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第三章 新入生交流会

《side 兎道 湊都》 勝負!!

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「芙幸の弓の腕前はどれくらいなんだ?」

「一級品だよ。誰にも負けない。弓の正確さは誰にも負けない」


誰にも負けないっていうのを強調されたが、それほど自信があるんだろう。その言葉を疑いはしない。ただ頼もしいと思うだけだ。


「俺は....俺の異能は揺蕩う刃シェイカー。幻覚系でそいつが見たいものを見せる」


本当はもう一個異能があるんだけど、今は使えねぇ。


「俺のシェイカーでまず鎖真那に幻覚を見せる。どんな幻覚を相手が見るのか知らねぇけど、今までのことから一瞬隙ができるのは確かだ。その一瞬で芙幸のはアイツの......両脚を射抜いて欲しい」

「両脚?脳天じゃなくていいの~?」

「いや、死んじゃうだろ!?俺はアイツに一泡吹かせたいだけだ!殺したいわけじゃねぇ!」

「あいあいさ~.....って、どうやってその幻覚を発生させるの?」

「......俺がアイツに近づく」

「そ......っか。頑張って。僕は必ずアイツの両脚使いもんにならないようにするから」

「おう!」


よし、やるぞ。
アイツはきっと俺の事を舐めてる。会った時、芙幸にしか目がいってなかったし......。だから俺は倒れたフリしてアイツが近づいてきたところにブスリと......ってやんのはガラじゃねぇなぁ 。


俺は芙幸と別れて鎖真那を目で追う。
アイツは逃げ惑う生徒達を手当り次第殴ったり蹴ったりと肉弾戦をしている。異能を使ってないのか?と思ったが、よく見ると殴る瞬間や蹴る瞬間それぞれの部位に風を纏わせ威力を高めていた。

そんな鎖真那の戦闘を暫く見て俺は確信する。


「俺でも戦える」


そしてシェイカーを力強く握り深呼吸。
集中。
集中。

鎖真那の拳がまたひとり殴り飛ばした瞬間、俺は飛び出した。アイツが俺に気づき殴った体勢から振り向く時間より、俺の一撃の方が早いはずだ。

そら一撃.....な!?!?

シェイカーを振るおうとしたら鎖真那がこちらを向かず裏拳を繰り出してきた。
それを体勢を崩しながらすんでのところで避けるが、そのせいで無駄な時間を使ってしまいあの真っ赤な瞳と目が合ってしまう。


「あ?」

「クソっ!」


離れたらダメだ。このまま攻撃し続ける!!
シェイカーで斬りつけるが、バシッと風に阻まれ鎖真那の肉体に攻撃が届かなかった。それでも何度も斬りつける。
この風うぜぇぇぇぇ!!


「.....?あぁ、宮野の隣に居たチビか」

「チビじゃねぇ!」

「なんだぁ?テメェは戦えるのか?いや、オレに刃を向けた時点でそんなこと聞くのは馬鹿らしいな」

「お前はなんでそんな簡単に人を傷つけられるんだ!?その暴力をなんでカタラに向けないんだよ!?」

「カタラはつまんねぇんだよ。オレだって最初はカタラ狩りを楽しめてたんだぜ?でもアイツら知能がねぇじゃん。単純じゃん。連携しねぇじゃん。感情の揺らぎがねぇじゃん。そういう奴らと戦ってると冷めるんだよなァ……。その点、人間はいいぜぇ?」

「お前とは分かり合えないな……クソ野郎が!!」


喋ってる時に隙ができるかなとか期待したけど、余裕そうだなコイツ!どこに攻撃しても風で防がれるっ。


「かっかっか!オレだってテメェみてぇな甘ちゃんと分かり合えねぇって思ってたさ!紙一重の攻防!骨砕く感触!ぶつけられる感情!その良さを理解できねぇやつは同じ人間じゃねぇ!!」


イカれてるぞコイツ!?
ああもうっ!いいぜ、お望みならば紙一重の攻防ってやつをやってやる。

集中。
集中。
超集中........。


伸びてきた手を柄で弾き、そのまま斬りつけるも防がれる。ならばと、相手の重心が片足に移る瞬間足払い。.....それも風に阻まれた。顔面横から風圧を感じギリギリで顔を逸らすことで拳を回避。だが大振りだったせいか、鎖真那の背中が無防備にもこちらを向いていた。

チャンスだ。

そう思い一閃しようとしたがゾワッと鳥肌が立ち、咄嗟に空いている左肘をガードに上げた。


「がっ!?!?」


重い衝撃。見れば長い脚が伸ばされていた。
後ろ回し蹴りか!
骨がイカれた感触がしたが、下がらず逆に懐へ入る。


「ひゅ~♪いいね、いいねぇ!!....だが、ここまでだ。オレにはまだメインディッシュが残ってんでな」


決めに来る。
一撃。たった一撃でいい!
考えろ俺!
集中だ俺!!
芙幸が俺を信じて待ってくれている!


左腕をまともに使えない状態だが、右さえ使えれば十分だ。
俺から攻めに行く!!
しかし、一歩踏み込もうとして視界が回った。


「はっ?」


地面を踏んでいる感触がない。

(っ、さっき俺がやった足払い!?)

気づいた時には俺の頭を蹴り抜こうと風を纏った足が眼前に迫っていた。


「う、ぅぉぉおおおおおおおおお!!!!」


シェイカーをわけも分からず放り投げ、右腕と折れているだろう左腕でその足をいなす。


「.....かかかっ!よくいなした!だが、もう両手は使いもんにならねぇなァ?」


風のせいで切り刻まれた俺の手は血だらけだ。なんだよ、触れるとこうなるのかよ……。
手が痛てぇ.....シェイカーを握れるかどうかも怪しくなってきた。


(そういえば、俺のシェイカーは?)


無我夢中で放り投げたのは覚えている。


「よくやったな。楽しかったぜ……目が覚めたら名前教えろよ?」


鎖真那は膝をつき座り込む俺の胸倉を片手で掴み拳を振り上げた。
その時、


サクッ!.....カラン.....


「「は?」」


空から降ってきたシェイカーが俺の胸倉を掴む鎖真那の腕に傷をつけ地面に落ちた。


「なんだ?空から降っt............あぁあ????」

「いでっ!?」


鎖真那は急にグリンと誰もいない方向を向き、固まった。その際、地面に落とされた俺は尻もちを着く。

痛みに顔を顰めたくなったが、今はそれどころじゃない!


「ふゆーーー」


芙幸と叫ぼうとしたが、俺の耳に風切り音が聞こえた。



ザシュッ、ザシュッ!!



そして鮮血が飛び散る。






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