上 下
152 / 378
第六章 貴方が狩りゲーで重視するのはなんですか?

13

しおりを挟む




ピンポーン......ガチャッ




誰だ。鳴らしといて部屋の主の返事を待たず上がってくる人間は。オートロックは仕事してるの??

まだ少しぼーっとする頭を抑えながらリビングに行くと我が物顔でソファに座るモッチー先生の姿が......教師がそれでいいのか?


「調子はどうだ」

「だいぶ良くなりました。熱も下がりましたし、頭痛もない。ただ、少し頭がぼーっとするくらいですね」

「ならよし」


よしじゃないよ。頭がぼーっとするって言ってるじゃん。


「それでなんのようです?」

「明日で夏休みに入っちまうからここで渡そうと思って」


ああ、結局学校に行かず夏休みに入っちゃうのか。試験からずっと寝込んでたからなぁ。寝込んでいた時の記憶はあんまりないし。でも、なんか身体がしんどかったなぁ。

そうしみじみと寝込んでいた時のことを思い出していると、モッチー先生からなにかを投げ渡された。

見てみると『肆』と書かれた小さなバッジが.....なんだバッジか。


「おい、その『なんだバッジか....』みたいながっかり顔やめろ。弐から肆だぞ??もっと喜べよ」

「わー、凄い嬉しいです(棒)」

「見事な棒読みだな」


ぶっちゃけあれだけやってランク参だったら少し落ち込んでたと思う。手をボロボロにしてまで倒したんだから肆くらい貰わなきゃ割に合わない。

だからこの昇級は妥当な結果だと思ってる。喜びよりも安心の方が大きいかな。


「ちゃんと評価してくれてありがとうございます」

「は?」

「僕達のチームを採点したの先生ですよね」

「な、なんのことを言っているのやら....」

「で、どうですか?クソ高い難易度を目の前でクリアされて」

「めっちゃ感動した」


やっぱ僕達のチーム担当先生じゃん。


「まさに青春だよな!!ってかお前滅茶苦茶強いじゃねぇか!デスクワークだけじゃなくて見回りもできるじゃねぇか!?」


この人はなんでこう、僕を働かせようとするんだ。そんな目をキラキラさせても見回りは絶対にやりたくない。


「僕は生徒会なのでどちらも出来ませんよ」

「チッ」

「今もしかして僕に舌打ちしました????」

「ま、まっさか~。お前の聞き間違いだろ。あーっと、俺これからは職員会議があるんだったー(棒)......じゃあな!!」



そそくさと帰る先生にため息が出た。仮にも教師なんだからもう少し威厳ある姿というものを....モッチー先生にそれを期待するには酷かな?


