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第五章 面倒事はいつも突然やってくる

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その後....定例会議後の委員長の様子はとてもおかしかった。
ずっと心在らず状態で、委員が話しかけても聞いているのか聞いていないのか判断できない返事を返してくる。
哀嶋君もこんなのは初めてだと言っていた。

そして何よりおかしいのは、僕が話しかけると――


「委員長、この書類追加です。あ、それで最後なので頑張ってください」

「.......」

「あの、聞いてます?」

「.......」


この態度だ。目はちゃんと合わせてくれるのだが、うんともすんとも言わない。心在らずって感じはなくなり、こう.....拗ねているような、怒っているような、悲しんでいるような、なんとも表現し難い顔を見せてくる。

委員長が何も言わないから無言で見つめ合うことになり、最後は僕が先に目を逸らすという......。

もー、何かあるならはっきり言って欲しい。


「お先にあがりますね」


だけどそんな委員長の相手をしてあげるほど僕は優しくないので、結局は自分の仕事をさっさとやって自室に帰ることにした。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



「うーん、ユーザー名かぁ.....何にしよう。適当でいっか」


ただ今お風呂を済まして、モッチー先生から貰ったゲーム機の設定を行っている。
明日の先生との時間を少しでも短くするためだ。
.....その為にも明日やるであろうソフトの予習でもしとこうかな。

えーとなになに?
......君も武器を駆使してモンスターを狩ろう!
ってパッケージに書かれてる。
えぇ?狩りゲーかこれ。

というか今ってオンライン通信で知らない人とマルチプレイできるんじゃないの?本当に僕がやる必要ある?

ダウンロード中の画面を眺めながら自問自答するが、先生の居ないこの部屋ではそれも無意味なものであると気づく。
先生がやると言ったからには結局はやるしかないのだ。僕が嫌だと言おうとも。

そして僕はしょぼしょぼしてきた目で、
NEW GAME!!にカーソルを合わせた。






数時間後.....



「ふぁ......ねむ」


操作にも慣れたし、もう寝ようかな。


ピンポーン!


僕の寝ようとする行動を妨げるようなチャイムに、思わず溜息がでた。
もう変装は既にしてある。委員長がいつ来てもいいように、風呂からでても変装をすることにしたのだ。
.......このままじゃまた倒れるな僕。本当にどうにかしないと。


ピンポーン!


「........」


ピンポーン!


「?」


おかしいな。いつもならマスターキーで入ってくるのに。僕が開けるまで鳴らすような人じゃないぞ委員長は。

怪訝に思いながらドアスコープを覗くと、見慣れたくすんだ金髪が見え困惑が増す。

厄介事の予感を胸にドアを開けると、訪問者――委員長が突っ立っていた。その姿が迷子の子供のようだと一瞬でも思った僕はやっぱり眠いんだろう。もう早く寝たい(切実)


「どうしたんですか委員長?いつもならマスターキーで無理やり入ってくるのに――委員長?」


どうしよう反応がない。いや、反応はあるんだけど.....。風紀室で何回もあったアレだ。目は合うけど何も言わない、ずっと見つめてくるっていうアレ。

.....とりあえずドア前では目立つから部屋に入れよう。
そう決めた僕は突っ立ったままの委員長の手を握りリビングへ連れていく。その時、委員長の両手に何も荷物がないのに気がつく。まさかの手ぶら。

まぁ、僕の部屋にはいつの間にか置かれた委員長の服とかあるからそんな心配してないんだけど。
――心配してないが、すごく気になる


「ほら座ってください。.....別に座りたくないなら立ったままでも構わないですよ」

「......」


返事がない。屍のようだ。


「もう好きにしてください。僕はコーヒーを――」

「なぁ」

「っ」


キッチンへ行こうと背を向けた瞬間、強い力に引っ張られ体勢を崩す。疲労や油断もあり、僕は簡単に委員長の腕の中にすっぽり収まった。


「あ、あの委員長?」


背後から抱きしめられるという謎の状況に心臓が早鐘を打つが、それを悟られないよう困惑気味に聞く。すると委員長の吐息が耳にかかった。


「お前は俺のだよな?」

「みっ!?み、耳元で話さないでください!!」


身体が震える。耳元に注がれる声に、吐息に、感情に、身体中の血が沸騰したかのように熱くなる。


「答えろ。お前は俺のだよな?」

「~~っ!!」


耳元から遠ざけようと、この人から逃れようと身体を前傾するが、逞しい腕によってそれは叶わなかった。

身体が熱い。
目が回る。足に力が入らなくなる。

(なにこれ?なにこれっ!?)

そしてついに僕はカクンと膝から崩れ落ち、委員長に支えられる状態になった。


「.....ここ座れ」

「!」


座らされたのはソファに座った委員長の股の間。腕もお腹に周り逃げられそうになかった。
マジでっ、この状況なに!?!?


「~~ぼ、僕は!貴方の部下であり友人です!!」

「......」


無言やめてっ!!!何か言って欲しい!


「答えたからもういいでしょう?離してくださいっ」

「部下で友人.......」

「離してくださいってば!!ぅあ!?」


何を思ったのか委員長は僕をソファに押し倒した。目の前にある感情の読み取れない端正な顔立ちはものすごく迫力があり、少し怖い。まさか、いつものしかめっ面が恋しいと思う日が来るなんて思わなかった。

......なーんて現実逃避


「俺の部下ってことはお前は俺のものってことだ」

「は?」

「なら俺の言うことを聞くのは当たり前だよな?」

「いや、何を言って.....」

「――頼むから」

「っ」


急に変わった声音に息を飲む。いつもの自信満々な彼じゃなくて、縋りつくような、懇願するような.....


「あいつとだけは仲良くするな」


とても弱々しいものだった。









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