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第五章 面倒事はいつも突然やってくる
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しおりを挟むサマ臣君を先に行かせた結果
――一応全校集会には間に合った。
だけど、まさかあんな異様な光景を目にするとは思わなんだ......。
体育館に着いた僕が目にしたのは全校生徒の目の前でストリップするサマ臣君と、固唾を飲んでそれを凝視する生徒達というなんともカオスなもの。
「誰がストリップしろと言ったんですか....」
と、思わずそんな言葉がこぼれ落ちてしまったほど呆れた。
教師陣も面白そうに傍観姿勢だし、生徒会(会長と骨喰君)もまさかの行動にどうすればいいのか迷ってたっぽいし.....結局僕が対処する羽目に。
なんかなぁ.....僕が頼んだのに僕が尻拭いするとかやってくれるね!サマ臣君!!!!本当にっ!
生徒たちの目を覚ますために舞台に上がり自己紹介をしたがみんなの記憶に僕が残ったかは怪しい。
ま、いいや一応やることはやったんだから。
今は生徒達を教室に返さなければ。委員長もどこか様子がおかしいようだし。
「哀嶋君」
「一条さんどうします?」
「とりあえず端の生徒の胸ぐら掴んで教室戻れって言えばみんな動きますかね?」
「.....あなたって結構野蛮な人だったんですね。ちょっと距離置きましょうか」
「やですねぇ。冗談ですよ。で、いい案あります?」
「本当は委員長が殺気を飛ばしながら戻れと言えば万事解決なんですけど」
バ ァ ァ ァ ァ ン !!!!
その時、凄まじい音と揺れが体育館を襲った。
興奮で浮ついた雰囲気が一瞬で恐怖に凍る。
「さっさと教室に戻れ――懲罰棟にぶち込まれてぇのか?」
まさに鶴の一声。
体育館は数秒にしてもぬけの殻となった。
「「さすが委員長」」
ヒビ割れた壁を背に仁王立ちする委員長を眺めながら哀嶋君と同じことを呟く。
「僕達も行きましょうか」
「いや、あなたはほら....あちらにいる方々へ説明しなきゃいけないんじゃないですか?委員長がヒビ入れた壁についてとか、戦闘狂の行動についてとか」
あちらと指さされ顔を向けると、ニコニコ顔の会長に疲れた顔の骨喰君、ニタニタと癇に障る笑みを浮かべる萩野君、あとは初めましての書記君がこちらを見ていた。
「えぇ??僕ですか?ヒビは僕関係ないですし、戦闘狂の行動とか僕が知るわけないじゃないですか」
「委員長はこちらで何とかしときますから」
「見事なスルー。この薄情者め」
「なんとでも」
「納得いきませんね。――哀嶋君が今隠し持ってるカメラで手を打ちましょう。寄越しなさい」
僕は知っている。君が鼻血を垂らしながらサマ臣君の裸体を一心不乱にカメラに収めていたことを。
さぁ寄越せ
「っ、あなたの業務3日分でどうです?」
「行ってきます」
僕の業務を3日分代わりにやってくれるらしい。つまり僕は3日間の休みを獲得したわけだ。
それは行かない訳にはいかないよね!
いざゆかん生徒会達の元へ。
でもなぁ.....ついこないだ会長と話すなって委員長に言われたんだけど。うん、委員長の目があるところで彼らに話しかけるのは拙いな。
ということで骨喰君に連絡を。
メールで『生徒会室で今回のことについて話し合いましょう。お昼伺います』と送る。
これでよし。
送信し終わった時、スマホを見る視界に影が被る。画面から顔を上げると委員長がスマホを覗き込むように上半身を乗り出していたので、咄嗟に電源を切った。
内容見られてないよね?
「一条行くぞ」
「.....はいはい、わかりました。って、哀嶋君は?」
「哀嶋ならカメラ持っていそいそとどっか行ったぞ」
あの人なにが『委員長はこちらで何とかしときますから』だ。何とかなってないじゃないか。放置かよっ
.....結局僕か!
「.....なぁ、一条は昼どうすんだ?」
いきなり昼の話。やっぱりさっきのメール見られたのかな?
顔が強ばる。
「僕がお弁当なの知ってるでしょう」
「そういや俺様達は一緒に食ったことねぇよな昼」
「土日部屋で一緒に食べてるじゃないですか」
「風紀室で一緒に食おうぜ。――いや、命令する。風紀で昼を食え」
あぁ、これバレてるね。
僕が生徒会室行くこと。
いつの間にか委員長と二人っきりになった体育館。もう夏に入ったというのに随分と寒く感じる。先程まで熱気と夏の暑さで軍服を脱ぎたいくらいだったのに。
.....それだけ委員長からの威圧感が冷たく重いものであるということか。
「委員長、昼くらい自由にさせてください。僕にだって用事があるんです」
「その用事が生徒会室に行くことなんだろ?行くな、行くんじゃねぇ」
「もう約束してしまったので。それに僕は委員長の会長に関わるなという言いつけに了承してません」
「......なら着いてく」
「話が逸れそうなのでダメです。絶対会長と喧嘩するじゃないですか」
「大人しくしてりゃいいんだろ?着いてく」
「なんでそうまでして僕が会長に会うことを嫌うのですか?他の風紀メンバーには僕みたいに行動の制限してませんよね?」
委員長の表情が無機質な人形のように凍る。見下ろすその赤い瞳は僕を見ているようで見ていないように思えた。
「なんで?『なんで』だと?だってそりゃ――アイツばかり独り占めしてずるいじゃねぇか。いつもいつもいつもいつもっ我が物顔でお前にくっついて!それだけじゃなく俺が居ない時はお前に俺の悪口を――」
「緋賀 永利!!!」
「っ、」
「君は誰の話をしているのですか?一条燈弥は誰にも独り占めされたことありませんし、誰かに我が物顔でくっつかれたこともありませんし、君の悪口を聞かされたこともありません。もう一度聞きます。君は誰の話をしているのですか?」
赤い瞳が大きく見開かれた。
口をわななかせ、怯えるように、恐れるように彼は僕から離れようと一歩後ずさる。
させない。
すぐさま距離を詰め彼の大きな手を掴む。
「今君の前に居るのは一条 燈弥です」
「っあぁ、そ....うだ。お前は一条 燈弥、だ」
「えぇ、そうです。僕は一条 燈弥です。だから僕は生徒会室に行きます。会長にも会います」
だって、君のその異常な執着心は僕に――一条燈弥に向けているものではないから。
「委員長行きましょうか。あ、委員長もたまには授業受けたらどうです?いくら風紀委員長だからって毎日仕事漬けじゃ全然楽しくないでしょう。勉強が楽しいというわけではないですが、クラスの皆さんと交流してみてもいいんじゃないですか?」
「......」
返事がないのをいいことに一方的に話してかけて委員長の手を引いていく。
彼の表情は見ていない。
......哀嶋くぅん。君が委員長を放置したせいで委員長のなにかに触れてしまったのですけど?
これは業務3日分じゃ割に合わないぞ
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