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第四章 雨はお好きですか?
《no side》
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《no side》
骨喰 恭弥は後ろを振り向き、一条 燈弥が見えなくなったことを確認すると足を止めた。
そして拳を振り上げる。
「正気に戻れこの馬鹿」
ゴッ!という鈍い音と共に萩野 メイルが呻いた。
「あ~......副会長じゃん。あれ?イッチーは!?」
恭弥を見て心底嫌そうに眉を寄せ、しかし燈弥のことを思い出すと焦ったように周りを見渡し始めた。
「一条ならもう居ないぞ」
「えぇ~!?なんで?なんでぇ!?俺イッチーのメアド聞いてない!今追いかけたら居るかな?」
「やめろ馬鹿者。一条に迷惑かけるな。あと今後一切関わるな」
恭弥のその言葉にブーブー!とメイルは不満を顕にし、立ち上がる。
「やだねぇ~。俺はイッチーと、イッチー....と......」
「おい......?」
言葉を詰まらせたメイルが思い出すのは触れた筋肉質な上半身と意外にも節ばった燈弥の手だった。
手フェチではないはずの自身が燈弥の手に興奮した。
メイルが纏う軍服をその漢らしくも綺麗な長指で一つづつ外していく様はまるで自身の内側を暴かれているのではないかと錯覚するほど。
それは柄にもなくメイルをドキドキさせた。
その綺麗な指がメイルの肌に爪を立てプツリと血を溢れさせる想像を。
その綺麗な手でメイルに抱きつく想像を。
何より.....その綺麗な手がシーツをクシャりと掴む様はそれはもう映えるだろうと思った。
「あはぁ~♡」
ポタッ、ポタッ、ポタッ........
鮮血がメイルのツギハギ顔から垂れ流れシャツを赤く染める。断続的に垂れるその血はところどころ色が違う皮膚の継ぎ目から出ているようだ。
瞳をトロンと蕩けさせ燈弥を思う姿はまるで恋焦がれる青年のそれ。だがそれも涎を口端から垂らし、血を垂れ流していなければの話だが。
「......おい、糸を締めろ。垂れてるぞ」
顔を顰めながら恭弥はそれを指摘した。
その言葉に彼を一瞥したメイルは眉を寄せ「空気読んでよ副会長~。せっかく幸せな想像に浸っていたのに~」と不平を口に右手の平を上に向け、そして握り込む。
すると不思議なことに断続的に垂れていた血がピタリと止まった。
「何を想像したのか知らないが、本当にやめろよ」
「しつこいなぁ。大丈夫~一回セックスしたら多分ちょっかいかけなくなるから」
メイルはゴシゴシと自身の顔を白いシャツで拭いながら「うぇ、着替えなきゃいけないじゃん......」とぼやく。
大丈夫と言いながらとんでもないことを発言したメイルに呆気に取られた恭弥はハッとしたように吠えた。
「どこも大丈夫じゃない!!」
「だってさぁ、想像してみてよ?あの澄ました顔が快楽に歪むのを、あの綺麗な手でしがみつかれるのを、あのしなやかな肉体を上から見下ろすのを........めちゃくちゃセックスしたくなるでしょ!?それに――は?なに赤くなってんの?」
「お、お前が変な事言うからだろ!?」
「うわ~副会長ってムッツリなんだぁ。本当に想像しちゃった?」
「黙れ!!っは~~......一条に気をつけるよう連絡しとくか」
「は!?なにイッチーと連絡先交換してんの!?狡い!」
「さて、戻るぞ」
「無視~??」
スタスタとメイルを置いて先に行く恭弥。
その後ろ姿を暫く眺めたメイルはポツリと呟く。
「うーん.......イッチーと仲良くなるのは無理だなぁ。あれは他人に心許さない会長タイプだし。イッチーにトラウマとかあったら面白いんだけど。うん?俺が触れた時微かに震えてたかな......あは♡久しぶりに楽しくなってきたかも」
