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第三章 新入生交流会
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しおりを挟む遠くから戦闘狂を捕獲しにかかる風紀を眺めて、作戦が成功したことに安堵する。
僕の作戦はシンプルで、
それは『戦闘狂のタグをとって脱落者にし、且つルール違反をさせ捕縛させよう』というもの。
田噛君やケーキ君から話を聞けば戦闘狂とまともに戦うのは馬鹿がすることだとよく理解できた。もし真正面から戦う場合、重傷を負う覚悟が必要になる。そんなのたかがゲームで負う傷にしては割に合わない。
だから退場してもらうことにした。
「Mr.ウマシカの情報が役に立ったなぁ」
しみじみ思う。彼が居なければこの作戦の実行をやめていたと。
曰く、戦闘狂は攻撃された部分のみ風で防ぐ
曰く、戦闘狂は肉弾戦しかしない
曰く、戦闘狂は殺しはしない
曰く、戦闘狂は強者に執着を見せる
などなど。
意外に思ったのは戦闘狂は人を殺さないとの情報だ。聞けばなんでも『殺したら二度と戦えねぇじゃねぇか』と言っていたらしい。
うん、納得した。
ちなみに田噛君から聞いた情報はケーキ君には伝えていない。彼には本気で向かって欲しかったから。死ぬ覚悟で戦闘狂を殺しに行って欲しかったから。
.......今思えば結構悪いことしたなぁ彼に対して。
「それにしてもケーキ君は凄いなぁ。まさか戦闘狂への攻撃を中止してタグを取りに行くとは.....予想外。Mr.ウマシカに指示したことは無駄になっちゃったか~。タグをとったMr.ウマシカに強者との戦闘を邪魔されてキレた戦闘狂がMr.ウマシカに殴りかかる絵を描いていたのに」
タグを取られた脱落者が生存者に攻撃をすることは禁止されている。
だから今現在、戦闘狂は風紀に捕獲されているのだが.....望月先生に風紀を周りに伏せて貰ったかいがあった。
「さて、と」
ビービービービー!!
《人狼狩りは終了だ。生き残った者は直ちに体育館へ集まるように》
「体育館へ行こうかな。と、その前にMr.ウマシカに口止めしなければ......えーっと、タグ確保の任務を失敗したMr.ウマシカへ。任務失敗のため僕と友達だと周りに言いふらさないように。暫くは秘密の友達でいましょう。会いに来ないでくださいね?何か伝えたいことがあるならメールで連絡を......よし、送信!」
ふむ。
ケーキ君がタグを取ったのは結果オーライかな?
※※※※※※※※※※※※※※※※
体育館に着くと脱落組と生存者組で別れていたため、案内に従って僕は生存者が集まる場所へ向かった。
するとそこには見知った顔があり、彼らが生き残っていたことに少し嬉しくなる。
「皆さん無事でし......宮野君怪我ヤバそうですね。大丈夫ですか?」
兎君も両手を包帯ぐるぐる巻きにして.....結構酷い怪我だったのかな?
「あっ!燈弥!!燈弥も生き残ったんだな!?」
「燈弥君も生き残ったんだ~。僕の怪我一応手当されたけど超しんどい。寮に帰って寝たい」
「なぁなぁ!!聞いてくれよ!俺達戦闘狂っていうのに目をつけられて命からがら逃げてきたんだぜ!?もう二度と会いたくねぇ.....清継と文貴が来てくれなかったら芙幸が、芙幸がっ」
「....そんなことがあったんですね。僕がタグ集めをしている時に少年漫画みたいな展開にあっていたとは......まぁ、生きていればこっちのもんですよ。だから兎君はそんな悲しそうな顔してはいけません。このゲームで亡くなった方もいるんですし」
「そうそう。燈弥君の言う通り!生きてる僕らが悲しい顔してたら死んだ彼らに申し訳ないよ。だから笑うのさ!この学園ではそれが普通なんだ」
「とコイツは言うが、その行為が不謹慎なことであることは知っとけよ」
さすが瀧ちゃん。常識人だ。
でも、笑うなとは言わないんだね?
