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第四章 雨はお好きですか?
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しおりを挟む「へぇ~、お前らしい部屋だな」
「それはどうも。何飲みます?」
「コーヒー」
さっきまで僕が寝そべっていたソファに腰掛けた委員長。部屋に侵入されたのならもう仕方ないので、諦めて潔くコーヒーを用意する。
コツリと彼の目の前に用意したコーヒーを置き、僕は向かいのソファに座り脚を組んだ。
「それで?何の用ですか?」
「それ処分しとけ」
それと言われて指さされたのはテーブルに置かれた幾つもの袋。
ガサガサと中身を見てみれば、市販のお菓子や可愛くラッピングされたクッキーなどが入っていた。
「なんですコレ?」
「知るか。気づけば部屋に置いてあったんだよ」
「......委員長は誰かに合鍵とか渡してます?」
「渡してねぇ」
「なら誰が委員長の部屋に入れるというのですか?あ、まさか僕をからかってます?『俺様はこんなにも人気があるんだぜ』って言いたいだけ――」
「あのクソ眼鏡の仕業だ」
「それはどの眼鏡でしょう?」
というかその言い方は眼鏡をかけている人に失礼だからやめて欲しい。
「チッ.....クソ会長だよ」
「えっ.......」
会長が委員長に???
え、だって委員長と会長は犬猿の仲......
僕は風紀メンバーから委員長が会長のことを蛇蝎のごとく嫌っていると聞いた。そして委員長も会長のことを話す時は眉間のシワがいつもの三割増しほど酷くなるので聞いた情報は本当なのだと思っている。
だけど、会長は??
委員長は会長を嫌っているが、会長は委員長のことをどう思っているんだろう?
僕は修復不可能な程仲が悪いと思ってるけど、実際は違うのだろうか?
「......つまり会長が委員長にお菓子や可愛らしくラッピングされた.....このクッキーを部屋に置いていると?」
「......は?違ぇよ!!!なんつうこと言ってんだ!?あ''~!クソっ、鳥肌たった!!」
心底嫌そうに吐き捨てた委員長に『あぁやっぱり』と自分の考えが間違ってないことに少し落胆する。
仲良くないのかぁ......。
「じゃあどういうことですか?会長の仕業っていうのは」
「あのクソ野郎が俺様の部屋キーを複製して他生徒にばら蒔いてんだよ!!」
ん~~???
「......そんなことして会長にどんなメリットがあるのでしょうか?それに委員長は犯人が会長と言いきってますがその根拠は?」
「あ''?そんなもん俺様がアイツに同じようなことやったからな」
「自業自得じゃないですか!?」
そして結構陰湿!!
「はぁ~~~~~~(クソデカため息).......もう委員長が悪いとしか言いようがないのですが?」
「だが、俺はアイツが鍵を変えた後はなんもしてねぇ!?なのにアイツは俺が鍵を変えた後もこうやって何度も何度も鍵をばら蒔いてんだ!」
「.......会長ってねちっこいんですね。まぁ、それは置いといて.....これ僕が処分するんですか?」
「置いとくなよ......食ってもいいんだぞ?」
「得体がしれないものは食べない主義なので。というかこれぐらい委員長でも処分できるでしょうに」
「食い物捨てんの抵抗あんだよ」
「それは何狙いのギャップですか?言っときますけど僕に需要ないですから」
「そんなん狙ってねぇよ!」
怒鳴る委員長に「はいはい」と適当に返事し、ラッピングされたクッキーやらマフィンやらの袋を空けてはクンクンと匂いを嗅ぐ。
「ん.....これとこれは大丈夫です。それ以外はなにか入ってますね。はい、どうぞ」
「は?」
「その2つは食べて大丈夫です。保証します。捨てるの忍びないんでしょう?」
「......信じるぞ?」
「はい。.....市販のものは空けてみて大丈夫そうだったら風紀の皆さんにおやつとして出しましょうか。これらは預かっときますね」
「わかった。よし......」
立ち上がった委員長を見て僕も立ち上がる。委員長が飲んで空になったコーヒーカップを手に取ると視界の端にさっき渡したはずの安全なクッキー達が.......。
「え?」
まさかと思い、顔を上げると玄関ではなく何故か浴室へ消える大きな背中......。
「ちょっと!?!?!?」
何しれっと浴室に!?!?
コーヒーカップをテーブルにガシャンと置き、その大きな背中を掴む。
「おいっ、シャツが伸びるだろ!」
「いやいやいや!?そんなことどうでもいいです!なんで浴室に???」
「あー、俺様ここに泊まる」
「あっはっはっは~......寝言は寝て言ってください」
「俺様の部屋は知らねぇやつが出入りしてっから安心して風呂も入れねぇんだよ」
「.....百歩譲ってお風呂は貸します。ですが僕のとこに泊まるのは許可できません。他の友人を当たってください」
「ケチケチすんなよ。んじゃ風呂借りんぞ」
くっ、これは絶対に帰ってくれないやつ!
委員長がここに来た時両手いっぱいに袋を持ってたけど、ここに泊まる用意まで持っていたとは.....!
見落としてた僕の負けか.......。
「.......布団あったかな?」
寝室だけは死守しなければ
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