狂った世界に中指を立てて笑う

第四章 雨はお好きですか？

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「あ、トサカ君のこと忘れてました」


一旦、この事件について考えないようにした僕はふとトサカ君のことを思い出す。
そういえば通話途中に根岸君に出会って......うん？僕は通話を切った覚えがないぞ。

だけどスマホを見ればとっくに通話が切れていた。もしかしてあっちから切ったのかな？

いや、のんびりしてる場合じゃないな！？
今もきっと教室を駆け回っているだろうトサカ君が不憫だ。

僕は急いでトサカ君に連絡しようと――


「燈弥！！」


.......連絡する必要なくなったな。
足音を立て入ってきたのはトサカ君その人。息を荒くしていることから走ってきたのが窺える。


「トサカ君！どうやってここがわかったんです？」

「はっ、はっ、ふぅー........。取り敢えず勘で東校舎を走り回ってたらこの教室に明かりが付いてんのが見えたんだ。で、教室前に蹲ってる根岸が居て....もしかして燈弥が俺との通話やめたのは根岸と会ったからか？」

「ええ。こんな夜中に学校で何をやっていたのか警戒して.....蹲ってる？根岸君は教室前で蹲ってるんですか！？」


急いで廊下に出ると、トサカ君の言った通り根岸君が背中を丸め蹲っていた。小刻みに身体が震えているように見えるけど大丈夫かな？


「根岸君？」

「ぅ、あぁ.....」

「どうしたんだこいつ？」

「さぁ？もしかして結構ショッキングな光景でしたかね……？逆さ吊りの生徒って」

「ショッキングか？まだマシな方だろ」

「マシなんですか......。大丈夫ですか根岸君？」


そう声をかけても彼はただ耳を塞ぎ震えるだけだった。


「参りましたね......彼はちゃんと保健医に連絡してくれたんでしょうか？」

「そこかよ心配すんの。.......でも、連絡はちゃんとしたようだぞ。履歴が残ってる」


ほらと根岸君のスマホを見せられた。確かにそこにはちゃんと保健医に連絡した履歴が残っている。
僕はトサカ君からスマホを受け取り連絡帳を開き、スクロールしていく。


「何してんだ？」

「根岸君にはこの時間帯での不審な行動について色々聞きたいのですが、この様子では無理だなと。今日のとこは番である葉谷君に看病して貰って明日事情を聞こうと思ったんです」

「へぇー」

「なのでこの生徒のことをお願いします。保健医に対処して貰って.....話を聞いておいてください。その後は解散してもらって、明日の朝イチで情報交換しましょう。えーっと、あ！風紀室の鍵を渡しときます。今多分開けっ放し状態なので閉めておいてください」

「それはいいが.....明日の朝どうするんだ？燈弥はいつも1番に来るだろ」

「......委員長を引っ張っていくので少し遅くなります」

「燈弥が委員長を.....？」

「と、取り敢えずよろしくお願いしますね」


僕はいそいそと、蹲る根岸君を抱えてその場を後にした。
このまま話を掘り下げられると委員長が僕の部屋に泊まっていることをツルッと口から出してしまいそうだ。

だけど.....うーん。
トサカ君の疑惑の視線が痛いなぁ。




※※※※※※※※※※※※※※※※※※



教室を出た僕は根岸を脇に抱えながら先程見つけた葉谷君の連絡先をタップする。


『幹登！！こんな時間に何処にいるの！？！？』


うわぁ、耳がキーンとした。
葉谷君のヒステリック気味な声にスマホを思わず離す。
これまともに話聞いてくれるかな？


「もしもし、こちら風紀副委員長の一条です」

『副委員長！？～っ幹登は無事なんですか？なにか巻き込まれたんですか？～だから言ったんだっ、風紀に入るのはやめてって！！幹登に何かあっても僕が守れないからっ.....！』

「落ち着いてください葉谷君。今はそんなこと聞いている暇はないんです。根岸君が具合悪いらしくダウンしています。今から葉谷君の部屋に根岸君を連れて行くので迎え入れる準備を......と、葉谷君の部屋番号っていくつでしたっけ？」


肝心なことを知らないや。


『僕の部屋は811ですっ、雨が降ってるから早く連れてきてください！』

「雨....？ぁ」


ブチッと音を立て通話が切れた。
あ～......これは根岸君を預けたあと1対1で取調べの如く詰問されるやつだ。


「早く届けて逃げましょうか......」


話を聞きたいのはこちらなのに、逆に問いただされるっておかしいよね？？


「まぁ避けられぬ問題ですか......えっと、それで葉谷君の部屋は811でしたっけ。ん？811？」


確か800番台って成績上位者専用の......。
葉谷君って成績上位者なの！？
因みに――
1階は食堂他娯楽室
2、3階が2年生
4、5階が1年生
6、7階が3年生
8階が成績上位者
9階が生徒会及び風紀委員長、副委員長の部屋
となっている。

もう寮と言うよりホテルだよこれ......。

と、話を戻して。


葉谷君が成績上位者か.....聞いてみたいものだね。なんの成績が優秀で選ばれたのか。文ちゃんとケーキ君の話によれば筆記と実技の成績は関係はないらしいし。どちらかが優秀でも、両方優秀でもだ。

あぁ気になるねぇ。