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第五章 面倒事はいつも突然やってくる

《side 兎道 湊都》 懲罰棟について

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「アドバイス?」

【うん】

【どうやらきみのかんがえかたは『いたん』のようだ】

【だから『じゅんのう』したらいい】

【ためしになんにんかヤッて、『し』になれたりしたら?】

「何言ってんだお前.....それに『じゅんのう』??」

【じゅんのう!】


じゅんのう――順応か。学園に順応......


「それはヤダ」

【そくとう!?】


それはそうだろ。なんで俺が自分の考えを曲げて周りに合わせなくちゃいけないんだ?
いや、時にはそういうの大切だって知ってる。
でも俺は友達が死んでへっちゃらな人間にはなりたくない。

それにこの世界では異能者より普通の人間の割合が多いから、俺みたいな人間の方が多いはずだ。この学園では少数派かもしれないけど.....

うん、順応しない。俺は俺を貫く。

ああ.....そうだ。悩む必要なんてない。
これでいいんだ俺は。

落ち込んで上等
後悔して上等
悔しくて上等

それが俺、それが兎道 湊都だ。
ぐずぐず悩んで悩んで、前を向けばいい。

幹登と真澄の死に落ち込んで、引きずって、過去のものとして記憶のふちに追いやって、自己嫌悪に陥って.....それで前を向く。

うん、吹っ切れた

俺はもう大丈夫。自分の持っていた自己嫌悪を吐き出して昇華できた。


「とにかく順応は俺には無理」

【えー.....】

「ありがとな!お前のおかげでなんか吹っ切れたわ!!」

【おれっちはとくになにもしてないけどねー】

「いいや!お前の言葉のおかげだ!んで、お前はどうして助けて欲しいんだ?」

【んー、きょうはいいや】

【なんかおもしろかったし】

【まんぞくまんぞく】

【じゃあおれっちはいくねー】

【またおしゃべりしよーぜ】

「お、おう?またな!」


そして木の枝達はバラバラになって地面に落ちた。







「.....また話に来よっと。さて、帰るか!」


ってか結構深い所まで来ちまってるなぁ。俺帰れるか?
そう不安に思っていると、ガサガサっと地面を踏みしめる音が耳に届いた。

だれだ!?


「は?.....なんで湊都がここに?」

「えっ、あ!章二!!!お前こそなんでここに居るんだ!?」


木々から姿を現したのは風紀仲間の登坂 章二だった。腕に赤い風紀の腕章があるため職務中なのは間違いない。
本当になんでこんなところにいるんだ?


「まずお前から答えてくれ。なんでここに?まさか委員長が?いや、でもお前は今風紀の任を解かれている.......」

「俺は散歩してたんだ。気分転換にさ.....そのおかげで今はもう元気いっぱいになったぜ!」


俺がそう言うと章二は驚いたように目を見開き、ニカッと笑った。


「そうか!それはよかった......」

「へへへ♪......それで章二はどうしたんだ?」

「俺は職務中だ。.......言っていいものか悩むが、知らない方が問題か?」

「?」

「あー.......ちょっと着いてきてくれ湊都」


一体なんなんだ?
疑問に思いながら章二の後をついて行くと、木々が開け立方体型の建物が見えた。

見た感じコンクリートの塊みたいだ。建物にしては窓がひとつもない。大きさだってそう大きくない。

なんだアレ?
ただ一つドアだけがついているが、人が生活するには小さすぎる。


「あの建物は懲罰棟だ」


懲罰棟.....その名前は何度か耳にしたことがある。真澄も口にしていた。
でも棟って言う割には小さいな。


「今、小さいなって思っただろ」

「う」

「まぁそう思うのも仕方ない。でもな、最初はこの建物も棟って呼ぶに相応しいくらいでかかったんだ」

「じゃあ、なんでこんなちっちゃくなったんだよ?」

「外から脱獄の手引きする奴らが後を絶たなかったらしい。この懲罰棟は入れば異能を使うことが出来なくなるが、外からの攻撃は防げない。だから地中に建て直したんだ。そんで今も懲罰棟なんて呼ばれてるのは地上に建っていた頃の名残ってわけ。それでも地中に建ったものは棟と呼ぶに相応しい程でかいんだけどな」

「......ならあのちっちゃい箱は地下への入口か」

「ああ。そんで風紀は懲罰棟の見張りも業務に入ってるんだ。俺がここら辺に居たのは懲罰棟に近づく怪しいヤツが居ないか見回りしてたんだよ」

「へぇ~!あれ?でも俺は懲罰棟の見回り業務やったことないぞ」

「......湊都にはまだ早い」

「はぁ?」

「さて、行くぞ。校舎が見えるところまで連れてってやる」

「おい!俺にはまだ早いってどういう意味だよ!?」


俺に背を向けスタスタ歩いて行く章二を追いかけるが、俺が追いつきそうになると章二は駆け足気味に走り出した。


「おい!?」


離れる距離に俺も慌てて追いかける。
な、なんで追いかけっこみたいになってんだよ!?


「よし、着いた」

「!?」


その言葉の通り、いつもの見慣れた本校舎が見えた。


「じゃ、俺は業務に戻るな。お前が元気になって本当によかった」

「お、おい.....」


そう言うと章二は俺に背を向けて駆けて行った。


「......俺も帰ろ」


寮に帰って、将翔や文貴にも迷惑かけてごめんって伝えよう。芙幸や清継にも気をつかわせてごめんって伝えよう。

なにより永利にありがとうって......


はぁ、今日はいろんなことがあった。
落ち込んで、うじうじして、妖精に会って、吹っ切れて、章二に会って、そして懲罰棟を知った。


「色々なことがあったけど、なんか楽しかったな」









《side   end》








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