124 / 382
第五章 面倒事はいつも突然やってくる
《side 鎖真那 雅臣》 衝動的に
しおりを挟む《side 鎖真那 雅臣》
オレは弱者が嫌いだ。
暴力から逃げ、自身を害する者に怯え蹲り、恐怖に立ち向かわないような人間......弱者
こういう奴らには反吐が出る。逃げて何になる?怯えて何になる?屈して何になる?
蹲っててもオレは容赦なく拳をテメェにふるうぞ?
――なにもしないあいつらが大っ嫌いだ。
......まぁ血に酔ったとき以外は弱者に暴力をふるっても後味が悪くなるだけだから、いつも無視するようにしているけどな。
関わるだけ時間の無駄と思っている。
それに比べて強者はいい!
オレから逃げず、屈せず、立ち向かう奴ら。
兎道とかいうチビがまさにソレだ。今のオレのお気に入り。
こういう奴ともっと知り合いたい。強者はオレの世界に彩をつけてくれるから。クソみたいな日常に彩りをくれる存在は多ければ多いほど好ましい!
だから交流会でオレを嵌めた野郎は絶対に見つけねぇと。
「.....なにか御用ですか?」
オレがどうしても会いたかった人間、
茂の''オトモダチ''である一条 燈弥を見た感想
それは『弱そうで強そう』だった。
意味わかんねぇだろ?オレも自分が何故そう感じたのか言葉に出来ない。ただ、漠然とそう思ったんだ。
後ろから見たコイツはピンと背筋を伸ばし凛と突っ立っていた。
その立ち姿がオレの琴線に触れ、衝動的に後ろから奇襲。
だが、呆気なく躱される。
『強い』
たった1度躱されただけでオレの中の一条 燈弥という人間は強者に位置付けられた。
しかし、面と向かうとその強者という位置付けがガラガラと音を立て崩れる。
変な眼鏡に重そうな黒い前髪。そしてどこからどう見ても『強い』とは反対に位置する『弱い』と感じさせる雰囲気。
なんだコイツは
オレの本能は――
コイツの後ろ姿を見て強者と判断する
コイツの顔と雰囲気を見て弱者と判断する
こいつぁ厄介。だがおもしれぇ。
目の前の男の本性を引きずり出したくなった。
人は死を感じたときその人間の本性が現れると言われている。この男はどうなるのか。お気に入りのチビのように立ち向かってくるのか?それともただの弱者なのか?
コイツの本性を知りたい。
そのためにも1対1の闘いに持ち込まねぇとな....そう考えながら一条と話していると、
チャンスが向こうから転がってきた。
1対1の闘いをするために、まず鬼ごっこで一条を地面に引き倒せばいいらしい。
オレは自身の足の速さに自信がある。見るからに運動ができなさそうな雰囲気を出す一条に負けるビジョンが湧かねぇ。
「――僕が走り出して10秒後に始めてください」
それだけ言って廊下を駆けていく一条。その小さくなる背中に身体中の血が沸き立った。今まで感じたことない感覚に、今にでも飛び出したい衝動に襲われる。
「1、2――」
おかしい。暴力が絡まないただの鬼ごっこでここまで興奮するなんてオレはどうかしちまったのか?これは本気出して1対1勝負するための前座だというのに。
「5、6――」
10秒が途方もないほど待ち遠しく、期待で胸がはち切れそうだ。
「――9、10」
そして弾けるように地面を蹴った。
52
お気に入りに追加
430
あなたにおすすめの小説

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話
みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。
数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。



ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる