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第四章 雨はお好きですか?

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交流会が終わり、翌日学校に登校したら随分と空席が目立っていた。宮野君の席も空である。


「な、なんでこんなに人がいないんだ!?もうホームルームの鐘が鳴ったぞ!?芙幸も居ねぇし....清継は同じ部屋だよな?芙幸はどうしたんだ?」

「芙幸は寝込んでいる。どうやら交流会で負った傷から菌が入り発熱したようだ。今は部屋で安静にさせている」

「させてるってことは登校しようとしたんですね宮野君は」

「あぁ。全く......39度のくせして学校に行こうなんざ何を考えているのか」

「39度!?お、お、お俺っ見舞いに行ってくる!!」

「!?」

「おいっ、見舞いは放課後に.....!!」

「あ~......行っちゃいましたね」


兎君はまさに脱兎の如く走り去ってしまった。
兎君も両手を包帯でぐるぐる巻きしている怪我人だというのにあの行動の速さ..... やはり彼は直情型なんだなぁと改めて思う。


「瀧ちゃん....どんまいです。もしかしたら兎道は泊まるとか言い出しそうですね」

「やめろ。絶対に連れ帰れ。引きずってでもいいから連れ帰れ」

「二度言いましたね」


それにしても本当に空席が多い。宮野君のように負傷関係で休んでいるのだろうか?
それとも.....死んでしまったのだろうか。


ガラッ


「よーし席つけ~.....ん?やけに休みが多いな」


望月先生がやって来た。今日はアロハシャツのようで、なんともトロピカル。先生は自由でいいなぁ。


「ま、いいか。なら今いるやつだけに昇級バッジ渡すな。一条と瀧宮」


名前を呼ばれて前に出る。望月先生から渡されたのは弐と彫られたバッジだった。壱と彫られていたものを先生に渡し、新しいのを付ける。

......なんかちょっと嬉しいかも。

ケーキ君はランクが高い奴ほどヤバい奴だと言っていたけど、この昇級はあのゲームを頑張って生き残った証だ。だからヤバい奴と言われるのは心外だな。


「2人ともおめっとさん。じゃあ早速だが委員会決めやんぞ~。このクラスの級長はお前で決定。拒否権なしな。俺はそこで見てっから後はよろしく」


望月先生がそう言って指を刺したのは先生の目の前の席に座っていた真面目そうな生徒だ。落ち着いた藍色の髪に銀フレームの眼鏡。いかにも級長って感じの見た目だった。

その子は特に不満を言うこともなく、静かに席を立ち黒板の前に。


「このクラスの級長に指名された三上 爽爾みかみ そうじです。よろしくお願いします。では委員会決めを始めますが、その前にこの学園のことを知らない生徒も居るでしょうから軽く説明します。この観式学園では生徒は必ず何らかの委員会か部活及びクラブに所属しなければなりません。なので、たとえ興味なくとも部活やクラブに所属だけでもするのをお勧めします」


三上君は凄い気が利く子なんだな.....。
疑問に思ったことを聞いてもないのにスラスラ喋ってくれる。
必ずなにかに所属しなきゃいけないなら部活かクラブだな.....委員会は面倒くさそうだ。


「あっと、そうだった。一条はもう一回前来い。三上は続けてくれ」


どんな部活やクラブがあるのか瀧ちゃんと話していたら望月先生に呼ばれた。不思議に思いながら教室の隅に座る先生の方へ向かうとガシッと首に腕をかけられ顔を引き寄せられる。


「一条は先生の雑用係な。忘れてないよな?交流会での交渉」

「.......もちろんですよ」

「今の間は絶対に忘れてただろ」

「まさか!」


忘れてたんじゃなくて嫌すぎて言葉に詰まったんだよ。


「言うが、係だからといってどこにも所属しなくていいってわけじゃないからな?」

「わかってますよ」

「じゃあ風紀委員やるってことで」

「待ってください。ちょっと何言ってるか分からないですね。僕と会話出来てます?」


急に風紀委員?なんで?
冗談はその恰好だけにして欲しい。


「いや.....あのな?俺さ今すっげぇ疲れてんの。見てみ?この隈。これ風紀のせいだからな?昨日、一昨日....いつからか風紀にまともな生徒推薦しろって言い付け回されて気が休まらねぇんだ」

「嘘くさいです。その隈もどうせゲーム隈でしょ?」

「うっそ、なんでわかったんだ!?」

「マジですか。適当に言ったんですけど???」

「げっ」

「という事でお断りします。確かに僕はまともですが他に候補は居るでしょう?なんで僕に白羽の矢がたったのですか?」


それこそ入学したての僕より瀧ちゃんや級長が適任なはず。


「ぶっちゃけ今の風紀って風紀委員長である緋賀頼みなんだよ。副委員長である哀嶋は交流会で戦闘狂を放出した罪で暫く動けねぇし....」


犯人は風紀の副委員長なんだ......。戦闘狂の存在で一気にあの交流会のバランス崩れたからね。罪は重そうだ。


「そのことが僕になんの関係が?」

「仮にもお前はあのイカれ野郎をルール違反させた実績がある。この際、強さは求めねぇからとにかく優秀でまともな奴が欲しいんだと。俺もお前ならやっていけると思って言ってるんだ。.....もちろんお前の交流会での活躍は誰にも話してねぇ。約束だからな」


そこまで評価されているのは嬉しい気持ちはある。だけど僕は風紀委員と生徒会には絶対に関わりたくない。
風紀は戦闘狂みたいにイカれた奴らを捕縛するのが主なんでしょ?僕には無理。
生徒会は少数人数でこの学園を回してるんでしょ?
ちょっと面倒臭い。


「そこまで評価して下さって嬉しいのですが、お断りします」

「理由は?」

「あんなイカれた奴らを相手にしたくないです」

「ならデスクワークだけでいい」

「.....何がなんでも僕を風紀に入れたいんですか?」

「いれたい。そして風紀から解放されたい」

「それが本音ですね?」


一生付きまとわれればいいのに.....。


「風紀が嫌なら生徒会にでも推薦するか....」

「風紀になります」


生徒会は絶対に嫌だ。まだ風紀の方がマシ!!
っていうか先生汚すぎる。それは狡い。


「そっかそっか、引き受けてくれるか~。先生は嬉しいぞ」

「こんな時だけ先生づらしないでください。虫唾が走ります」

「めっちゃ口悪いなお前.....怖ぇ」

「で?僕は放課後に風紀にでも行けばいいんですか?こういうのってその日に顔合わせみたいなのがあるんでしょう?」

「察しがいいな。おう、放課後風紀室行ってくれ」

「案内して下さい」

「.......そういうのは友達とかに頼むもんでは?」

「先生の都合で受けるんですから友達に頼めるわけないじゃないですか。責任持って僕を風紀室に案内してください。どうせ暇ですよね?」

「..............................」

「案内してくれないならどんな手段を使ってでも先生のゲームデータを消去します。二度と戻らないように」

「案内しよう」


このダメ教師が。









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