さて、眠気も冷めてしまったし何をしようか。


「......そうだ、お風呂に入ろう」


唐突に思いついたその案がとても素晴らしいものに思えた。ケーキ君がここに居たなら『まだ完全に治ってないんだから却下だ』と言われるだろうが、彼はここにいない。

よし、そうと決まればお風呂に入る準備をしよう。なーに、ちょっと浸かるだけだから熱も上がらないはずだ。

ということで電話



「もしもしサマ臣君?今暇ですか?」

『​───?』

「いえ、君の人避けの効果を発揮してもらおうと思いまして」

『​───』

「先に大浴場に行っといてください。僕も直ぐに行くので」


通話を切った僕は悠々と部屋を出た。



ーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーーー
ーー




「じゃあ見張りよろしくお願いします」


お風呂セットを脇に挟んだ彼にそう告げる。
すると彼は信じられないモノを見るような目で僕を見てきた。

.....君にそんな目で見られるのは心外だな。


「嘘だろォ!?お前に人の心は無いのか!?」

「言ったでしょう?僕は人の目があるお風呂は嫌いなんですって」

「だってよ、ほら、あ~.......オレは人の道から外れた存在だし良くね?」

「君がそう思おうと僕の中でサマ臣君は人なんですよ。だから一緒には――なんでそんな嬉しそうな顔してるんですか?」


嬉しそうに破顔され一歩後ずさる。急に何だこの人。不気味だな......。


「そうかそうか。お前にとっちゃオレは人か!ならしゃーねぇな!任せとけオレが見張っといてやる」


機嫌が良くなったらしい。
早くお風呂に入りたかった僕は彼の態度をスルーし脱衣所で服を脱ぎ、準備する。


「おぉ!いい身体してんなぁ」

「ジロジロ見るなら金取りますよ?」

「なんだ、金払ったら見せてくれんのか!?」

「......冗談です」

「なんだ冗談か」


この人って時々本気で言ってる?って思うほど天然だよね。いや、天然というより純粋と言うべきか.....。


「あっ、とそうだ。なぁ....お前から見てオレの生き方はどう映る?」


生き方?
また急な質問だなぁ。


「そうですね......はっきりいってどうでもいいです。僕に害がないなら他人がどんな生き様をしていようと口出しする気はありません。干渉する気もありません。――この答えでいいですか?」

「......好きか嫌いかで言ったら?」

「だから何か言うつもりはないんですってば。僕の言葉にどんな影響を受けるか分からないじゃないですか。ここで僕が『嫌いです』と言ってもしサマ臣君の心情に変化があったらどうするのです?僕には責任取れませんよ。だから何も言いません。――いい加減寒いので行きますね。見張りお願いします」



結構時間を使ってしまった。いつここにケーキ君が来て連れ戻されるか分からないのに、こんな悠長に話している時間はないんだよサマ臣君。


ということで任せた!







しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

変態高校生♂〜俺、親友やめます!〜

ゆきみまんじゅう
BL
学校中の男子たちから、俺、狙われちゃいます!? ※この小説は『変態村♂〜俺、やられます!〜』の続編です。 いろいろあって、何とか村から脱出できた翔馬。 しかしまだ問題が残っていた。 その問題を解決しようとした結果、学校中の男子たちに身体を狙われてしまう事に。 果たして翔馬は、無事、平穏を取り戻せるのか? また、恋の行方は如何に。

ブレイブエイト〜異世界八犬伝伝説〜

蒼月丸
ファンタジー
異世界ハルヴァス。そこは平和なファンタジー世界だったが、新たな魔王であるタマズサが出現した事で大混乱に陥ってしまう。 魔王討伐に赴いた勇者一行も、タマズサによって壊滅してしまい、行方不明一名、死者二名、捕虜二名という結果に。このままだとハルヴァスが滅びるのも時間の問題だ。 それから数日後、地球にある後楽園ホールではプロレス大会が開かれていたが、ここにも魔王軍が攻め込んできて多くの客が殺されてしまう事態が起きた。 当然大会は中止。客の生き残りである東零夜は魔王軍に怒りを顕にし、憧れのレスラーである藍原倫子、彼女のパートナーの有原日和と共に、魔王軍がいるハルヴァスへと向かう事を決断したのだった。 八犬士達の意志を継ぐ選ばれし八人が、魔王タマズサとの戦いに挑む! 地球とハルヴァス、二つの世界を行き来するファンタジー作品、開幕! Nolaノベル、PageMeku、ネオページ、なろうにも連載しています!

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話

みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。 数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

市川先生の大人の補習授業

夢咲まゆ
BL
笹野夏樹は運動全般が大嫌い。ついでに、体育教師の市川慶喜のことも嫌いだった。 ある日、体育の成績がふるわないからと、市川に放課後の補習に出るよう言われてしまう。 「苦手なことから逃げるな」と挑発された夏樹は、嫌いな教師のマンツーマンレッスンを受ける羽目になるのだが……。 ◎美麗表紙イラスト:ずーちゃ(@zuchaBC) ※「*」がついている回は性描写が含まれております。

処理中です...