上 下
102 / 378
第四章 雨はお好きですか?

27

しおりを挟む



「もういいです」

「.......?」

「貴方の話を聞いていると耳が腐り落ちそうだ。だからもう黙ってください」

「......そっか。なら殺すね」


真澄が立っているのもやっとな燈弥の肩をトンと押せば、燈弥はどさりと尻もちを着く。


「その麻痺毒は直ぐには抜けないから時間稼ぎは無駄だったね」

「別に時間稼ぎをしたつもりはないのですが....まぁいいでしょう。そう思いたければそう思ってくだされば」

「......僕は君のその何もかも見通したような態度が出会った時から気に食わなかった。僕と幹登の関係を疑うような、憐れむようなっ.....!あぁムカつく!!」


ギリリと歯を噛み締め、どこからか縄を取り出した真澄。そして燈弥に馬乗りになりその取り出した縄を首に何重にも巻き付け――


「ぐっ.....!!」

「死ねよ」


絞める。


「と、燈弥!?!?」

「行かせねぇ!!」


湊都は幹登ともみくちゃになり燈弥の元へ行けずにいた。
魂写棒を始動し斬りつければ簡単に幹登を振り払えるのだが、丸腰の......しかも友人である幹登に魂写棒を抜くことを湊都は決断できないでいた。


(~っ、どうすればっ!?......そうだ!父さんが言ってた。『優先順位をつけろ』って。燈弥が殺されるのは嫌だ。だけど幹登を傷つけんのも嫌だ。えーっと、俺が天秤にかけるのは燈弥の死と幹登の怪我.......そんなんどっち取るか決まってんじゃねぇか!!)


「始動 シェイカー!」


しかし吹っ切れたような顔で湊都は抜刀する。
そのままシェイカーの柄で自身に抱きつく幹登の横腹を打ちつけた。


「はっ、ぅ......!」

「悪い幹登!」


その場に膝を着く幹登を尻目に真澄に駆け寄りシェイカーを振りかぶる。
しかし――


「僕の幹登に何してくれちゃってんの?」

「!?」


そんな言葉と共に真澄の手から光る何かが飛ばされ、湊都の肩にチクリと痛みが走る。


「その針も麻痺毒だから安心して。さて、もう邪魔者は居ない。さっさと殺して吊るして幹登と日常に戻らなきゃ」


真澄は緩めていた手に力を込め縄を強く引っ張る。


「っ、ぁ....はっ」


だが燈弥はもがきもせずただその行為を受け入れるように口元に笑みを作っていた。

それを不快に思った真澄はさらに縄を――



















「俺様の部下に何やってんだァ?違反者が」




怒りを帯びた、聞くもの全てを震え上がらせるこの学園の独裁者の声に真澄の手が緩む。


その隙に縄に手をかけ気道を確保した燈弥は笑った。
笑うしかなかった。


「あはは、ごほっ、ごほっ、あはははっ――はー.....上司が鬼すぎて僕は悲しいです。こんな可愛い部下を囮に使うなんて」

「可愛い部下だから死ぬギリギリで助けたんだろうが」




《side  end》






しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

ブレイブエイト〜異世界八犬伝伝説〜

蒼月丸
ファンタジー
異世界ハルヴァス。そこは平和なファンタジー世界だったが、新たな魔王であるタマズサが出現した事で大混乱に陥ってしまう。 魔王討伐に赴いた勇者一行も、タマズサによって壊滅してしまい、行方不明一名、死者二名、捕虜二名という結果に。このままだとハルヴァスが滅びるのも時間の問題だ。 それから数日後、地球にある後楽園ホールではプロレス大会が開かれていたが、ここにも魔王軍が攻め込んできて多くの客が殺されてしまう事態が起きた。 当然大会は中止。客の生き残りである東零夜は魔王軍に怒りを顕にし、憧れのレスラーである藍原倫子、彼女のパートナーの有原日和と共に、魔王軍がいるハルヴァスへと向かう事を決断したのだった。 八犬士達の意志を継ぐ選ばれし八人が、魔王タマズサとの戦いに挑む! 地球とハルヴァス、二つの世界を行き来するファンタジー作品、開幕! Nolaノベル、PageMeku、ネオページ、なろうにも連載しています!

変態高校生♂〜俺、親友やめます!〜

ゆきみまんじゅう
BL
学校中の男子たちから、俺、狙われちゃいます!? ※この小説は『変態村♂〜俺、やられます!〜』の続編です。 いろいろあって、何とか村から脱出できた翔馬。 しかしまだ問題が残っていた。 その問題を解決しようとした結果、学校中の男子たちに身体を狙われてしまう事に。 果たして翔馬は、無事、平穏を取り戻せるのか? また、恋の行方は如何に。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話

みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。 数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

処理中です...