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第三章 新入生交流会
《side 兎道 湊都》 助け
しおりを挟む《side 兎道 湊都》
「芙幸!!」
手を伸ばした。
だけど戦闘狂の拳が届く方が明らかに早い。
いやだ!!!
諦めたように笑う芙幸の顔を見て俺は叫ぶ。
バコッ!!
「っが!?!?」
だけど殴られ吹っ飛んだのは芙幸じゃなくて戦闘狂の方だった。
滲む視界のせいで誰が助けてくれたのか分からなかったが、ただ赤い迷彩服を着ているのはわかる。
「大丈夫?」
その声は――
「文貴!!!」
目をゴシゴシと擦り、はっきりとした視界で文貴を捉える。死んだような瞳に左手袋、そして綺麗な銀髪......やっぱり文貴だ。
あんな俺より細っこい身体でなんで戦闘狂を吹っ飛ばせるのか謎に思うが、今は芙幸!!
「芙幸大丈夫か?死んでないよな!?」
「このと~り、間一髪生き残ってるよ~.....でも、ちょっと腰抜けたかも」
「お、おお俺が背負ってく!!」
「それだと戦闘狂から逃げられないじゃん。僕はいいから文貴君と一緒に逃げなよ湊都」
「いやだ!!絶対に置いてかねぇ!」
「......言うこと聞いてよ湊都」
「それは聞けねぇ!」
芙幸はここに残ると言うが、その体であの戦闘狂を相手できると思っているのか!?
しかも腰が抜けているときた!
そんなん俺が足止めする方がまだ勝機がある。
もう一個の異能を始動すれば、まだなんとかなるはず。
「取り込み中悪いが、俺達二人は戦闘狂の足止めをお前らに頼む気はないぞ」
「「清継!!」」
「.....うるさい大声を出すな。お前ら二人はさっさと――」
バキッ!
清継の言葉を遮るように文貴が俺達の後方へ吹っ飛ばされる。
「っ、なんで、なんでそんな足で動けんだよ!?」
思わず叫ぶ。だって、おかしいだろ!
芙幸が普通は歩けなくなるっていう部位を射抜いたのに、この男は何も感じてないかのように平然と歩いてるなんてっ!
「かっかっかっか!!天使は肉弾戦もいけんのかぁ!!やっぱり最高だ!!!!かかか!オレは倒れねぇよ?お前の羽をもいでその悲鳴を聞くまではなぁァァ!」
やっぱイカれてる......。
「こっち来てんぞ!?ど、どうすんだ!?俺がまた幻覚見せればいいのか?だけどもうアイツに傷をつけるのは無理ゲーだぞっ」
「お前らはいいから逃げろ!!文貴が戦闘狂を足止めする」
「そっか~、文貴君が......ならお言葉に甘えて逃げようか湊都。じゃあ清継も残るの?」
「ああ」
「でも、でもっ」
「湊都、芙幸を頼んだぞ」
「っ、わかった!任せろ!」
そんな言い方されたら任せろとしか言えねぇじゃん!!清継はズルい......
「行くぞ芙幸!背中に乗れ」
「え、背負うの?」
「な、なんだその顔は!俺だってそれくらいの力はあるんだぞ!?」
「えぇ.....僕よりちっちゃい湊都に背負われるのはなぁ」
「ちっちゃい言うな!」
燈弥にぶつかって吹っ飛ばされたけど、それくらいの力はある!......はず。
「お前らグズグズすんな!!蹴り飛ばすぞ!?」
「「はいっ」」
清継の怒鳴り声に俺は芙幸を背負い駆け出す。
清継怖ぇ......。
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