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第三章 新入生交流会

《side 宮野 芙幸》 弓を射る

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side  宮野 芙幸



あの戦闘狂......鎖真那 雅臣と斬り合う湊都の姿を信じられない思いで見つめる。
湊都ってこんなにできる子だったんだと驚く気持ちとどこか嬉しい気持ちが今僕の胸を埋めていた。

このゲームでまさか鎖真那に会うとは思わなかった。なぜならこういう行事ではランクはち以上の生徒は参加出来ないのが暗黙のルールとなっているからだ。

だからあの風を見た時、目を疑った。

だけどいつもの僕ならマジか~と言ってスタコラサッサと逃げるのだけど、今の僕には湊都がそばに居た。

前の僕なら湊都を置いて一目散に逃げていただろうけど......うん。

最初は湊都をただの興味対象としか見ていなかった。だけど、一緒にいるうちにその明るい笑顔だとか、考えていないようで考えているところとか、何よりその優しさが僕の弟を彷彿とさせ.....結果絆されちゃった。

そんなの僕でも予想外!

本当は湊都をアイツにぶつける予定だったのに....そんなこともうできないよぉ。


だから、鎖真那に遭遇したとき逃げれなかった。


僕一人なら逃げ切ることは出来たかもしれないけど、湊都も一緒となると.....不可能だ。
湊都を置いて逃げるなんて選択は僕には出来なかったからね。


「その結果がこうなるなんて.....やっぱり湊都は予想外すぎて面白いなぁ」


人を傷つけるのが嫌いな湊都。
人を傷つける奴を本気で怒る湊都。
でも、自分の周りが傷つくと人を傷つけないっていうポリシーを曲げて立ち向かう。

本当.....弟にそっくりだ。
僕の弟のようでもあり、この学園で眩しいくらいに真っ直ぐな友達。


「.......耐えろ」


だから耐えろ僕。

たとえ、ヒヤヒヤするような紙一重の攻防でも。
湊都の腕が折られようとも。


口の中から血の味がした。


構うものか。僕は湊都の信頼に応えなきゃいけない。鎖真那の一瞬の隙も見逃さないぞ。


「.....決めに来た!」


来る。来る。湊都が絶対に作る。
僕が狙うのは鎖真那の両足の甲。

だけど湊都が足払いをされた瞬間、僕は弓矢から矢を放とうとしてしまうが、湊都が魂写棒を上に投げたことに彼がまだ諦めてないことを察する。

湊都が諦めないなら僕も諦めない。

そして、その瞬間が訪れた。
湊都上に投げた魂写棒が鎖真那の腕に傷を作ったのだ。

鎖真那の纏う闘志が揺らぎーーー


「ここだ」


矢を同時に二連放つ。
風を切り銃の弾丸のように二連の矢は真っ直ぐ鎖真那目掛けて飛ぶ。

そのまま鎖真那を貫く軌道だったが、僕の狙いは足の甲だ。
今の進行方向では貫けない。
なら――


「『向き変換』」


指揮棒を振るうように2本の指を揃えて下に向ける。
すると二連の矢は鎖真那の身体を貫通する直前にワープしたかのように消え......


「僕の弓は100発100中だよ」


ザシュ!!!


上から突然現れた矢は同時にヤツの両の足を貫きその足を地面に縫いけた。


「~っ湊都!!」


やった!やったよ湊都!!
僕は急いでボロボロの湊都に駆け寄る。
今の僕はあの戦闘狂を行動不能にした喜びと、湊都を心配する気持ちでぐちゃぐちゃだった。だから多分すっごい満面の笑みで泣きそうな声出してるかもしれないけど不気味そうな顔を向けないでね!?


「だ、大丈夫!?あぁっボロボロだ~!」

「......」

「湊都....?」


だけど話しかけても湊都は僕のほうを見ずに、ただある方向を見て顔を真っ青にしていた。


「......天使だ」


聞こえた声に急いで振り向き、矢をつがえる。
しかし鎖真那の顔を見て僕はゾッとした。

その横顔は足を貫かれているというのに満面の笑みで、真っ赤な瞳は歓喜と興奮で爛々と輝き焦点が合っていないように見える。

これが湊都の異能のせいなら......やらかしたかもしれない。


「ああ!ああ!オレの天使!!!ずっと会いたかった!!!!」

「「!?!?」」

「さぁ、戦おうぜぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」


鎖真那を中心に風が渦巻きーーー


「湊都!!」


破裂した。

僕は咄嗟に湊都を抱え転がるが、背中に叫びたくなるほどの痛みを感じた。


(なんだよもぉ!?血反吐吐くほどダメージがあるっていうのにまた強力な異能を使うとか、頭どうなってんの!?!?)


ようやく風が止んだと思い顔を上げると信じられない光景が広がっていた。


「なんだよこれ....」


湊都の呆然とした声が聞こえた。確かにそう言いたくなる気持ちは分かる。
木々で生い茂っていた周辺が更地となり随分と見晴らしが良くなっていたからだ。最初に100人ほど生徒を集めた時よりも規模が大きく見える。


「ゴフッ、ガッ!ハァ、ハァッ......これで戦いやすくなったなァ。ん~?最初の一撃はどこを狙う?首か?足か?お前のその綺麗な一撃受け止めてやるよ。だが、オレはお前の羽をいただくぜ?」


口から血を吐き真っ赤な瞳からは血涙が流れていた。それでも尚笑う戦闘狂に賞賛の拍手を送りたくなる。その執着、思考性.....僕は尊敬するよ。見習いたいくらいだ。

その時、僕の耳にブチブチと音が聞こえた。
まさかと思いながら目を下に向ければ矢で地面に縫い付けられた足を無理矢理動かし矢から脱出しているではないか。

あんな傷、普通は歩けない。


「僕らを閉じ込めてた風がなくなってる.......湊都今のうちに逃げよう。アイツはどうやら居もしない天使とやらしか見えていないし。僕らもダメージがあるから戦えない......え?」

「どこに行くんだァ?」


ちょっと待って!?
なんでこっち来るの!?


「逃がさねぇ。今度は絶対に.....!」


あぁ、これ無理だ。
迫る拳を前に僕は笑った。














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