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第三章 新入生交流会
《side 浪木 将翔》 殺す
しおりを挟む《side 浪木 将翔》
「作戦開始か....」
了解の旨を返信し、スマホをしまう。
「始動『貪慕』」
魂写棒を始動すると俺の手には刃渡り数センチのナイフが握られる。
未だ突っ立っている戦闘狂を見据えれば、駆け寄る馬鹿の姿があり、いよいよだなと思いながら狙いを首に決めそのまま投げた。
俺の貪慕の異能は暗殺向けだ。今、投げた貪慕は感知できないよう姿を消し戦闘狂の首をいつでも掻き斬れるよう宙で止まっている状態になっているだろう。
......俺の合図で必ず当たる。
まるでサナートのような異能に思えるだろうが、接近戦でも結構便利なのだ。そして奥の手もまだある。
「燈弥の言葉では勝負は一瞬つってたな.....」
こっちは準備完了だ。
そして馬鹿が戦闘狂に話しかける。
「飛べ!!」
戦闘狂の意識が馬鹿に向いた瞬間、貪慕が戦闘狂の首目掛けて飛ぶ。
カキンッ!
しかしどういう訳か貪慕は壁にぶつかったように跳ね返った。
「チッ!やっぱこんなんじゃ殺せねぇか!!」
急いで飛び出し貪慕を手に呼び戻す。
「あ''~?.....なんだ浪木じゃねぇか!!ちょうどいい!今すっげぇむしゃくしゃしてんだ。発散に付き合ってくれや」
「おいおい、お前は一人でオナニーも出来ねぇのか?」
「かか!!うぜぇ」
「おっと」
振るわれた手から放たれる風圧を避ける。
本当にこいつは口より手が出るな。じゃあ典型的な脳筋なのかと聞かれれば違うのだが......全くもって厄介だ。
「なーんか、今日はいい日なんだか胸糞悪い日なのかわかんねぇな。強ぇやつと戦えたかと思ったら天使に会うし、だけどその天使は幻覚で気づけば誰も居ねぇし。そんでイライラしてたら急に茂が駆け寄ってきやがった。そしたら今度は浪木だよ。茂~どういうことだァァ!?」
「ひぃぃ!オイラは雅臣と話したかっただけっすよ!?あ、そうそう実はオイラにとも――」
「オラッ!」
「あ''?」
馬鹿の言葉を遮るように俺は戦闘狂に斬りかかった。
燈弥の存在が戦闘狂にバレるのはヤバい気がした。第六感と言うべきか、とにかく嫌な予感というものが働いた。
「あ~クソイラつくぜ!!テメェをボコボコにして発散しねぇと身体に悪ぃ!!」
「やってみろよ」
「かっかっか!言うじゃねぇか!周りから落ちこぼれ呼びされてるくせによォ」
落ちこぼれという言葉に眉がぴくりと動く。
「ああ、だけど勘違いすんな?オレはそう思ってねぇから。逆に買ってるんだぜ?お前の将来性ってやつを」
「......」
燈弥悪い。お前がどんな結末を描いているのか知らねぇけど、このイカれ野郎はここでぜってぇ殺す。
俺の将来性?落ちこぼれ?
.....あぁ、他の有象無象に言われるんなら笑って流したさ。
だがテメェに言われるのは我慢ならねぇ。我慢ならねぇよ。
「本当に鎖真那家は可哀想だな。こんなイカれ野郎達を抱えることになるなんて」
「なんだァ?そんなんでオレは動揺しねぇよ?テメェみてぇに」
「はぁ......お前とだけは仲良く出来ねぇわ」
「かっかっか!オレはお前のこと大好きだぜ?」
「ほざけ」
互いに一歩踏み込み攻撃を繰り出す。
戦闘狂は拳を。
俺は貪慕を奴の首目掛けて。
一撃くらってもいい。ただし俺はお前の首を必ず貰う。
集中すれば刹那、周りがスローモーションにかかったようによく見えた。こいつが俺のどこを狙っているのか、俺の攻撃をどう避けるのか.......
キンッ!!
しかしその時、何かを切り裂いたような鋭い音が響いた。
音にハッとし発生源を探れば、俺と戦闘狂の目の前に陽に当たり鈍く光る小さな銅板がひとつ浮いている。
なんだアレは?
どうしてコレが目の前に?
どうするべきだ?
疑問がドッと湧き上がるが――
最後に思い浮かんだのは不敵に笑う燈弥の顔だった。
俺は咄嗟に貪慕を手放しそのまま銅板を掴む。
だが、銅板を掴んだ俺には向かってくる戦闘狂の拳を避けることができない。
(あぁ、でもこれでいいんだ。燈弥はこれを狙っていたんだから)
「テメェの負けだイカれ野郎」
そう呟いた瞬間、
パンッ、パンッ、パンッ!!
銃声が鳴り響いた。
《side end》
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