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第六章 貴方が狩りゲーで重視するのはなんですか?

《no side》

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それは突然現れた。




顔は長さ15cmほどのツノがついたマネキン、上半身は光沢のある黒い鎧を纏ったナニカ、下半身は鳥類という、分解したおもちゃをデタラメにくっつけたようなちぐはぐさを持つ見た目。

その姿は異質.....だが何よりもカマキリのような腕部と鋭い鎌が最も異彩を放っている。


燈弥達一行は、それぞれ木々の裏に張り付くように隠れた。


(.....あ、れが僕達の狩るべき貪る影カタラ)


音もなくのそりと優雅に歩みながらも、何かを探すようにしきりに辺りを見渡す仕草に燈弥は震え、無意識に一歩後ずさる。無機物特有の温度のなさに躍動感溢れる下半身という2種の違和感に嫌悪に近い恐怖を抱いたのだ。

カタラ特有の黒い虹彩に横に割れた青の瞳孔がギョロリと燈弥達の隠れる木々に向く。


(これバレてるね。このビー玉が原因かな?)


燈弥は懐から真っ赤なビー玉を取り出し手のひらで握りしめる。


しかしその瞬間


ビュオッ!
――ガキン......!


風を裂く音ののち、何かがぶつかったような鈍い音が響いた。


「嘘でしょ.....????」

「ひぃっ!?何やってんだ!?」

「あは~やると思ったぁ。というか俺のバスターソードじゃん!」



3人がそれぞれ呆れ・怒り・悲しみを顔にやらかした人物へ目を向けた。


「先手必勝だろ」


その人物――戦闘狂は抗議の目を屁でもないようにそう言い捨て、舌なめずりする。


異形へと投擲されたバスターソードは黒い鎧に直撃したが、鎧を砕くこと叶わず地面に音を立て転がる。


パキン......


「ああああああっ!俺のバスターソード!!!」


そして無慈悲にもバスターソードは異形に踏み砕かれた。


闇に浮かぶ青い灯火のような瞳が4人を捉える。


【ガァガァ、ガァァアアア......!】


マネキンの口から聞こえるはカラスの鳴き声。異形が一歩踏み出すと4人は一斉に背を向け駆け出した。


「っ、どうしてくれるんですか!サマ臣君っ」

「かっかっか!一時撤退だろこりゃ。あいつ相当硬ぇぞ」

「~っ、もういいです!それで?わざと硬そうな鎧部分を狙ったのはやはりですか」

「どう見ても''ここが弱点''ですっつってるようなもんだろアレは」


2人が言うアレというのは異形の上半身、黒い鎧の内側から透けるようにうっすら胎動する赤い光のことである。
人間でいう心臓部分。そこを中心に赤い光が視認できたのだ。


「なら何としてでも鎧を砕いて穿つらぬかなければいけませんねっ――危ない!!」

「ぅへっ」


話しながらも後ろを気にしていた燈弥は異形が脚に力を入れたのを目視し、咄嗟に仁美を自身の方へと引っ張り地面に転がる。


刹那、

仁美が走っていた道を黒い影が突っ切り、数メートル先の木をなぎ倒した。


「なんだアレなんだアレなんだアレなんだアレなんだアレなんだアレっ!!!!一条さんマジありがとうございます一条さんが居なけりゃ俺今頃死んで――」

「落ち着いてください財前君。そしてどいてください」

「うっ、ぁ、え?は?」


地面に転がった末、燈弥の上にのしかかった仁美は混乱しているのか中々上から退こうとしない。

そこへ先を走っていたはずの雅臣が現れ、動こうとしない仁美の首根っこを掴むとゴミをほかるように投げ捨てた。


「ありがとうございます。......これは逃げるの無理ゲーですね」

「あの脚ってもしかしてダチョウ~?――時速60kmで走る鳥じゃん。持久力もあるだろうし、あれから逃げるのは無理だよ」


いつの間にか戻ってきていたメイルも燈弥と同じように断言する。


「誰か作戦ある人います?」

「ない。というかあんなカタラ見たことねぇぞ。獣型・無機物型・人型、上が無機物で下が獣で胴が....ありゃなんだ?人型か?」

「俺も作戦ないかなぁ。異能なしであれと戦うとかマジ冗談でしょ?って思ってる。......テキ先に初めて殺意湧いたわ~」

「俺も作戦とかない。っていうか殺される未来しか見えねぇ。テキ先はマジ死ね」



口々に疑問や文句を言うが、異形が王者のごとき歩みで4人の前に立ち塞がるとみなが口を噤んだ。


【ガァ.....】


4人は警戒の鳴き声をあげる異形の一挙一動を見逃すまいと神経を尖らせる。異能者といっても所詮は人間。奴の脚力から放たれる蹴りは彼らを簡単に死に至らしめるだろう。目を離すなどできるはずがない。

異形は動かない4人に飽きたのか、暫くじっと見つめると彼らの目の前をゆったりとウロウロし始めた。しかしウロウロしながらもその瞳はしっかり4人を捉えている。


「.....本当に作戦ないんです?」

「そういうイッチーはどうなのさ」

「僕?あるにはありますけど、実行すれば萩野君の命を捨てることになりますね」

「よし、その作戦でいこうぜ」

「賛成」

「ちょっとーー!?」


小さな声で話し合い、結果燈弥の作戦が採用された。作戦内容をろくに聞いてもないのに賛成する2人に燈弥は余裕あるなと思いながら、おもむろに口を開く。


「財前君、拾った武器は合計でいくつありますか?」

「えっと.....双剣、短剣、短剣、片手剣、片手剣、片手剣の7本だ」

「片手剣を萩野君に渡して下さい」

「了解。ほらよ受けと――」


【ガァァァァァァァ!!!】


片手剣をメイルに渡そうとした仁美だが、その行動に異形が叫んだ。敵対行動と思ったのか、闘牛のように片足で地面を引っかき始める。


「サマ臣君っ、時間稼ぎお願いします!!」


攻撃が来ると察した燈弥は赤いビー玉を雅臣に投げるとそう指示する。
ビー玉を咄嗟に受けとった雅臣はというと、ニヤリ笑って異形に嘲るよう言った。


「来いよ」

【ギィイイヤァァァァァァ!!!】



雅臣の命をかけた時間稼ぎが始まる。







《side   end》



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