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第四章 雨はお好きですか?
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しおりを挟むそして放課後、瀧ちゃんと別れて望月先生と一緒に風紀室へ向かったのだが.....
「なぜ兎君が風紀室の前にいるんでしょうか?」
「ぐえっ!ちょ、お前!教師に肘を食らわせる奴がどこにいんだよ!?」
「ここにいますが何か?それで、なんで兎君が?まぁ兎君が居るなら僕はいらないですね。案内お疲れ様でした。では僕はこれで.....」
「ちょい待て!!」
寮に帰ろうとしたら腕を掴まれる。
今の僕が先生に向けている視線が冷たいものだと気づいているのだろうか。
ああ....そうだ。今の僕は瓶底メガネという分厚いレンズをかけているんだ。見えるわけないや。
そう一人思っていると、先生が焦ったような顔をしながらこう言った。
「待ってくれ!俺にはお前しかいないんだ!兎君??えーっと、あのチビのことはなんも知らねぇ。知ってるだろ?教室での熱いアプローチを!!俺にはお前しかいねぇ....!!ぐえっ、おい!!また肘やったな!?」
「明らかに先生が悪いですよ!?なんなんですか!?そのセリフ!!浮気がバレた恋人みたいなクソしょうもないことを言って!!僕に恥をかかせたいんですかね!?」
しかも口調を変えて!!面白がってるでしょ!?
変な言い回しもして!!
「......おい」
「はい?」
かけられた声に反射的に振り向くと、そこにはくすんだ金髪に真っ赤な瞳の男前が......風紀委員長ですね?
どうしようか.....まぁ、取り敢えず先生にもう一発肘をお見舞して挨拶かな?
ガスッ!
「ぐへっ」
「初めまして。一年Aクラスの一条 燈弥と言います。この度、このダメ教師の推薦で参りました」
「......そ、うか」
え?
それだけ??
風紀委員長はその言葉だけを残して僕達を追い越し風紀室へ入ってしまった。
「風紀委員長ってあんな感じの性格なんですか?入学式で見た時とはだいぶ違うような気がするんですけど」
「.....さぁ?俺もよくわかんねぇな。ってことで俺はここで。あそこが風紀室っていうのはわかっただろ?じゃ!!」
「いやいやいや。どこ行くんですか?風紀委員の顧問さん?」
「なっ、何故それを!?」
「放課後までに瀧ちゃんに聞いたんですよ。風紀の顧問は望月先生だというのを」
「あぁ~.........」
「まさか僕を風紀に推薦したのは先生の風紀の雑務を僕に押し付ける気だったからですか?一般生徒には任せることは出来ないため、僕を風紀委員にしてしまえと?」
「黙秘」
「それは最早肯定です!」
この先生....とことんまで僕を使い潰す気じゃ???遠慮というものがないのかな?.....肘をかました僕が言えることじゃないけど。
とにかく、望月先生が油断ならないということはよく理解した。これから何か頼み事される時は疑おう。
そう決意しながら先生の背を押して風紀室に入室する。
するとどこの軍隊だ?と言いたくなるほどきちんと整列した赤い色の風紀の腕章をつけた生徒達が視界に入った。
「あっ!燈弥!!」
「兎君.....」
声に目をやれば兎君の周りには他にも3人ほど一年生らしき生徒がいる。彼らも推薦なのだろうか?
つまり、僕と兎君を合わせて計5人が風紀に入るってことに.....少なくない?これが普通なのかな?
