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第五章 面倒事はいつも突然やってくる
《side 鎖真那 雅臣》 衝動的に
しおりを挟む《side 鎖真那 雅臣》
オレは弱者が嫌いだ。
暴力から逃げ、自身を害する者に怯え蹲り、恐怖に立ち向かわないような人間......弱者
こういう奴らには反吐が出る。逃げて何になる?怯えて何になる?屈して何になる?
蹲っててもオレは容赦なく拳をテメェにふるうぞ?
――なにもしないあいつらが大っ嫌いだ。
......まぁ血に酔ったとき以外は弱者に暴力をふるっても後味が悪くなるだけだから、いつも無視するようにしているけどな。
関わるだけ時間の無駄と思っている。
それに比べて強者はいい!
オレから逃げず、屈せず、立ち向かう奴ら。
兎道とかいうチビがまさにソレだ。今のオレのお気に入り。
こういう奴ともっと知り合いたい。強者はオレの世界に彩をつけてくれるから。クソみたいな日常に彩りをくれる存在は多ければ多いほど好ましい!
だから交流会でオレを嵌めた野郎は絶対に見つけねぇと。
「.....なにか御用ですか?」
オレがどうしても会いたかった人間、
茂の''オトモダチ''である一条 燈弥を見た感想
それは『弱そうで強そう』だった。
意味わかんねぇだろ?オレも自分が何故そう感じたのか言葉に出来ない。ただ、漠然とそう思ったんだ。
後ろから見たコイツはピンと背筋を伸ばし凛と突っ立っていた。
その立ち姿がオレの琴線に触れ、衝動的に後ろから奇襲。
だが、呆気なく躱される。
『強い』
たった1度躱されただけでオレの中の一条 燈弥という人間は強者に位置付けられた。
しかし、面と向かうとその強者という位置付けがガラガラと音を立て崩れる。
変な眼鏡に重そうな黒い前髪。そしてどこからどう見ても『強い』とは反対に位置する『弱い』と感じさせる雰囲気。
なんだコイツは
オレの本能は――
コイツの後ろ姿を見て強者と判断する
コイツの顔と雰囲気を見て弱者と判断する
こいつぁ厄介。だがおもしれぇ。
目の前の男の本性を引きずり出したくなった。
人は死を感じたときその人間の本性が現れると言われている。この男はどうなるのか。お気に入りのチビのように立ち向かってくるのか?それともただの弱者なのか?
コイツの本性を知りたい。
そのためにも1対1の闘いに持ち込まねぇとな....そう考えながら一条と話していると、
チャンスが向こうから転がってきた。
1対1の闘いをするために、まず鬼ごっこで一条を地面に引き倒せばいいらしい。
オレは自身の足の速さに自信がある。見るからに運動ができなさそうな雰囲気を出す一条に負けるビジョンが湧かねぇ。
「――僕が走り出して10秒後に始めてください」
それだけ言って廊下を駆けていく一条。その小さくなる背中に身体中の血が沸き立った。今まで感じたことない感覚に、今にでも飛び出したい衝動に襲われる。
「1、2――」
おかしい。暴力が絡まないただの鬼ごっこでここまで興奮するなんてオレはどうかしちまったのか?これは本気出して1対1勝負するための前座だというのに。
「5、6――」
10秒が途方もないほど待ち遠しく、期待で胸がはち切れそうだ。
「――9、10」
そして弾けるように地面を蹴った。
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