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第二章 入学式
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しおりを挟む「へぇ~湊都達はAクラスなのか。俺と文貴はCクラスだぜ」
今僕達は食堂にて夕食をとっている。入学前に送られてきた生徒手帳が電子マネーの役割をしているらしく、失くしたら終わりだとか.....。
「なら俺が何か忘れ物したら借りに行くな!」
オムライスをモグモグしながら兎君が元気よくそう言った。僕もオムライスにすればよかったかな。すごく美味しそう。因みに僕が食べてるのは親子丼。ケーキ君は生姜焼き定食、文ちゃんはサラダ......。
「文ちゃんそれ、足りるんですか?」
「文ちゃん?.....あぁ、心配してくれてありがとう。私は少食でね」
「それでもサラダだけっつうのはヤバいぞ!俺のオムライス少し分けてやるよ」
「湊都君、気持ちだけで十分だから」
「いや、貰っとけよ。文貴は元は少食じゃねぇだろ?」
「そうなのか?」
ケーキ君の言葉にバツが悪そうに文ちゃんは目を泳がせた。どうやら触れられたくない話題らしい。それなのにそうなのかと知りたそうな顔をする兎君は遠慮が無さすぎる。まだ出会って一日なんだからそんながっつかなくてもいいだろうに。
「文ちゃんはAクラスに知り合いとかいるんですか?僕と兎君は外部生なので少しでも交友を広めたいなと思ってるのですが....」
「っいるよ!服とかメイクが好きな子でね.....」
文ちゃんに助かったとでも言うように満面の笑みを向けられた。それから話は変わり、要注意人物について聞かされる。
「いいか、鎖真那には気をつけろよ」
「鎖真那....ですか?」
「私は絡まれた事ないなぁ。その様子だと将翔君はちょっかい掛けられたんだ?」
「ちょっかいなんてもんじゃねぇよ!?あれは殺しにかかってた.....」
「うん?将翔君はどっーー」
文ちゃんが何かを言おうとした瞬間、食堂が悲鳴に包まれた。
僕は耳がキーンとして、思わず顔をしかめる。
「なんですかコレは!?」
僕の隣に座っていた文ちゃんの耳元で大きめな声で聞くと、「生徒会だよ」と返ってきた。
「生徒会ですか?今日壇上で挨拶してたあの?」
「そうだよ。彼らは強くて、それでいて見た目もいいからね。特に会長の神崎 竜一は五大家である神崎家次期当主。そして性格もいいから人気なんだ.....」
「性格がいい....ですか。そう言う割に文ちゃんは会長のことよく思ってなさそうですね」
傍から見ても会長が嫌いなんだなとわかる雰囲気をだしている。というか、顔にありありと書いてある。『嫌い』と。
「顔に出てたかな?なんでだろう.....私は会長と接点がないのに何故か嫌悪感というか、やりきれなさというか.....ぶっちゃけ、同じ空気を吸いたくない」
「すごいぶっちゃけですね。滅茶苦茶嫌いじゃないですか会長のこと」
「........ごめん。私は先に部屋に戻るね」
顔色悪くしながら文ちゃんは足早に食堂を出ていった。あそこまで拒否反応が出るって会長は文ちゃんに何をしたんだろうか?
いや、でも文ちゃんは会長とは接点がないって言っていた。ケーキ君に聞くか......。
「あ?文貴と会長?」
「そういや、さっき文貴具合悪そうだったな....。俺も先に帰るな!文貴が心配だ」
「兎君お願いしますね」
「おう!」
生徒会登場による騒ぎも収まり、食堂は僕達が来た時と同じざわつきに戻る。しかし耳を澄ませばどこも生徒会について話しているようだった。話の話題となっているその生徒会はというと、成績上位者及び役持ち専用の2階席へと上がってもう姿は見えない。
騒がせるだけ騒がせて本人達は知らん顔か....災害みたいだなぁ。
「えーっと、文貴と会長の話だっけか?悪いがあんま知らねぇ。俺が文貴と話してたのは中1のとき同じクラスになったときだけだったし....その後はクラス離れてあまり話さなくなったんだよ」
「......なるほど」
ケーキ君はどうやら広く浅くをモットーに交友関係を作っているようだ。というか地味に感動。僕の周りに居たαというのは大体が話通じなくて、変態だったからケーキ君みたいなまともなαに会うのは久しぶりだ。
だけどまだ出会って一日目。もしかしたらケーキ君も自分の変態性を隠しているかもしれない。
「おい、なんか失礼な事考えてねぇか?」
「.........気のせいですよ」
「いま間があったよな!?」
その後も他愛ないお喋りをして僕達は食堂を出た。
しかし部屋に戻る道中、ケーキ君はチラチラと僕のことを何故か見てくる。目を合わせようとするとサッと顔を逸らし何事も無かったように歩くのだ。.......居心地悪い。
「あの、僕の顔になにかついてますか?さっきからチラチラと見るのはなんでですか?」
「あー....バレてたか」
なぜバレないと思ったのか問い詰めたい。あんなあからさまに見といてバレないと思っていたケーキ君は意外ポンコツなのかもしれないな。
「燈弥って見た目陰キャそうじゃん?部屋で会った時こいつとは合わねぇだろうなって思ってたんだけど、話してみると案外話易いし......」
「....」
「....」
「.....その先はなんですか?それでチラチラ見てきた理由は?」
「いや、俺の持論なんだけどよ。陰キャの見た目しってけど本当は全然陰キャじゃねぇんじゃないかって.....」
「つまり?」
「その瓶底メガネの下の顔が気になる!」
ほぉ、このメガネの下は陽キャのような顔であると思っているのか。....まず陽キャの顔ってどういうのなんだろう?派手顔ってことかな?
「見せてくれ!」
「いいですよ」
「そこをなんとか....え?いいのか!?」
「はい」
僕はメガネをひょいと外す。パラパラと前髪が目にかかるため、あまり外したくないけど......まぁケーキ君の好奇心を満たすことができるならいいや。
「どうですか?」
「......平凡」
「そうです。僕は平凡顔なんですよ。中身と見た目が合わないことって結構ありますから....」
「うーん、俺の予想では燈弥のメガネの下は超絶美形だと思ったんだが外れたか。造形は綺麗なのになんでこんな平凡顔なんだ.....惜しい」
「やはりαはデリカシーがないですね」
「いでっ!?」
肩をド突き、ケーキ君をメガネ越しに冷ややかに見つめた。
しかし僕は内心ガッツポーズをする。時間がある時しか出来ないが僕の平凡顔メークはバレなかったようだ。自分の顔が整っていることは知っているため、ちゃんと対策を練っている僕は偉い。瓶底メガネと平凡顔メークの二段構え!!
その分、風呂上がりとか朝が大変なんだけど.....。
最悪この瓶底メガネだけかけてればいけるだろうとは思うが、念には念を入れたい。
「さ、行きますよ」
「意外とSだった.....」
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