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第六章 貴方が狩りゲーで重視するのはなんですか?

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昇級試験当日.....


コの字型に建てられた校舎のその中心、グラウンドに僕達1年生は集まっていた。


「いや~すっごい楽しみだねぇ♪」

「かァー!暴れだしてぇなァァァ!!」


チームポテトサラダのメンバーの内、萩野君とサマ臣君が僕のそばにいる。
そしてサマ臣君がいるせいか、辺り一帯人がいない。不自然な空間が僕達の周りにあるのだ。

.....この取り残された感、辛い。



「おい燈弥!なにシケたツラしてんだ。お前も暴れてぇだろ?」

「やめてください。一緒にしないで欲しいです」


そう言ったらキョトン顔された。....解せぬ。
あと、肩に腕かけるのやめて貰っていいかな?なんだか周りの視線が気になる。


「チームポテトサラダだってwwウケるww今気づいたけど、俺らのチーム名変じゃね~?」

「萩野君なんだかテンションおかしいですね?どうしました」

「いや、なーんかすっごいドキドキしてるっていうか、ワクワクしてるっていうか.....落ち着かないんだよねぇ」

「奇遇だなオレもだ」


2人ともテンションたっか.....。ちょっとこの2人の世話を1人でするのはキツい。
そういえばまだかな?あと2人のメンバー。

えーっと、財前 仁美君と藤井 瑛真君。

この隔離された空間に足を踏み入れるのは勇気いるだろうなぁ。誰かこっちに来たそうにしてる人いない?僕、迎えに行くよ?


「――ぁ」


1人。こっちに向かってくる生徒が居た。
思わずわしゃわしゃと撫でたくなるような茶色いツンツン頭に、一重のツリ目。
ポケットに手を入れ猫背で歩いてくる姿はまさに不良だった。


「君は....?」

「ウッス。財前っす。よ、よろしくおなしゃす!」

「お、おなしゃす?」


ガラの悪そうな子だけど、礼儀正しいな。
あと....なんかキラキラした目で見つめられているような気がするのは気のせい?


「えっと、酷いチームメンバーかもしれませんが一緒に頑張りましょう」

「燈弥!連絡先交換しようぜ。食堂んとき交換しようと思ってたんだが忘れちまってよ」

「あっ、俺も~。副会長だけとかズルい」


君らさぁ、挨拶くらい出来ないの?
こんな綺麗に無視されたら彼が可哀想じゃないか。
僕は群がる2人を小突き、小さく「挨拶」と言う。


「挨拶?――興味が向いたらな」

「彼にキョーミないから~」


ダメだねコレ。僕はスマホで連絡先を開くとサマ臣君に手渡し、財前君を連れて少しその場から離れた。


「すみません、感じ悪い人達で」

「いや、全然大丈夫だ....っす」

「普通に喋ってくれればいいですよ。同じ1年ですし」

「.....わかった」


少し安心したように彼は笑みを浮かべた。どうやら緊張していたらしい。まぁメンバーを思えばそれも仕方ないことだと思うけど。


「それにしても、君も不運ですね。こんなチームになって」

「俺はそうは思ってねぇけど。だって、一条さんがいれば安全じゃん?あの戦闘狂に懐かれてんし」


尊敬するような目で見られて「うっ」となる。久しぶりに好意的な視線を向けられむず痒く感じる。だけどあんまり嬉しくないなぁその言葉。


「懐かれてるかは置いといて.....君にちょっかいかけないよう注意しときますね」

「あざっす!――ところで風紀委員長と.....」



『昇級試験始めんぞーーーーー!!!』



財前君の言葉を遮るように大きな声が響いた。
前方を見ればモッチー先生がマイク片手にダルそうに立っている。

今日も素敵なアロハシャツですね、先生。


『昇級試験の内容は狩りゲー!!チームごとに森に入り貪る影カタラを狩ってもらう。以上!!じゃ、始めんぞー。まずはチームイカ焼き(バター醤油)、チームカルパス、チーム枝豆、チームビーフジャーキー、チーム――』



え....説明それだけ?
呼ばれてそれぞれ先生達に連れられるおつまみ達。15チームほど呼ばれた頃だろうか?モッチー先生が先導し森にへと15チームをいざなう。

森に消えていった彼ら。そしてグラウンドに残された僕達。周りを見てみれば不安そうに森を見つめる生徒がチラホラいる。



さて、どれくらいで呼ばれたチームが帰ってくるのやら……。



ーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーーーー
ーーー
ーー




「....なんというか不気味ですね」


ポツリ呟く。


「不気味?不安じゃなくてか?」


僕の呟きを拾った財前君は首を傾げてそう聞いてきた。


「だって....凄い静かじゃないですか。普通なら異能による爆発や斬撃で木が倒れたり、轟音が轟いていたりと、森が騒がしくなるはずです。なのに何も聞こえない。僕は不安より不気味さを覚えますね」

「......た、しかに。すげぇ静かだ」

「モッチー先生は狩りゲーと言いました。なのにこの静かさは異常です」

「.....あっ、でもまだ接敵してねぇだけかも」

「かれこれ30分経ちま――」


その時、悲鳴が聞こえたような気がした。
言いかけた言葉を切り上げ、急いで森に近寄り耳を澄ませる。


『ぎゃぁぁぁぁぁぁああああああ!!』

『あのっ、クソ教師!!』

『無理無理無理無理無理無理~っっ!!』

『死ねっ、テキ先~~~!!!』

『無理ゲーだろこんなの!?!?』


木霊するように声が小さく聞こえる。


『テキ先っ、覚えてろテメェェェェェ!!!』


そして一際大きく聞こえた聞き慣れた声。
あ~.....ケーキ君。そういえばケーキ君・文ちゃん・瀧ちゃんはチーム枝豆だったね。

ケーキ君があんな大声出すなんて相当だ、この試験。ヤバい。


「棄権ってできませんかね.....」

「させるわけねぇだろ」

「させないよ~!」

「それは困る....っす」


いつの間にかそばに寄ってきたサマ臣君に肩をがっしり組まれ、萩野君には腕を組まれた。

ぐぅ、捕まった。


「いや、だって聞きました?あの悲鳴というか怨嗟というか....聞くに堪えない叫びを。絶対にろくでもない試験内容ですよ?」

「楽しみだろ」

「楽しみだよね」

「一条さんには悪いけど、ちょっとワクワクしてる」

「財前君の裏切り者」


サマ臣君と萩野君はわかっていたけど、君もか。


『次のチーム呼ぶぞ~。チーム砂肝、チームイカ納豆、チーム鰻の肝、チーム柿ピー、チーム――』


またチームが呼ばれるが僕達は呼ばれなかった。
だけど砂肝と柿ピー.....兎君と宮野君のチームは呼ばれたようで、姿は見えないが武運を祈っておこうと思う。


ちなみにだが、まだ最初に森に入った組は戻ってきてない。


......恐ろしすぎる。







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