この学園の秩序を守るのに新入生が5人というのは不安なんだけど。
「兎君は何故ここに?」
「燈弥こそ!俺は芙幸の見舞い帰りになんか、えーっと、あ~.....悪いやつを縛ってたんだ!!そしたらちょうどそこに風紀の人が通りがかって一緒に悪いやつを捕まえよう!みたいなこと言われて、んで来た!」
「スカウトですか......僕は望月先生からの推薦です」
「でも燈弥は戦えるのか?」
「からっきしですよ。なので、デスクワークだけならということで来ました」
「燈弥がいれば百人力だな!」
「嬉しいことを言ってくれますね。僕も兎君がいれば百人力だと思ってますよ」
「うへへへへ♪」
「俺は何を見せられてんだ......」
「?....まだ居たんですか?先生はやることがあるでしょう?仕事とか。仕事とか。仕事とか。そういえば僕達より先に風紀委員長が入ってきませんでした?この部屋には居ないようですが.....」
「緋賀 永利ならそこのドアに入ってったぞ」
なぜフルネーム呼び.....兎君がそう呼ぶと違和感があるなぁ。
と、その時ガチャりと兎君が指さしていたドアが開いた。出てきたのはやはり風紀委員長。
彼は威圧気に僕達を見て...見て....ん~??
おかしいな。僕から視線が逸れないぞ?
「あ~......風紀委員長の緋賀 永利だ。ようこそ風紀へ。早速だが一人ずつ奥の部屋で俺と面談だ。その面談結果で担当を決める」
フイッと視線を逸らされちょっと安心。やっぱりじっと見られるのは怖い。
そして風紀委員長は黒髪の一部を鶏みたいに赤く染め軽く立たせた生徒を連れて奥の部屋に消えた。
...... 目付きも相まって闘鶏みたいだな。連れてかれた子。
「一人連れていかれましたね。面談ってどんな事を聞かれるのでしょうか?知ってますか?望月先生」
「俺が知るわけねぇだろ~。な、帰っていいか?」
「それは風紀委員長に聞いてください」
僕に聞かれても......まぁ連れてきたのは僕なんですが。というか帰っていいかを僕に聞くのはどうかと思うんだけど?ただの一般生徒だよ僕。
「兎君......兎君?」
兎君に話しかけると彼はじっと奥の部屋に続くドアを見つめていた。
すると、先程風紀委員長に連れられ入って行ったトサカ君が出てきて兎君の名前を呼ぶ。
「次は湊都だと」
「!わかった。行ってくる」
「気楽にな」
兎君は言われた言葉とは反対に緊張気味に部屋へと入っていった。
僕は出てきたトサカ君に中での様子を聞こうと話しかけるが、なぜか顔を凝視された。
「なんですか?僕の顔になにかついてます?」
「.....いや。その見た目でその口調.....違和感がすげぇ。なんかオタクというか陰湿なやつかと思ってた」
「失礼ですね。こんな見た目ですが至って普通ですよ」
「そうだな悪い。で、中で何聞かれたかだったか?」
「はい。別に口止めはされてませんよね?」
「まぁな。聞かれたのは異能の種類と得意なこと、それと雑談?だった」
「雑談.....イメージ湧かないですね」
「俺もビビった。友達は何人いるのかとか聞かれた時には心臓が凍ったぞ。まじヤベェ」
「お母さんみたいな雑談ですね。僕なら笑っちゃうかもです」
「やめろよ?」
「冗談ですよ。......話は変わりますがトサカ君は兎君――いえ、兎道君と友達なんですか?」
「?......なんでお前俺の名前知ってんだよ?」
「えっ?」
「はぁ?....俺の名前は登坂 章二だ」
「うっそ.......こんなミラクルがあるなんて思わないじゃないですか」
「.....まぁいい。湊都とはついさっき仲良くなったぞ?それがどうした」
「いや、流石のコミュ力だなと再認識しただけです」
「お前は?」
「??.....ああ!僕の名前は一条 燈弥です。これからは風紀の仲間として仲良くしてください」
その時、ゆさゆさと肩を揺らされた。
「おーい、青春中悪いが呼ばれてんぞ。お前が最後だとよ」
「先生まだ居たんですか。というかもう最後?早かったですね」
「それは知らねぇ。ほら行けよ。俺はさっさと帰りてぇ」
え?僕が帰る=先生も帰るなの?
欠伸をするダメ教師にトサカ君と揃って呆れた視線を送る。本人は全然気づかなかったけど。
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