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第五章 面倒事はいつも突然やってくる

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そして定例会議当日。
僕は何故か職員室の客用ソファにモチモチ先生と向かい合って座っていた。

授業が終わりこれから憂鬱な定例会議があるというのに僕を呼び止めるなんて、余程重要なことなのだろうか?
.....いや、この人に限ってそれはありえないか。ゲームのことしか頭にないダメ教師だし。


「あ、今お前俺の事disったろ」

「まだ何も話してませんけど?」

「顔に出てんだよ」


何気に鋭いから気が抜けないんだよね、この教師。僕のポーカーフェイスを見破るとは侮れない。


「で、何の用ですか?モチモチ先生」

「.....そのモチモチ先生っていうのやめてくんねぇか?俺まだ20代だぜ?そこまでたるんだ腹してるわけでもねぇし結構気になるんだよ。モチモチって言われんの」

「何をそんな.....繊細なおとm――乙男でもあるまいし」


危ない。乙女って言いそうになった。
.......この世界って女はダメなのに母や姫はアリなの本当に謎だなぁ。これがご都合主義ってやつ?


「俺は繊細な男なの。兎に角!モチモチ先生はやめろ」

「はぁ、しょうがないですね。ならモッチー先生で勘弁してあげましょう」

「ありがとうございま――ってなんで俺がお礼言ってんだよ!?」

「知りませんよ。で、用は終わりですね?」

「まだだ。というかこれからが本題」


な、に.....!?
モッチー先生に本題があったなんて!
てっきりモチモチ先生という名前について呼び止められたと思っていた。



「露骨に驚くなよ......まぁいい。ほいこれ」


直方体型の箱を投げられ咄嗟に両手で受け止める。
なんだろ、う........はぁ?

僕の手の中にある箱にはテレビのCMでよく目にする有名なゲーム機が描かれていた。
いきなり投げ渡されたのがこれである。もう嫌な予感しかしない。
だって、モッチー先生すっごい笑顔なんだもん。


「ひと狩りいこうぜ!!」

「一人で行ってください」

「一緒に国創ろうぜ!」

「一人で創ってださい」

「.....冷たいこと言うなよ~。俺の周りゲームするやつ居ねぇんだ。な、頼む」

「嫌です。僕にそんな時間はありません。他を当たって下さい」

「通信料、ゲームソフトは全部俺持ちでいいから」

「はぁ.....そんな条件出されても――」

「仕事するから」

「しょうがないですね!!」

「すげぇ手のひら返しww」


それはそうでしょ。
モッチー先生が仕事をやってくれるなら僕の自由時間は結構増える。ゲームをやるだけでいいならお易い御用だ。土日にちょこっとやればいいだけだし。


「交渉成立だな。じゃあ明日から仕事終わったら数学準備室に来いよ」

「?――待ってください。まさか一緒にゲームするんですか?」

「あったり前だろ。なんのためにゲーム機一式あげたと思ってんだ。約束破ったらお前に生徒会の仕事回すから」

「モッチー先生にそんな権限ないでしょう!?」

「俺は生徒会顧問と親しくてな?話せば喜んで分けてくれるぞ」

「ぐっ」


これじゃあプラマイゼロだ。いやむしろマイナス?
なんで僕ばっかりこんな目にあうんだ?というか先生親しい人いるならその人とゲームすればいいのに、なぜ僕!?

だけどその理由はモッチー先生の表情で察した。

ぜったいに嫌がらせだこれ!!!!

じゃなきゃそんな意地の悪いにやけ顔なんてしないだろう。ああでも、今はとにかく何か言わないと。


「モッチー先生、僕は.....」

「おい、時間いいのか?もう定例会議始まるんじゃね?」


っ、この人は本当に!!!!!
貴方が僕を呼んだくせにそういうこと言うなと言ってやりたいが、時計を見れば確かにもう定例会議が始まる時間が迫っている。

くっ、今ここで先生と言い合ってもしょうがない。僕の優先順位は定例会議だ。



「.......いつか必ず仕返ししますからね?覚えておいてください」

「あっはっはっはっはwww」


僕は不愉快な笑い声を背に職員室を後にした。

.......ゲーム機の箱を持って。





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