「文ちゃんは大丈夫?」
ワイワイと話し出す兎君、宮野君、瀧ちゃんを尻目にその三人をぼんやりと眺めている文ちゃんに話しかける。彼をここで見た時、左手がないことに気づき驚いたものだ。
「大丈夫だよ。義手だからそんな痛みとかないし。でも湊都君にすごい心配されたのはどうすればいいのか分からなかったなぁ。大抵は義手って伝えると''そっか''とか安堵の表情されるんだけど、あんなに心配されるのは初めてだ。いい子だね湊都君は」
「そうですね。因みに義手はスペアとか持ってるのですか?そのままだと生活に支障をきたすでしょうし」
「寮に戻ればあるよ。こういう時のために私はいっぱい用意してあるんだ。ふふふ、この学園ではしょっちゅう飛ばされるし」
「それは嫌ですね。僕なら文ちゃんみたいに笑ってられません」
「私だって最初は笑え、わら、え......??」
話している途中に急停止した文ちゃんに首を傾げる。
「どうかしましたか?」
「そういえば私はいつ左手をなくしたのかな....あれ?カタラに食われたんだっけ?」
「え?」
「あぁ......そうだ。カタラに食われたんだ」
「.....大丈夫ですか?」
「!!なんでもないよ。あ、副会長が出てきた」
ひっかかるけど、本人がなんでもないと言うならなんでもないんだろう。
そして壇上を見れば確かに副会長がマイク片手に前へ出てきていた。
そういえば発表がもうすぐ始まるがケーキ君はどこにいるんだろうか?
生存者数は十数人しか居ないがその中にケーキ君の姿はない。なんならあの田噛君も。
まぁ、無事なのは知ってるけど.....無事だよね?
『では今から優勝チームを発表する.....が、ご覧の通り今ここにいるのは俺だけだ。本来なら生徒会全員で優勝チームを讃えたいのだが、トラブル発生により俺だけとなった。また、優勝チームについてもトラブルにより想定以上に数が少ないことから今現在自身のタグを持っている生存者をみな優勝とし、昇級とする』
副会長が言うトラブルって絶対に戦闘狂のことだよね。つまり風紀だけじゃ抑えれなくて生徒会も駆り出されてるわけだ.....。じゃあ、この場にいないケーキ君と田噛君はあの場にいたから.....うん、頑張って。僕はここから応援するよ。
『怪我が酷いものは保健室に向かうように。では只今をもって新入生交流会を終了とする。昇級者は後日担任の教師からバッジを貰うように。では解散』
そう言って副会長は足早に壇上を後にした。
多分あの人もこの後戦闘狂捕獲に合流するんだろうな......。
「やったな!燈弥!!ランクが弐になったぞ!!なんか、なんかっすげぇ嬉しい!!達成感って言うのか?とにかく充実してる!!」
「まぁ、あの戦闘狂と戦って生き残っていれば達成感はあるだろうな」
「よかったですね兎君」
瀧ちゃんと一緒になって兎君を褒める。実際に兎君はよくやったと思う。聞けばあの戦闘狂に真正面から斬りかかったらしいし。僕には絶対にできないことだ。.....怖すぎ。
「はぁ、今日はもう疲れました。寮に戻りましょうか。明日も登校しなければいけないようですし」
「そうだな!燈弥帰ろうぜ!将翔にも報告してぇ!」
「ケーキ君は当分帰ってこないですよ.....多分」
「清継、僕らも帰ろっか~。また明日ね湊都」
「文貴はちゃんと義手の整備するんだぞ」
「清継君は私の親みたいなこと言うね。心配しなくても大丈夫だよ」
部屋に着いたらすぐ寝よ.....
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