上 下
131 / 378
幕間

《side 望月 俊樹》

しおりを挟む





そいつは見た目と性格が恐ろしく乖離した生徒だった。
重そうな黒髪に『それどこで買ったんだよ?』と言いたくなる瓶底メガネ。身長はまぁまぁ高いがどこかひょろっとしたイメージを抱かせる雰囲気。どこからどう見ても陰キャだ。控えめに笑う口元とか気弱さを更に掻き立たせている。

だが話してみるとどうだ。

見た目とはあわないハキハキとした喋りで、物事をはっきり言う奴だった。

しかも案外腹黒いし、驚く程優秀、そしてちょ~怖い。

全然陰キャじゃねーじゃん。お前は陽キャだよ。その中でもクラス委員長とか任される皆から頼られる存在だろ。なんでそんな格好してるんだ。

訳ありか?

....まぁこの学園では訳ありじゃない生徒の方が少ないからコイツが訳ありでもおかしくはないが。


「へぇ~モッチー先生って人見知りだったんですね」

「おう」

「僕と話しているのを見る限り全然そんなふうに思えませんけど」

「なんかお前は話しやすんだよな~」


話していてストレス感じねぇし、むしろ楽しくすら感じる。人見知りする俺が気軽に声を掛けやすいなんて思うほどだ。


ただ欠点があるとすれば――


「モッチー先生のざぁこ、ざぁこ♡」

「ぐぎぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」


この生意気さ!!!!
俺はお前より歳上だぞ!?もっと敬えや!
しかも俺の何千時間つぎ込んだゲームで勝つってどういうことだっ!!!


悔しい、悔しいっ!


なんかクズの友人に負けた時より悔しい....!
ザコ呼びなんかしやがって!


去っていく後ろ姿から目が離せなかった。


「このままで終わらせられねぇな」


俺の数千時間のためにも、
一条 燈弥にぎゃふんと言わせなければ

スマホの電話帳をスクロールする。
ん?スクロールするほど友人が多いのかって?
.....人見知りだがある程度の友人はいる。友人というよりビジネスで登録してる奴の方が多いけどな。


今から電話するのは唯一のゲーム友達でありクズと名高い男だ。


「お、もしもし?」

『――――』

「まぁそんなこと言うなよ。ちょっと頼みたいことがあってよ」

『―――?』

「もうすぐ昇級試験だろ?そこで少し、すこ~しやりたい事があってな」

『―――』

「端的に言う。お前の家の力を借りたい。実験体くれねーか?昇級試験で放つ」


俺がそう言うとスマホの向こう側でくつくつと笑う声が聞こえた。この様子だと乗ってくれそうだ。


『――――』

「急にどうしたかったて?――俺も遊びたいお年頃なんだよ。まぁそのせいで生徒に消えない傷を負わせることになるかもしれねぇが」

『―――!!!――!?!?』

「うるさっ!?」


いきなりなキレだした友人に慌ててスマホを遠ざける。今こいつがそばにいなくて良かったと心底思う。そばにいたら俺はきっと半殺しにされていただろうな。

ったく、こいつと話すのは神経使うから疲れんだよ。今の会話でどこにキレる要素があったんだ?
わけわかんねぇ。


「落ち着いたら資料送ってくれ。頼むな?」


返事も聞かずブチリと通話を切った。ちなみにこの行為も相手がそばにいないからできることだ。
......近くにいたら通話もクソもねぇけど。


「さて、と」


昇級試験の資料をまとめて上に提出しねぇと。
はぁ.....いつもの俺なら他の教師にこんなもの放り投げていたのに。一条と出会う前の俺に見せてやりたいぜ。こんな働く俺を。

適当、ものぐさ、人任せの俺が
時間に追われて仕事をするなんて


「ぷはっwwww」


ああ笑える。
なんでこんな嫌いだった仕事が楽しいのか。


『ざぁこ♡』


「ぷくくwそういうことか。なんで嫌いな仕事がこんな楽しいかわかった」


一条 燈弥のせいだ。


「ゲームで俺を嘲笑うように『ざこ』と言ったあいつの顔が忘れられねぇんだ。あの顔を悔しみで歪めさせたくてしょうがねぇんだ」


だから楽しいんだ。
どういうルールで昇級試験を進めるのか、どういう配置にするのか、どう上を説得するのか。

全部、全部全部!
一条の悔しみに歪んだ顔を見られると思うとクソみたいに面倒臭いことも全然面倒臭くねぇ!


「お前と俺は生徒と教師であり、ゲーム仲間であり、友人だ。出会って数ヶ月.....まだ付き合いが短いから俺の事を理解してないのはしょうがねぇことだと思う」


そう、しょうがないことだ。


「悪いな一条。俺はゲームに関してはプライド高ぇし、負けず嫌いなんだよ」


『ざぁこ♡』


頭の中でリピートされるその言葉に頬が吊り上がる。


「だから......もう1戦といこうや。お前が狩るか、狩られるか」


舞台は昇級試験


「お前のためのゲームだ....」


ちょいとばかし命懸けになるが許せ












しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

変態高校生♂〜俺、親友やめます!〜

ゆきみまんじゅう
BL
学校中の男子たちから、俺、狙われちゃいます!? ※この小説は『変態村♂〜俺、やられます!〜』の続編です。 いろいろあって、何とか村から脱出できた翔馬。 しかしまだ問題が残っていた。 その問題を解決しようとした結果、学校中の男子たちに身体を狙われてしまう事に。 果たして翔馬は、無事、平穏を取り戻せるのか? また、恋の行方は如何に。

ブレイブエイト〜異世界八犬伝伝説〜

蒼月丸
ファンタジー
異世界ハルヴァス。そこは平和なファンタジー世界だったが、新たな魔王であるタマズサが出現した事で大混乱に陥ってしまう。 魔王討伐に赴いた勇者一行も、タマズサによって壊滅してしまい、行方不明一名、死者二名、捕虜二名という結果に。このままだとハルヴァスが滅びるのも時間の問題だ。 それから数日後、地球にある後楽園ホールではプロレス大会が開かれていたが、ここにも魔王軍が攻め込んできて多くの客が殺されてしまう事態が起きた。 当然大会は中止。客の生き残りである東零夜は魔王軍に怒りを顕にし、憧れのレスラーである藍原倫子、彼女のパートナーの有原日和と共に、魔王軍がいるハルヴァスへと向かう事を決断したのだった。 八犬士達の意志を継ぐ選ばれし八人が、魔王タマズサとの戦いに挑む! 地球とハルヴァス、二つの世界を行き来するファンタジー作品、開幕! Nolaノベル、PageMeku、ネオページ、なろうにも連載しています!

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話

みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。 数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

市川先生の大人の補習授業

夢咲まゆ
BL
笹野夏樹は運動全般が大嫌い。ついでに、体育教師の市川慶喜のことも嫌いだった。 ある日、体育の成績がふるわないからと、市川に放課後の補習に出るよう言われてしまう。 「苦手なことから逃げるな」と挑発された夏樹は、嫌いな教師のマンツーマンレッスンを受ける羽目になるのだが……。 ◎美麗表紙イラスト:ずーちゃ(@zuchaBC) ※「*」がついている回は性描写が含まれております。

処理中です...