そしてなにかに気づいたように口端を吊り上げ、恭弥の後を追った。
《side end》
骨喰 恭弥は後ろを振り向き、一条 燈弥が見えなくなったことを確認すると足を止めた。
そして拳を振り上げる。
「正気に戻れこの馬鹿」
ゴッ!という鈍い音と共に萩野 メイルが呻いた。
「あ~......副会長じゃん。あれ?イッチーは!?」
恭弥を見て心底嫌そうに眉を寄せ、しかし燈弥のことを思い出すと焦ったように周りを見渡し始めた。
「一条ならもう居ないぞ」
「えぇ~!?なんで?なんでぇ!?俺イッチーのメアド聞いてない!今追いかけたら居るかな?」
「やめろ馬鹿者。一条に迷惑かけるな。あと今後一切関わるな」
恭弥のその言葉にブーブー!とメイルは不満を顕にし、立ち上がる。
「やだねぇ~。俺はイッチーと、イッチー....と......」
「おい......?」
言葉を詰まらせたメイルが思い出すのは触れた筋肉質な上半身と意外にも節ばった燈弥の手だった。
手フェチではないはずの自身が燈弥の手に興奮した。
メイルが纏う軍服をその漢らしくも綺麗な長指で一つづつ外していく様はまるで自身の内側を暴かれているのではないかと錯覚するほど。
それは柄にもなくメイルをドキドキさせた。
その綺麗な指がメイルの肌に爪を立てプツリと血を溢れさせる想像を。
その綺麗な手でメイルに抱きつく想像を。
何より.....その綺麗な手がシーツをクシャりと掴む様はそれはもう映えるだろうと思った。
「あはぁ~♡」
ポタッ、ポタッ、ポタッ........
鮮血がメイルのツギハギ顔から垂れ流れシャツを赤く染める。断続的に垂れるその血はところどころ色が違う皮膚の継ぎ目から出ているようだ。
瞳をトロンと蕩けさせ燈弥を思う姿はまるで恋焦がれる青年のそれ。だがそれも涎を口端から垂らし、血を垂れ流していなければの話だが。
「......おい、糸を締めろ。垂れてるぞ」
顔を顰めながら恭弥はそれを指摘した。
その言葉に彼を一瞥したメイルは眉を寄せ「空気読んでよ副会長~。せっかく幸せな想像に浸っていたのに~」と不平を口に右手の平を上に向け、そして握り込む。
すると不思議なことに断続的に垂れていた血がピタリと止まった。
「何を想像したのか知らないが、本当にやめろよ」
「しつこいなぁ。大丈夫~一回セックスしたら多分ちょっかいかけなくなるから」
メイルはゴシゴシと自身の顔を白いシャツで拭いながら「うぇ、着替えなきゃいけないじゃん......」とぼやく。
大丈夫と言いながらとんでもないことを発言したメイルに呆気に取られた恭弥はハッとしたように吠えた。
「どこも大丈夫じゃない!!」
「だってさぁ、想像してみてよ?あの澄ました顔が快楽に歪むのを、あの綺麗な手でしがみつかれるのを、あのしなやかな肉体を上から見下ろすのを........めちゃくちゃセックスしたくなるでしょ!?それに――は?なに赤くなってんの?」
「お、お前が変な事言うからだろ!?」
「うわ~副会長ってムッツリなんだぁ。本当に想像しちゃった?」
「黙れ!!っは~~......一条に気をつけるよう連絡しとくか」
「は!?なにイッチーと連絡先交換してんの!?狡い!」
「さて、戻るぞ」
「無視~??」
スタスタとメイルを置いて先に行く恭弥。
その後ろ姿を暫く眺めたメイルはポツリと呟く。
「うーん.......イッチーと仲良くなるのは無理だなぁ。あれは他人に心許さない会長タイプだし。イッチーにトラウマとかあったら面白いんだけど。うん?俺が触れた時微かに震えてたかな......あは♡久しぶりに楽しくなってきたかも」
そしてなにかに気づいたように口端を吊り上げ、恭弥の後を追った。
《side end》
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