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第四章 雨はお好きですか?

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「......オイラ今日みたいな雨か曇りかっていう微妙な天気嫌いなんすよね~。外で寝て雨が降ってきたら最悪だし、雨だと思って室内で寝てたら外はめっちゃ晴天とか。めっちゃムカつく。だけど、思い出したんす。そういえば人があんまり寄り付かなくて、雨が降っても葉っぱで全然濡れることもない絶好の昼寝スポットあったなぁーって。それがあの中庭にある大木。思い出したが吉日ってことで、そんでオイラはそこに行ったんすよ」


思い立ったが吉日だね、それは。
ちょっと惜しい。


「そしたら既に先着がいて~.....撃ち殺してやろうかと思ったっす。オイラが寝ようとした場所を汚物で汚しイラつかせたんすから。でも既に死んでるじゃん!って気づいて、撃ち殺すのをやめたっす。オイラってば優しい~!って。その時ふとそいつを見上げたら丁度寝るにいい枝があって......」

「結果その首吊り死体の真上で眠っていたわけですか......」

「結果オーライっす!」

「この馬鹿が!なにが結果オーライだ。マジで懲罰棟にぶち込んでやろうか?」

「キシシシっ、それならシゲちゃんと同じとこにぶち込んで欲しいっす!」

「却下だ」


シゲちゃん??
まぁ今はそんなことどうでも良くて......


「委員長、僕は彼が犯人とは思えないんですが?」

「......」

「委員長?」

「はぁ......そんなん俺様も分かってらァ。こいつは頭おかしいが自分がやったなら馬鹿正直に自分がやったって言う奴だ。こいつがやってないっていうなら本当にやってないんだろう」

「ならどうして?」


こんな茶番を?
わかっているならさっさと解放してあげればいいのに。彼と話すのは委員長も精神的にキツそうですし。


「おい田噛、その死体に怪しいところはなかったか?」

「?.........うーん。見た感じ自殺ではなさそうだったっす!自殺にしては顔がめちゃくちゃ面白くなってたし!ま、オイラの勘っすけどね!!」

「クソ!結局手がかりなしか」

「そんなことないと思いますよ」


ちょうどその時、頼んでいた''昨夜の消灯時間に部屋に帰ってきていなかった生徒''の名簿をおかっぱ先輩が持ってきてくれた。


「仕事が早いですね。ありがとうございます」

「い、いえ。お役に立てて何よりです!」


さてと.......ここからは聞き込みかな?


「先輩.....大変な作業の後に頼むには心苦しいのですが、この名簿の生徒達にアリバイがあるのか聞き回って欲しいのです。そして証人込みでアリバイが完璧な人は名簿から外してください。ですが少しでも怪しいと感じたらアリバイが完璧でもそのままで」

「は、はい」

「大変なことを頼んですみません」

「そんなっ、副委員長に比べたら全然ですよ!そ、それで.....聞き込むのは.....」

「あぁ2、3年生だけでいいです。1年生は僕がやります」

「......わかりました!ではこれで失礼しますっ」


先輩が退出すると委員長の方から穴があきそうなほどの視線を感じた。


「......なんですか?」

「お前......めちゃくちゃ優秀だな」

「委員長には負けますよ」

「まぁな」

「うぇ~.....オイラ委員長のそういうところ嫌いっす」

「テメェはしゃべんな。それと一条、聞きたいことがあるんだが……交流会で戦闘狂嵌めたのお前か?」


急な質問に委員長を見下ろす。ソファに脚組む彼はさっきまで田噛君と言い争っていたのが嘘のように落ち着き払っていた。

強者特有の見透かすような視線に、首を縦に振りたくなるような嘘をも許さぬこの空気感に膝を屈したくなる。


あぁ、でもそれはとうの昔に経験した。
それよりも恐ろしい空気を味わったことがある。


だから僕は首を傾げる。
だから僕は嘘をつける。


「戦闘狂を嵌めた?.....交流会で戦闘狂は罠にでも嵌ったんですか?それは――」


だけど直ぐに感じる。
あ、これはダメだと。
知らないフリするには僕の分が悪い。

なぜなら委員長は質問した僕にではなく、田噛君に視線を向けていたから。


「――初耳ですね」


だけど僕はそこで田噛君....Mr.ウマシカの表情を確認せず、まっすぐ委員長を見つめる。


「そうか......はっ、まぁいい。この質問の答えは出たからな」


......どうやらMr.ウマシカの表情でバレたらしい。
一体どんな表情をしたのか非常に気になるが、それは薮をつつく行為だろう。

さて、それで委員長はどうするのかな?

そう警戒していた僕だが、意外なことに委員長は特に言及せずそのまま田噛君にこう言った。


「......おいそこの馬鹿。聞くが、お前は昨日消灯時間までには部屋に帰ったのか?」


さっきの話は終わりらしい。その事にホッとしながら話の流れに合わせて田噛君に視線を向ける。


「しゃべんなって言ったくせに質問するんすか?」

「うるせぇ答えろ」

「昨日は~......雅臣のとこでグダグダして、朝方まで外をうろついていたっす!」

「はぁ.....テメェは中学の頃から行動が怪しすぎんだよ。学校以外での監視もするべきか?」

「やめてくださいっす!!オイラ悪いことしてないのに酷いっすよ!?」


ん???
中学の頃から........?


「あっ......」


ヤバい、やらかした。
僕は言い争う二人から離れひとり(元)腐海の棚に立ち、ある資料を取り出す。

首吊り死体が不自然に増えたのは1年前くらいかららしい。しかもで。


「やっぱり.....」


中等部からあがってきた報告書類を見て、ポツリと呟く。

首吊り死体は今年になってで発見されている。......つまり犯人は僕と同じ1年生の生徒だ。
しかもエスカレーター組。

あぁ、僕の間抜けめ。

良く考えればわかることじゃないか。

1年前から中等部で増えた首吊り死体
それが今年に入って高等部で発見された

なまじ吊るす男という異名が高等部名簿に並んでいたため、全学年の中にいると思い込んでしまった。


「あのおかっぱヘアーの先輩には悪いことしちゃいましたね……」


2、3年生の聞き込みは無駄だったなぁ。
















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