります!」
「紫蛇~!!」
ガシッと抱き合う2人を見ながら、俺は嬉しく思った。燈弥は時折、この世界から切り離されているような近寄りがたさを纏う時がある。なんだか違う世界に思いを馳せているような、寂しそうな雰囲気。
だから、燈弥にいつか伝えたい。燈弥のことを好きでいる人はいっぱいいるんだ!って。寂しがる必要はないんだ!って。
「先輩らは燈弥が大好きなんすね」
「もちろん!だから絶対に妖精を救って、副委員長に見せる!そんで副委員長に『凄いですね』って褒めてもらうんだ」
「そうですね。副委員長によしよししてもらうんです!」
どんだけ燈弥に褒められたいんだよ!?
もしかして妖精を助ける動機ってそれか!?
「よし、いくぞ!!」
「行きましょう!!」
「いや!だから牢の鍵は!?!?」
「「あっ.....」」
顔を見合わせ『忘れてた』という顔をする2人に唸る。しかし、
「――あっ!!そういえばっ」
紫蛇先輩が急にポケットを探り始めたため見守る。そして左ポケットから出てきたのは黒地に金のラインが入ったカードキー。
「兎道と合流する前に同僚から哀嶋副委員長のカードキー受け取っていたんでした。なんでも今日、快楽殺人鬼の牢移動があるとかなんとかと.....」
「「ナイスじゃん!!」」
「( ´-ω- )フッ」
「ってか、そんなこと忘れるなよっ....」
「まぁまぁ、結果カードキーが手に入ったんだからいいじゃん。さ、レッツゴー!」
どうしよう。頼もしいと思っていた気持ちがどんどんなくなる......。
《side end》
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