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第五章 面倒事はいつも突然やってくる

《side ある生徒Z》①

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「全校集会たり~」

「そうか?僕は生徒会や風紀委員長の顔が見れるから結構好きなんだが」


そんな友人の言葉を鼻で笑う。


「αの顔なんか見てどうすんだ」

「お前.....恋人がαに寝盗られたのまだ根に持ってるのか?」

「あったりまえだろ!猛アタックしてΩの可愛い子とせっかく恋人になれたのにっ。.....αのフェロモンでぐずぐずに蕩けてる姿を見てみろ。トラウマもんだぞ」


部屋のドアを開けたらリビングのソファでもつれあってる可愛い恋人と知らない男。俺が入ってきたことすら気づかず聞いた事ない甘い声をあげる恋人の姿の衝撃ときたら想像を絶するものだった。

主に下半身がヤバくなった。その後急いでトイレに駆け込み、恋人の喘ぎ声を聞きながら抜くという地獄の行為で涙がホロリ.....。なんで恋人である俺がトイレで抜かなきゃならないんだ馬鹿野郎!


「βはつれぇなぁ。俺はαに産まれたかったぜ」

「でもαは嫌いなんだろ?」

「許すまじ」

「会長の前でも同じこと言えるのか?」

「ばっか!会長は例外だろ!!っていうか生徒会は会計以外お綺麗じゃねぇか。爛れた話聞いたことないぞ」

「僕は会長のそういう話聞いたことあるけどな」

「マジ!?」

「あ、集会始まる。その話は後でだ」


なんだそれ!めっちゃ気になるだろ!
会長がセフレ持ち!?嘘だろ??
俺のイメージ的にそういうのとはかけ離れている人だぞ?

副会長は見るからにお堅い感じで、性関係もガードが硬そう。

書記は会長しか目に入ってねぇし。

ツギハギの会計は見るからに爛れてんなぁと思ってたら本当に爛れてんし。

風紀委員長は.....どうなんだろ?恋愛には興味無さそうだけど程よく発散してそうだな。


あーーーー気になる!!


「はぁ、顔面偏差値高すぎいと尊し」

「何言ってんだお前」

「放送委員長可愛い。さらに語尾がにゃで尊さと萌えが限界突破!!」

「.....」


尊いってなんだよ。萌えってなんだよ。
よくわかんねぇー。


「ふぁ~.....部活表彰とかはよ終われー」

「なぁ知ってるか?今日風紀副委員長の任命式あるって話」


急に落ち着くなよお前。さっきまで萌え~やら尊っ!って言ってたヤツがすんとなった顔で話すなよ。心臓に悪いわ。


「.....副委員長?それは姫さんだろ。ずっと前にやらなかったか?」

「そっちじゃない。お前も聞いたことあるだろ?風紀委員長のお気に入りの――」

「あぁ、あの変なメガネの」


すっげぇ優秀っていうのはよく耳にする。なんでも最近ある事件を解決したとかしてないとか。
そうか、今噂の変なメガネの任命式か。
いや、待て。


「.....前の全校集会でやっただろ」

「結局副委員長は体調不良で欠席した。お前寝てたな?」

「だって興味ねぇもん」

「僕も。平凡には興味無い」

「.....」


お前こそ平凡顔のくせに何様だ。


「ん?でも見当たらないな変なメガネの副委員長」

「....確かに」


舞台に上がる人間は予め壁際に控えていて、名前を呼ばれたら舞台への階段を登る。今は部活表彰中だから任命式は最後。なら壁際に並ぶ最後尾が副委員長というわけになるが.....おかしいな。噂の変なメガネをかけた生徒は並んでいないぞ?

っていうかあそこにいるのって――



「っ」


犯罪者が居た。いや違う!犯罪者のように凶悪な笑みを浮かべた風紀委員長が居た!!
部活表彰の列で隠れていて見えなかったが、風紀委員長がっ!

こえぇぇぇぇ!!思わず下向いちまった!
なんだあの顔っ、なんかゾワゾワっと背筋が.....!


この恐怖を共有しようと隣に座る友人をつつくが、今いい所なんだと言わんばかりの冷たい目を向けられ諦める。
なんだよお前の好物イケメンが居んのに。

もう俺は舞台上より風紀委員長が気になって仕方ない。あの人は暴君やら独裁者やら言われるほど理不尽な存在だ。だが同じ男として見た目やその強さに憧れない奴はいないだろう。

かく言う俺も委員長に憧れている。

俺も1度は『俺様がルールだ。俺様に従え』なんて言ってみたい。特にDQNに。あいつらは平和主義者の俺の敵だからな。

そんな風紀委員長だが見かける度に顰めっ面やムスッとした不機嫌顔をしている。ぶっちゃけその顔しかできないんじゃないかと思うくらいに他の顔を目撃したことがない。友人に聞けば''違反者には見下すような嘲りを向ける''と言っていたが俺はお目にかかったことがない。

......ついさっき見たあの凶悪な笑みは初めて見たけど。あれは誰に向けた笑みなのだろうか。

やっぱ違反者か?


そして俺はまた風紀委員長をチラ見する。
怖いもの見たさと言うやつだ。


「.....??」


見てみると委員長は腕を組み下を向いていた。寝ているのか?と思ったが、よく見ると違う。委員長はどこか虚ろな瞳で自身の足元を見ていたのだ。

ドキッ

なんだか見てはいけないものを見たような気がした。委員長には到底似合わない横顔

虚ろだなんて....委員長から1番遠い言葉だろ!

慌てて目を逸らした俺は下を向き、深呼吸する。
なんで深呼吸したかって?
俺自身わからん。ただなんか――


ガスッ!!


「ぶほっ!?!?」


横からの急な衝撃に変な声が出た。








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