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第四章 雨はお好きですか?
《side 緋賀 永利》 メンンタルケア
しおりを挟む《side 緋賀 永利》
「おい、聞こえてるか?」
声をかけてもちんちくりんは根岸達が居た場所から視線を外さなかった。
一条にメンタルケアをしろと言われたが何をすればいいのかさっぱりだな。俺様は幼い頃からこういう光景を見てきたが、メンタルケアなんざ受けたことねぇ。
それが普通だったからなぁ......ほんと何すんだよ。
「.......俺は、俺はなにやってんだろうな?」
「あ''?」
「友達を助けられなかった!!!幹登と真澄があんなに苦しんでいたなんてっ、知らなかった!」
?
何言ってんだこいつ?
「お、俺がもっと早く真澄の気持ちを聞いていれば2人は死ななかったかもしれない......」
......このちんちくりんの思考回路はどうなってんだ?面白いこと考えてんな。
根岸 幹登と葉谷 真澄があんなに苦しんでいたのを知らなかった?
――はっ、そんなんアイツらが話さなかったんだから分かるわけねぇだろ。
葉谷 真澄の気持ちを聞いていれば2人は死ななかったかもしれない?
――テメェがその気持ちとやらを聞いたとしても結末は変わらねぇよ。
αが番に懸ける想いを
Ωが番に懸ける想いを
第三者がどうこう出来るわけねぇ。
まぁコイツにそういうのはまだ理解出来ねぇか。
汚ぇ感情を知らないおキレイなΩは尚更な。
首輪をしないというとち狂った行動して誤魔化しているようだが、俺様の鼻は騙せねぇよ?
風紀の奴らは何か知らんがコイツをαだと思っているが.......。どこがαなんだ?まだβのほうが納得出来る。
と、今はそんなことどうでもいい。
ここは取り敢えず褒めといた方がいいか?
「おれが、おれが、おれがっ!!」
「おい、ちんちくりん」
話しかけるだけじゃ反応が返ってこないため仕方なく同じ目線になるようにしゃがむ。そしてちんちくりんの頭を鷲掴みこちらに向ける。
俺様がしゃがんでも目線が同じにならねぇってどんだけ小さいんだコイツ?
「よくやった」
「ぇ.....」
ヴァイオレット色の瞳をまっすぐ見つめれば、だんだん俺様に焦点が合っていくのが分かった。
「もう一度言う。よくやった」
「な、にがよくやっただ!!人が死んでんだぞ!?なにもよくねぇよ!!」
「テメェは事態がよく分からない中、自分にできることをした。友人を傷つけることと一条の命....俺様の知るちんちくりんなら苦悶の表情でぐずぐずずっと迷ってただろうな。......だが違った。ぐずぐずするまでもなく、すっぱりと選んだ。兎道 湊都、テメェのお陰で一条は助かったんだよ。あの僅かな時間があったおかげで俺様は間に合ったんだ。だから俺様はこう言う。よくやったと」
俺様の言葉には所々矛盾があるが、今のちんちくりんの頭は正常に働いてないため気づかれないだろう。もしここに一条が居れば「いや、貴方は最初から見てたでしょう?」とかなんとか言うだろうが......。
だが、こういうのはそれっぽく言っときゃいいんだろ?
「よくやった」
「うん....」
「テメェは頑張った」
「う''ん」
「ちんちくりん」
「っ、ぢんちくりん''ってい''ぅな!!」
「はっ、そうかよ。.........行くぞ湊都」
「!!」
「オラ、さっさと来い」
「う''ん''.......ぐすっ」
コイツ.....この学園で生きていけるのか?
ある意味無垢すぎやしねぇ?
《side end》
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