狂った世界に中指を立てて笑う

キセイ

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第四章 雨はお好きですか?

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僕は自室に帰る途中、授業中であるはずなのに見覚えのある後ろ姿が視界に入り声をかけた。


「ケーキ君」

「?――燈弥か!」


目つきの悪い瞳を人懐っこく細め、笑顔で近寄ってくるケーキ君に萩野君のせいで負った心の傷が少し癒される。
うーん、懐かれてるねぇ僕。


「授業サボりですか?」

「なんだ?風紀に連行してくのかよ」

「サボりくらいでそんな面倒臭いことしませんよ。まぁ、連行したとしても委員長に投げますが」

「絶対にやめろ。俺の担当は燈弥しか認めねぇ」

「冗談ですよ」

「なんだ冗談......おい、なんだその軍服は」


僕の冗談めかして言った言葉にケーキ君も笑いながら返してくれたが、急に真顔になり声音低く問い詰めるように聞いてきたためちょっと驚く。

まぁ見るからにサイズがあってない格好だから気づくだろうと思っていた。なにより生徒会専用の軍服は一般用とは違って腿くらいまでの長さに設計してある。

でもなんでそんな真顔に?


「......先程少しトラブルがありまして。気にしないでくださ――」


ブチッ.....!


「......」

「......」


なんてことをしてくれたんだ......せっかく、せっかく奪ったのに。
そう思いながら廊下に落ちたボタンを哀愁の目で眺め、次に僕の着ている軍服に手をかけるケーキ君を睨む。

だけど何故か僕が睨み返された。


「誰だ.....」

「へ?」


怒ったような顔でケーキ君は僕の胸ぐらを掴んで詰め寄ってきた。

なんで僕は怒られてるの?
なんで胸ぐらを掴まれてるの?

ケーキ君のその表情とこの状況に僕は混乱した。だが、暫くして理解する。


(あぁ、ケーキ君は僕が襲われたんだと思ったんだ)


それに気づき、僕は内心笑みを浮かべ――しかし表面上では唇を噛み締め顔を伏せるようにする。そして一呼吸置いて顔を上げ、笑みをケーキ君に見せた。

一回顔を伏せるのがポイント。そうすれば無理して笑っているように見える。


「.....実はさっき生徒会会計の萩野君に襲われかけたんです。この通り下のワイシャツまで破られまして.....まぁ結局は彼の軍服を奪って逃げてきたんですが」


するとケーキ君は瞳に殺意を乗せ「あの野郎....」
とすっごい低い声でそう零した。


「でもこの通り無事なので気にしなくていいですよ」

「そうか.......悪ぃ。ちょっと用事ができた。一人で部屋に帰れるか?」

「元から一人で帰る予定でしたよ。ケーキ君あまりサボりはしないようにしてくださいね。では、僕はこれで」

「気をつけて帰れよ」



僕はケーキ君に背を向けて自室へと向かうが、気になるのはケーキ君のこと。
ケーキ君はこの後何をするんだろうね?
あんなに殺気を纏って......。


「ケーキ君は友達思いだなぁ」


何をする気か分からないけど……


僕は嬉しいよ。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



深夜零時を回った頃、僕は唐突にいい事を思いつきベッドから飛び起きる。

今日は吊るす男について失態を犯し、萩野君に襲われかけ、そのせいで聞きこみ調査が中断になって(精神的に疲れてダウンしたため)、夜は委員長の訪問侵入......はぁ、大変な一日だった。

委員長?

僕が部屋で寛いでいたら風紀委員長特権であるマスターキーで勝手に入ってきて、勝手に寛ぎ始めたから....もちろんコーヒー(睡眠薬入り)でおもてなししたよ。

今はリビングでお眠している。

それでそんな大変な日のお陰でうつらうつらしていた僕だが、明日の業務が楽になるいい事を思いついて起きた.....という次第だ。


「.....明日の分の仕事今の内にやっちゃおう」


そうすれば明日は早く帰れて自分の好きなことをできる。

いい加減美術室で本を読みたいし.....

風紀室へ行こうとリビングに顔を出せば委員長は寝ていた.....よし部屋を出よう。

普通なら馬鹿な考えって思うだろうけど、どの道委員長が居るこの部屋では気が休まらない。
前も委員長がいつ起きてくるのか怖くて変装解かずに朝まで起きてたし。

だけど今日はその時間を有効に使う。

ではレッツゴー!














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