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第三章 新入生交流会

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『では今から新入生交流会を始める』


凛とした声に体育館内は熱気と歓声に包まれる。
新入生交流会当日、壇上に上がって開幕の言葉を口にしたのは生徒会副会長の骨喰 恭弥君。

僕は周りが盛り上がるなか彼を静かに見つめた。
彼が着ているのは僕と同じ黒と紺色の迷彩服。そして目を動かせば他にも赤と紺色、白と紺色の迷彩服を着た生徒達がいる。


『今回の新入生交流会は人狼狩りだ。ではその人狼狩りについて説明する。プレイヤーは自チームに紛れ込む敵チームの人狼を狩ってもらう。ただそれだけだ。そしてーー』


・プレイヤーは3チームにわけられる
・制限時間は3時間
・プレイヤーは自チームに紛れ込む敵チームの人狼を狩る
・終了時までに人狼は最低でも10人狩らなければ失格
・人狼は自分がどのチームに属しているのか知らない
・人狼の背中のポケットに入った紙で自チームを知ることが出来る。しかしそれは他人にしか読み取れない
・終了時に生き残りが多いチームは勝ち
・優勝チームの生き残り(人狼込み)のみ昇級



『.....以上がルールだ。狩られた者、即ちタグを取られた者は速やかに体育館に戻ること。狩られた者が生存者に攻撃する行為は反則なため厳しく取り締まる。そしてゲーム中は風紀と教師達が常にお前達を見ていることを忘れるな。なので行き過ぎた行為は控えるように』


タグ....。
僕は首にぶら下げた銅板のタグを手に取る。それには燈弥とローマ字で彫られており、生徒全員分こんなふうに名前を彫られていると思うとどれだけ金をかけたのか気になってくる。

そして話を聞いていると、風紀は不参加で教師と一緒に監視をする立場だそうだ。
じゃあ生徒会はというと、彼らはこの人狼狩りを発案した本人なので参加はできないらしい。裏方として動けないプレイヤー達を助ける救助隊にまわるんだとか......。


「風紀と生徒会が居ないのはほんとに助かるぜ。あいつらはバランスブレイカーなところがあっからな」


そう言って馴れ馴れしく僕の肩に腕をかけてきたのは赤の迷彩服を着たケーキ君。一週間前に手を組むことを決めてから妙に距離が近くなった。
おかしいな....あの日、近すぎるケーキ君の顎に掌底を決め牽制したのに。懲りてないのだろうか?


「ケーキ君近いです。離れてください」

「.....近いか?」


その時、背中にガシッとしがみつかれた感触がし、振り向くとそこには満面の笑みの兎君が僕に抱きついていた。
兎君は白の迷彩服を着ている。


「お前らっていつの間にかすっげぇ仲良くなってるよな!俺も混ぜろ~!」

「ちょ、兎君!?」

「燈弥君ずるい!僕も!」


くっ、宮野君まで!?
暑苦しい!だ、だれかヘルプ!


「おい、燈弥が苦しそうだ」

「ノリ悪いなぁ清継は!燈弥は全然苦しそうじゃないぞ!」

「いや、苦しいです。早く離れてください」


瀧ちゃんナイス。兎君は不満そうに口を尖らせ離れ、宮野君も渋々離れてくれた。ケーキ君は未だに僕の肩に腕をかけていることからどうやら離れる気は無いようだ。


「兎君と宮野君は白ですか」

「やったね。湊都君と一緒のチーム♪」

「頑張ろうな芙幸!」


瀧ちゃん、ケーキ君、ここには居ない文ちゃんが赤の迷彩服。そして僕だけが黒色だ。


「清継と一緒のチームか」

「なんだ、不満なのか?」

「いやホッとしてんだよ。芙幸が居ないからな。前のイベントはヤバかった.....」

「何があったか知らんが大変だったようだな」

「お前が芙幸と幼馴染だなんて知らなかったぞ?なんでもっと早く名乗り出なかった!?」

「俺に苦労が来るだろうが」

「.....そうだよな。お前はそういう奴だよ。はぁ、過去の俺に清継と芙幸が幼馴染だと教えてやりたい。そしたら何としてもお前を芙幸の前に引きずり出してやったのに」


聞いてると面白いな。ケーキ君と瀧ちゃんの話。2人とも宮野君に振り回されるのが嫌みたいだ。


「やっと見つけた!」


そこへ今まではぐれていた文ちゃんが合流した。どこに居たのか聞けば、ぼーっとしていたら人混みに流されて知らない場所にいたらしい。
もー文ちゃんが可愛い.....。
だけど息を切らす文ちゃんを見てある疑問が浮かんだ。


「文ちゃんは番と一緒にゲームしないのですか?」


ここに来たのは文ちゃん一人のみ。番を連れてきた様子はない。もしかして同学年じゃないのかな?


「あぁ.....うん。別行動なんだ」

「.....そうですか」


喧嘩中なのだろうか?文ちゃんの死んだ目がさらに濁ったような気がして、話を続けることが出来なかった。


『......注意事項は以上だ。最後に、開始の合図から五分後にスマホを必ず見るように。送られたメールに人狼か否かが書かれている。それでは黒い迷彩服を着た生徒から体育館を出て散ってくれ』


いよいよ始まるな.....。
僕はケーキ君の腕を払いみんなに振り向く。


「では皆さん、ゲーム後にまた会いましょう」

「おう!」

「そうだな。忠告するが、芙幸を見かけたら逃げろよ?」

「清継酷い!?逃げないでね燈弥君~!」

「....頑張ろうね」

「殺られるんじゃねぇぞ?」


そして僕は体育館を後にした。







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