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第四章 雨はお好きですか?
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しおりを挟む放課後、僕は根岸君のメール通り被害者が逆さ吊りにされていた空き教室へ向かっていた。
窓から外を見れば小雨が降る中、部活動をしている生徒たちが小さく見える。.....こういう光景を見るとこの学園が普通の高校に見えるのになぁ。
「燈弥~、この後幹登も誘って食堂行こうぜ!」
眩しいくらいの青春か.......ここで体験できるのは血なまぐさい青春だけだ。記憶にあるキャッキャウフフのような学校生活とは無縁だろう。
まず、女の子居ないし。
「燈弥~無視すんなよぉ......」
「......根岸君を誘う時は先に葉谷君に確認を取りましょうね?」
さっきからスルーし続ける僕に痺れを切らしたのか、兎君が歩いている僕の周りをウロチョロしだしたので仕方なく答えを返す。
まず、なんで兎君が僕に着いてきているのかと言うと……
『燈弥一緒に帰ろうぜ!俺今日非番なんだっ』
『すみません兎君。この後根岸君と会う予定があるんです』
『幹登か!あ、なら俺も着いてく!幹登と話したいことあるんだ』
『.......一緒に行きましょうか』
という経緯があるのだ。
別に根岸君からのメールに1人で来いとは書かれてなかったので問題はないだろう。
「燈弥と幹登は何の話をするんだ?俺は前幹登と部活見学に行ったからどこに入ろうか話し合いたいんだけど......」
「風紀の仕事をやりながら部活に入るだなんて余裕ありますねぇ兎君は」
「いや、余裕はねぇけど.....だからガッツリ系じゃなくて文化部系の部活に入ろっかなって」
「そうですね。運動系はさすがにキツイでしょう。ちなみにもう決まってるんですか?」
「ん~ぶっちゃけ迷ってる。新聞部にすっげぇ勧誘されたし、カードゲーム部も手芸部も料理研究部も気になってる状態」
「新聞部!?そこはやめた方がいいです」
「なんでだ?」
「ことある事に風紀に訪ねてくる情報部は知っていますね?」
「おう。.........それがなにか関係するのか」
「新聞部は情報部の一部なんですよ。情報部内の人間が新聞部を名乗ってると言いましょうか。なので入るのはお勧めしません」
情報部の一部なら部活として認可出るのおかしいでしょ。当時の生徒会は何をしていたんだ。
「アイツら情報部の人間なのかよ」
「風紀内の情報が欲しくて勧誘したんじゃないですかね?兎君はサラッと口を滑らしそうですし」
「それはっ.....!」
「それは?」
「ぐぅ.........有り得るな」
有り得るんだ......。
と、そうこう話しているうちに約束の空き教室へ辿り着く。
根岸君はもう居るかな?
あ、居た。
「根岸君......体調は大丈夫ですか?」
顔色を青白くし、見た感じ体調が悪そうだけど。
まだあの逆さ吊り事件から1日も経っていないから仕方ないのかな.....?
ちなみに隣にいる兎君には首吊り死体についてなにも話していない。話せば怒って血眼になりながら犯人探しすると思うから。
だから兎君には構内見回りや喧嘩の仲裁に走り回ってもらっている。
「あぁ、体調は大丈夫だ。悪かったな迷惑かけて.....」
ダウト。
大丈夫だって?
僕が鏡を持って来て君の顔を映し見せても、そう言えるのかな?
「幹登.....すっげぇ顔色悪そうだぞ?」
僕の後ろからひょこりと顔を覗かせた兎君は心配そうにそう言い、根岸君に駆け寄ろうとした。
「っ、なんでここに湊都が居るんだよ!?!?」
「は、え??」
だけど急な叫びに兎君は足を止め困惑の表情を見せる。
その姿を見て僕はパチリとパズルのピースがハマったような感覚を覚え、咄嗟に腰に帯棒している魂写棒を振り向きざまに薙ぐ。
「ぐっ、ぁ.....ゲホッ」
カラン、カラン.......
しかし僕の手から魂写棒が離れた。
鈍い痛みに蹴られた鳩尾を抑え、膝を着き嘔吐く。
カツ.....
カツ....カツン!
膝を着いた僕の目の前に軍靴が並ぶ。
痛みに呻きながら顔を上げると、うっすらと笑みを張りつけた葉谷君が僕を見下ろしていた。
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